●あこがれの喫茶人●最終回 喫茶店がいつまでも喫茶店であるように
喫茶店=コーヒーが好きじゃないと入ってはいけない場所、と思っていたせいで喫茶店のよさを実感したのは中年になってからの私が、喫茶店という文化の格好よさに魅了され、その魅力を伝えたいという一心で始めたこの連載も今回で最終回。
いろいろ書いてきたけれど、うまく伝わっていなければ私の力不足。
喫茶店の根底に流れている粋な精神みたいなものを伝えたかったのだけれど、ルールや価値観の押し付けに感じている方がいたら申し訳なく思う。
結局この連載を通して伝えたかったことを噛み砕いた表現で言うと、フルサービスの喫茶店の接客は慣れるとすごく心地いいということ。
喫茶人はそれを知っているから格好よくスマートにくつろぐことができるということ。
注文は店員を呼ばなくても待っていれば来てくれるものだし、お皿を下げられてもそそくさと帰り支度をしなくてもいいし、お冷のグラスは見えるところに置いておけば邪魔をされなくて済むし、長居したければ堂々とおかわりを頼めばいい。
サービスされ慣れていない人が多いなと私は自分の店を始めて気づいた。
お皿を下げるのは帰ってくださいの合図ではないし、お冷を注ぐのも空っぽにならないように気をつけているからだし、目を配っているのは早く会計に来てほしいからではない。
それを知っているかいないかでは居心地のよさはだいぶ変わると思う。
もし途中で店員からの声かけをされたくないと思うのなら、サービスを受けやすいように見える場所に皿やグラスを置いておけばいいのだ。
そうすれば読んでいる本を中断したりスマホの画面を見えないように隠したりしなくても済む。
失礼しますの一言に、会釈するだけでいいのだ。
店員のサービスを知っていれば喫茶店はとても過ごしやすい場所。
それがなくなってしまえば喫茶店は文化を失い、ただの飲食店になってしまう。それはとても寂しい。
喫茶店の文化が消えてしまわないようにとの思いで書いた。
喫茶人が守り続けている文化を。
〈終わりに〉
連載を最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
誰かにとっての喫茶店ライフがよりよいものになれば何よりです。
そしてぜひ知らない人には教えてあげてください。
お皿を下げられても急いで帰らなくてもいいんだよって。
そうすることで喫茶店という場所はいつまでも喫茶店としてあり続けられることでしょう。
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