●私と珈琲と衛星ができるまでの地図●35歳の決意
今後の人生、何をして生きていこうか。
誰にも寄りかからず、自分の足だけで立っていられるようになりたい。
自分で店をやるのはどうだろう。
経営なんてことができる自信はないけれど、一人で喫茶店をやって生計を立てている人はたくさんいる。しかも喫茶店のマスターにはちょっと一癖あったり変わっている人もいるから、もしかしたら私にもできるのではないだろうか。
雇われているのではないから定年もなく、体が動く限り続けられる。私一人が細々と食べていく分にはなんとかなるかもしれない。
そして何より人間らしく生きることができる。
喫茶店で初めて働いた時、なんて人間らしい仕事なんだと感動した。
大きなやかんでもくもくと湯気を立てながらお湯を沸かし、コーヒー豆を丁寧に選別して挽き、湯温に気をつけ、コーヒーの蒸らし終わりを見極め、じっくり向き合いながら抽出する。そしてお客様を迎えるために小まめに掃除をし、調度品を整え、空間の美しさを保つ。サービスに気を配り、居心地のいい環境を作る。
そんな一連の仕事がとても人間らしいと感じた。毎日それを繰り返して生きられるのはきっと幸せなことだろう。
そうやって私は自分の力で生きていく道を決めた。
思えば19歳で人生をあきらめて以来、自分のために人生を生きるということを本気で考えたのはこれが初めてかもしれない。
私は同じ人と2回結婚して2回離婚している。2回目の離婚の時の決意だった。
人生の仕切り直しだ。人生で一度くらいは自分のやりたいことをやろう。
35歳にしてやっと、自分の足で自分のために生きていこうと決意した。
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