2024年に聴いてほしいポエトリーリーディング楽曲11選


00.概要

 2024年にポエトリーリーディングの曲を幾つか聴いて、それらがかなり好きになったので、記録として書き留めておこうと思う。個々の感想については聴いてもらえれば分かってもらえると確信しているので、付記するのは大概出会いだったり、関係無い話だったりする。
 大見出しは楽曲タイトル/アーティスト名の順番。これを書いていないと間違えてしまう。

01.ポストずんだロックなのだ/世界電力

 この記事を書くきっかけになった名曲。
 正直初見では「ずんだもんが歌ってるからネタ曲・オモシロ曲なんじゃないか」と思っていたが、リリックが始まった途端にその印象を覆された。あまりにも良くてその日はずっとこれをリピートしたし、音楽好きの友人たちにも共有したほど。
 個人的には、最後に出てくる名曲『それから』を彷彿とさせた。正直言って、あと二年前に聴いていたら違った印象になっていたと思う。

02.いつかどこかで/口ロロ

 ポエトリーリーディングを調べる過程で思い出した一曲。
 総計14分を超える本楽曲のタイトルを、かの人気漫画『呪術廻戦』の単行本で見た方もいるだろう。作者が、主人公の虎杖悠仁のイメージソングとして選曲しているのである。筆者自身もそれきっかけでこの曲を知り、好んで聴いていた。
 ポエトリーリーディングと形容された曲の中でも、ここまでの人数で無数の風景を描く楽曲は他にない。その時間の長さに納得出来るような一曲だ。

03.記憶/イヤホンズ

 偶然に見つけた一曲。
 たまたまイヤホンズのアルバム『Theory of evolution』を聴いていたら、どこか『いつかどこかで』を思い起こさせるような一曲だった。調べてみたら何のことはない、口ロロが作詞作曲編曲までしていたのである。

はやる気持ち みない信号機
駆けた大通り みえた葬式

記憶/イヤホンズ

 このリリックで一気に心惹かれた。歌われているのは群像のようで、大きな時間の流れを想像させてくれる。

04.トメハネハラウ/イヤホンズ

 同じくイヤホンズから一曲。
 これは歌詞と語り口からMOROHAを想起させたが、これまた正解、MOROHAの作詞作曲担当アフロ氏の楽曲提供であった。こういった勘が働いて、そして正解する経験が相次いだのは非常に嬉しかった。
 少女の目線から描かれる逡巡は、瑞々しくも切なく、だからこそ美しい。

05.夜鷹/きのこ帝国

 この辺りからはネットの力を借りて見つけた曲。
 きのこ帝国、ラストアルバムがめちゃくちゃ好きだったなぁ。まさか解散するなんて、と未だに惜しく思ってしまう。ロックバンドもこういう楽曲を作るのだなぁ。
 今後聴いてみたい、出会ってみたいのはこういう楽曲かもしれない。

06.Pellicule/不可思議/wonderboy

 こういう曲が沁みるような年代になった。
 ポエトリーリーディングって最近作られたジャンルのように思っていたのだけれど、十年以上前からあったことに驚く。そして、不可思議/wonderboyという優れた才能に出会えたこと、今その才能の続きを聴くことが出来ないことが、無性に寂しい。

07.生きる/不可思議/wonderboy

 同じく不可思議/wonderboyから一曲。
 原典は谷川俊太郎の詩『生きる』から。この曲を聴いて、学生時代ぶりに詩のことを思い出した。学校で学んだことというのは、予期しない時に頭の中から蘇るものである。

08.生きる/春ねむり

 先と同じ原典を持つ楽曲。
 春ねむりという方はポエトリーリーディング(ポエトリーラップ)をメインとして活動しているらしい。アルバムを聴き進めていったらこれ以外にも良いポエトリーリーディング楽曲に出会えるのは楽しみだ。

09.ドア/toto

 これまでの楽曲と比べると、かなり素朴で優しい一曲。
 歌詞に合った声色が実に心地よく、ポエトリーリーディングという表現の懐の深さを感じる。痛切な叫びもあれば、こういった朗らかで優しい光景を歌い上げることも出来るのか。

10.レプリカ/sasakure.UK

 ボーカロイド歌唱の楽曲。
 こういう楽曲を歌わせるのってどれくらい大変なのだろうか。いつか挑戦してみたいと思っているが、そう気楽に出来るものでもないだろう。でもいつか、歌わせてみたい。何かを伝えてみたい。

11.それから/SuiseiNoboAz

 最後に紹介するのは、人生の支えとしている一曲。
 この記事をまとめている折、ふと、これもポエトリーリーディングなのではないかと思い、聴き直した。何度聴いても良い。初めて聴いた時、こんな楽曲があるのかと震えたことを思い出せる。

やがて狂いそうなほど
青い空いっぱい
長いエンドロールが流れ始める
その全てを見終えるまでは
決して席を立つんじゃないぜ

それから/SuiseiNoboAz

 二月の寒い日に見た青空を思い出す。この歌詞のように、一面が狂いそうなほど青い空で、こういった気持ちを言葉に出来ることが、ひどくうらやましく思えた。

 ポエトリーリーディング11曲を選んでみた。
 10年くらい経ってから、再びポエトリーリーディングの楽曲を集めたら、どんな楽曲を選ぶのだろうか。そんなことが、今から楽しみである。