置いてかないでくれよ、キース。
2023年12月18日、今日はローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズの誕生日だ。
キース、80歳の誕生日おめでとう!
と祝う前に、僕はまず言いたいことがある。
あなた、何なのですか?
と。
2023年の音楽トピックといえば何と言っても、錚々たるレジェンド達の逝去だろう。
年明けのジェフ・ベックの訃報に驚かされたと思いきや、デヴィッド・クロスビー、トム・ヴァーレイン、バート・バカラック、ティナ・ターナー、ロビー・ロバートソン...
日本国内においても、高橋幸宏、鮎川誠、坂本龍一、PANTA、谷村新司、櫻井敦司、チバユウスケと、枚挙に暇がない。
高齢で大往生したバート・バカラックはともかく、高齢化社会の現代において亡くなるには若い年齢での訃報が実に多かった。
(僕の父が74歳で全然元気なんだから、70代なんてまだきっと若いよ...)
いずれも、ロック史に大きな功績を残した重鎮ばかり。
それだけ、知らず知らず心労に負担を強いてきたということなのだろう。
そこにきてキース爺さん。
あなた確か、若かりし頃にドラッグやりまくってトロントで逮捕されたり、そのせいで身体の血を全部入れ替えた、って噂されてたりしてましたよね?
そして、長年に渡る膨大なレコーディングやライブ活動など、音楽に対する愚直な姿勢がもたらす心労への負担は、他のレジェンド達との比ではないはずですよね?
なのに、なんであなたは身体の不調のニュースも一切なく、呆れるほど元気なんですか?
80歳のお誕生日おめでとう!
そんな超人が本当にいるなんて、嬉しいじゃないか!
2023年の大きな音楽トピックといえばもう一つ。
10月にローリング・ストーンズが完全新曲のニューアルバム「Hackney Diamonds」をリリースしたことだ。
先日、レンタカーで愛知から京都までドライブしたときに、当然ながらこのCDを共に持っていった。
その日は12月にしては非常に温かく、締め切った車内では汗ばむほどの陽気だったので、途中から窓を全開にしてこのCDをデッキに入れて走行した。
快晴の湾岸道路をキースのギターが貫いていくさまは、これこそ正しいロックの聴き方だと言わんばかりであり、気分は「Angry」のPVのアッパーなお姉さんだった。
結成から60年以上経ったバンドのアルバムが、こんなシチュエーションで聴けるとは。
さながら、レッチリやフー・ファイターズの新作の聴き方ですよ、これは。
こいつの仕上がり具合ときたら、1997年の前々作「Bridges To Babylon」よりも、2005年の前作「A Bigger Bang」よりも、アッパーでスコーンと突き抜けた爽快さを僕は感じる。
80歳と79歳と76歳(リリース時)が作るアルバムは、もっと渋くて重々しいものになるんじゃないだろうか?普通。
どこまでも、いつまでもノーマルな存在にはならない(なれない?)、イカした連中だ。
一昨年の2021年に、バンドの屋台骨とも言えるドラムスのチャーリー・ワッツが亡くなって、多くの人が「これでストーンズも終わりだ」なんて囁いた。
僕は冷静に「ビジネスとしてのストーンズを止める判断をミックがするはずがない」と思い、大切なものを失ったとしても、それでもストーンズが続くならどこまでも付いていく、と思っていた。
ところがどうだろう?こんなはっちゃけた新作聴かされたら、このバンドが「終わってる」なんて、到底思えないでしょ?
11月下旬には北米ツアーのスケジュールも発表された。
ヤル気満々じゃねーか。
「付いていく」なんてヌルく考えていたら、連中はどんどん突っ走ってって、僕らは置いてかれるかもしれないねぇ。
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