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小説『闇に堕ちにて、空に溶けゆく』5/28(火) 【第8話 週末だけの恋人】

私が起きた気配で、晴香も目を覚ました。
そして私と目が合うと、背中を向けて言った。
 
晴香「おはよう、、、、、、、
あの、ごめん、服を取りたいんで、
ちょっとだけ目をつぶってもらっていい?」
 
私はその言葉をなぜか愛おしく思えた。
私が頷いてから背を向け目を閉じると、
晴香が布団から出た気配を感じた。

晴香は服を着るあいだ
「目を開けちゃだめ」と言ってる。
何回目かのそのセリフの後、晴香は言った。

晴香「もう、目を開けてもらっても、大丈夫。
それから、洗面所、借りてもいい?」
私は、「勿論」と答えた。
晴香は「ありがとう」と言って、部屋を出た。
 
私も布団から出てクローゼットから服を出し、
着替えながら、ふと思った。
昨日のやり取りで、今日は2人とも休みだと、
お互いが知ることになった。

この流れで、今日、一日、
晴香と過ごすことになるんだろうか?
と思ってしまった。

そのことが、どうしても許容できない、
ということではない。しかし明日からまた、
ハードな業務が続くと思うと、
正直に言うと、できることなら、
今日は1人で過ごしたい気分だった。

そんなことを考えながらリビングに向かった。
晴香が洗面所を使っているので、
私は台所で、顔を洗うことにした。

洗顔の後、そこにあった
医療雑誌とノートが、目にとまった。
それをテーブルに置いてからソファに座った。

わざと、目についたような場所に置いたのは、
晴香に気を遣わせようとする、
ズルい考えが、あったのかもしれない。
 
髪を手櫛で整え最低限の身だしなみを整えて、
晴香がリビングに来た。
私の"ズルい"罠に気づく前に晴香は言った。

晴香「洗面所ありがとう。
あと、昨日の角煮、とても美味しかったです。
じゃあ、私、自分の部屋に戻ります。

明日から、また忙しいだろうから、
今日ぐらいゆっくりして下さいね」
そう言って、晴香は部屋に帰っていった。
 
まるで、私が"ズルい罠"を仕掛けているのを
見ていたかのような晴香の言葉に少し驚いた、
と同時にホッとした。

 
晴香の言葉通り、その日は外出せず家に居た。
思考を巡らせる時間は、たっぷりあったので、
晴香とのことを考えた。

少なくとも晴香は、私を拒絶はしていない。
一方で今日の態度を見る限りは
私を束縛しようとも思ってなさそうだ。

考えてもみれば、晴香ぐらいの年齢であれば、
短絡的に恋愛に狂うようなことはないだろう。
 
昨晩、これまでの晴香の、恋愛の話を聞いて、
そして何より、身体を重ね思ったのは、
晴香はこれまでそれなりの
恋愛はしてきただろうという事だ。

だからこそ言葉は悪いが晴香に
付きまとわれることはないだろうと思う。
 
そうであるならば、これからの2人の関係が、
どういう形になるか?
それは自分しだい、という結論に至った。
そして答えはすぐに導きだせた。

 アルコールのせいもあるが、
会う度にお互いの身体を求めあっていること。

今朝、晴香が部屋に戻ったことに、
ホッとした自分がいたこと。

その2点を考えると、体の関係が暫くは続き、
進展がある可能性は低い、という答えだった。
勿論、先のことはわらかないが。
 
結論を出した解放感から、私は空腹を感じた。
昨晩、飲み過ぎたために、
朝と昼は抜いていたこともあるだろう。
時計を見ると、まだ16時だった。

夕食には早い時間だが、ここで間食をとると、
食べることが出来なくなりかねないので、
晩酌をしながら、酒のつまみのようなもので、
夕食をとることにした。

冷凍食品の唐揚げ、つくねと、煮物、そして、
サバ缶をアテに、ビールを飲んでいた。
ふとその時、今、晴香はどうしているだろう?
という思考が浮かんだ。

とは言っても、考えてもみれば
晴香の連絡先すら知らない。だから、
連絡を取りたくても取れないだけだ。

 
翌日から、再び、病院での激務が待っていた。
そんな中でも、晴香のことは気にしていたが、
彼女は普段と変わらなかった。

病院で会っても、仕事の話しかしなかったが、
出勤時に病院の職員入口で一緒になった時に、
周りにバレないように、LINEの交換はした。
 
週末前になると、決まって私からLINEをした。
「今晩、空いてる?空いてれば、うちくる?」
という簡単な内容だった。
 
週末、お互いが必ず非番とは限らないので、
決まった曜日ということではないが、
土日のどちらか、或いは金曜日の夜に
晴香が来る事が多かった。

食事を楽しんでから、互いの身体を重ねあう、
そんな週末を1か月続けた。
 まさに、週末だけ、それも、
夜だけの恋人という関係だった。

体の相性が良いのは、間違いないとは思うが、
そのことだけで、繋ぎとめる関係かと言えば、
正直自分でもわからない。

ただ、それ以上、考えるのはやめた。

(第8話 終わり)次回は5/30(木)投稿予定

★過去の投稿は、こちらのリンクから↓
https://note.com/cofc/n/n50223731fda0

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