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大先輩への嫌疑
N:写真を撮るときは必ず、許可をとりなさい。いいですね。
S:N先生、了解しました。
いつだっただろうか、私の喋り方は軍人的になった。
先に断りを入れておくが、
私は軍人養成寄宿所に居るわけでもなければ、何らかの軍隊に所属しているわけでもない。
Nを大変怒らせると、手に負えなくなると聞いていたので、
リスクとなるような種を単なる会話のやり取りで絶対に生みたくないと思って、今の軍人スタイルに至る。
凛々しく、上官へのリスペクトも欠かさない、
軍人の方たちの言い方をまねようと決めたのである。
N以外では、こんなばかばかしいことはしないよ。
ばかばかしいことであることは、超分かっているつもりさ。
H:昨日の大雨の日に、デパ地下で雨宿りしてたらさ、Nに偶然出会ったんだよ。学校以外で出会うNってな、めちゃくちゃハンサムだよ。ほらッ、これ(写真)。
S:うっわ、めっちゃイメージが違うじゃん。なにこの格好。超イケてるそれじゃん。
M:ごめんね、昨日発表の代理してもらって。
S:いいよ、その分今度飯おごってな。
M:もちろん、それぐらいはする。
S:いゃった。
M:俺が体調不良で、ゼミをお休みするってことをメールで送ったとき、なんて返信来たと思う。
「Mくん、ゆっくり安静になられてください。事情はわかりましたので、体調が苦しい間は、ゼミも授業もお休みなさってください。担当の講師には、私から連絡を入れておきますので、安心してください。
M君が一日でも早く快方に向かわれることを心より願っております。」
S:丁寧で優しい。ねぇ、本当にNは皆に怖がられるほどの先生なの。
M:俺らもわかないんだって、俺たちも知らない先輩の代から脈々と受け継がれてきた基本情報らしいんだから。俺たちの代でそれを逸脱するわけにもいかないし、なんなら後輩に残すべきことだろ。
私の予想、大先輩のほら吹き屋さんが、N先生を悪者に仕立てたんだろう。理由もきっかけも全く推測できないが。
だって、私はもう大学4年生で、
Nが担当教官なのももう4年。
疑念に触れる出来事なんて一度も起きていないんだもん。
こうやって、
性格やイメージなんていとも簡単に、頑ななものに仕立てられることを知った。
もしかしたら、この気づきこそが、私の大学4年間の集大成かもしれない。
卒業論文のテーマは別だけど、このテーマの方が脂がのって、筆が周回軌道に乗りそうなのに。
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