おっさんがキュンキュンする話

「おじさーん」

俺の家に入り浸っている甥が俺を呼んだ。

「あ? おじさんって呼ぶなよ。年取った気になるだろ」
「もう40じゃん。十分お・じ・さ・ん」

若い時からずっと構ってきた奴にオジサン呼ばわりされるのはどこか腹が立つ。

「うっせ。ガキは飯食って寝てろ」

俺がそう言って、晩飯の大皿をテーブルに置くと、甥が眉を寄せた。

「はぁ? 俺ガキじゃねぇし。もう二十歳超えたし」
「俺の半分しか生きてねぇなら、ガキだガキ。ほら、冷める。早く食えよ」

甥は全く手を付けようとせず、俺を睨むように見据えていた。

「………ホントに俺のことガキだと思ってんの?」
「なん……? ……ちょっ……、おい……!」

腕を掴まれたかと思えば、床に引きずり倒される。起き上がろうとするが、腕を取られて床に押さえつけられた。
いつの間にか図体だけじゃなく、力もこんなに強くなったのか。この間まで俺の後を付いて来た可愛い奴だったのに。
俺を見下ろす甥が一気に大人びて見えた。

「俺がガキじゃないって見せてやろうか?」

降ってくる真剣な眼差しと共に発せられた科白に、俺の胸は大人げなく騒めいた。

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