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現役大学生レコーディング・ミキシングエンジニア、Tomoya Nakamuraが作品に込める想いとは

はじめに

Cody・Lee(李)『シティボーイズ・オン・ザ・ラン』を始めNo color traffic light『隣のスタジオ』、monopolii『ランドリー』など現役大学生ながら多くの作品をレコーディング、ミックス、マスタリングしディレクションまでもを手掛けてきた敏腕レコーディング・ミキシングエンジニアTomoya Nakamuraの作品に込める想いを聞いた。

インタビュー・テキスト・編集・撮影:高橋響

インタビュー

** 有名かどうかじゃなくて、自分の好きなバンドにずっと携わっていたい。**

-まず、レコーディング・ミキシングエンジニアを志すきっかけはなんでしたか?

Tomoya Nakamura:ZOOMのマルチエフェクターを小学3年生の頃に買って、それに付いてきたcubaseで遊び始めたのがきっかけかな。幼馴染みが曲作りをしていたから、作った曲を俺が録音したりして遊んでた。そこから少しずつレコーディングやミックスに興味を持つようになった。スキマスイッチの『夕風ブレンド』初回版に付いてきたレコーディングドキュメントを見て「楽しそう。俺も将来こういう仕事をしたい。」と思ったな。子供ながら自分に表舞台で活躍できる程のセンスがないことを分かっていたからせめて裏方で好きなバンドに携わりたいっていう気持ちはずっとあった。

-初めは遊びでやっていて徐々に「こういうことがしたい。」と認識し始めたということですね。

Tomoya Nakamura:そうそう。スキマスイッチのレコーディングドキュメントを見た時、将来やりたいことが明確に見えた気がする。

-小学生の頃、部活動などはやっていましたか?

Tomoya Nakamura:テニス、水泳をやってた。

-結構カツカツな1日の中でいつ録音遊びをしていたんですか?

Tomoya Nakamura:普通に学校終わってから「皆で歌録ろうぜ。」って。幼い頃の体力というか探究心は計り知れないなと思うね。今はそんなに体力持たないよ(笑)。

-ですね(笑)。

Tomoya Nakamura:正直その頃はcubaseを使いこなせなくて無料のソフトで遊んでた。そもそもミックスという概念がなかったから音のバランス整えたりするくらいしかしてないけど。

-小学3年生からミックスをやっていたとなると、ミックスを始めて12年くらいになりますね。

Tomoya Nakamura:そうだね。「12年やってこれかよ!」って思われるの嫌だけど(笑)。

-レコーディングをする中で譲れない拘りはありますか?

Tomoya Nakamura:ディレクションをさせて欲しいっていうのはひとつあって、元々自分がやっていた事もあってギターロック系バンドのレコーディングが多いんだけど、そういうジャンルは歌と演奏に感情を込める事が1番大事だと思っていて...だから俺が直感的にグッとくるまで録り直したいしグッとこないモノは世の中に出したくない。

-レコーディングエンジニア・ミキシングエンジニアがディレクションまで行うことはよくあるんですか?

Tomoya Nakamura:作品にもよるけど、日本はディレクターがいてプロデューサーがいてレコーディング・ミキシングエンジニアがいてっていう環境が多いはず。海外だとディレクション、プロデュースなんなら作曲までマルチにやっているエンジニアの方が多い印象。

-なるほど。勉強になります。好きなレコーディング・ミキシングエンジニアは誰ですか?

Tomoya Nakamura:結構コロコロ変わるんだけど日本人だと玉乃井光紀さん(studoFine)っていう高橋優をミックスしている人とか、井上うにさんっていう椎名林檎とか最近だとOfficial髭男dismとかやってる人が好きかな。海外だとGreen Dayとかミックスしているクリス・ロード・アルジが好き。3人とも普通のミックスじゃなくて個性のあるミックスをする人達で、井上うにさんなんかは本当にちょっと聞いただけで「うにさんのミックスだ!」ってわかる。コンプがガチガチのミックス。綺麗なミックスじゃないんだけど、それが格好良くて俺は好き。

-自分のレコーディング・ミキシングエンジニアとしての売りはなんだと思いますか?

Tomoya Nakamura:インディーズバンドにとっては価格が良心的で身近な存在(年齢や環境)っていうのはひとつの売りかな…?あと、大人の人にどう評価されてるかわからないけど予算を抑えてメジャー寄りのミックスができると思ってる。インディーズバンドのエンジニアとかだと予算もあまり組まれないし時間も限られているからインディーズ感が残るミックスになりがちだけど俺は自宅でミックスができるからスタジオ代もかからないし、時間も多く使える。だからメジャー寄りのミックス(高い音質、時間をかけたミックスなど…)ができると思う。…って言ってもどう評価されるかわかんないけど(笑)。まだ俺は評価の基準を掴めてなくて、少し有名なインディーズバンドの曲とかでも「これでイイの?予算なかったのかな。」っていうミックスが結構あって、でもその曲が世の中では評価されていて、曲が良いからミックスの完成度まで見ないんだろうけど。最近、そういう傾向は個人的に感じているかな。

-僕もミックスに関しての知識は全くないのですがインディーズバンドを聞くと「めちゃめちゃガツンとくるじゃん…」とか「曲は良いけどなんか薄っぺらいな」とかは感じます。そして最近、同い年くらいのインディーズバンドでガツンとくるバンドが少ないような気がします。ミックスコンテストに応募したりはしないんですか?

Tomoya Nakamura:去年の10月頃、No color traffic lightの「You're Light」って曲で応募したけど審査員講評をまだ貰えてない(笑)。

-今までで1番記憶に残っている(印象深い)曲はなんですか?

Tomoya Nakamura:最新作が常に1番の出来で印象に残っているんだけど、特にCody・Lee(李)の「春」は自分なりに上手くまとまったミックスが出来たと思う。少し前は音圧アゲアゲ、いかにうるさくするかを考えてミックスしてたんだけど結果的にキンキンうるさくなっちゃって、でもそこから色々なバンドのミックスをするようになって音圧だけじゃない所にも目が行くようになった。ダイナミクスのある中でどう音圧のあるミックスが出来るかとか...まだ模索中だけど。

-No color traffic lightやmonopoliiの曲を聞いたのですがTomoya Nakamuraさんの携わっているバンドはジャンルこそ違えど良い曲ばかりで...自分の「このバンド、録ってみたい。」と思う基準って何ですか?

Tomoya Nakamura:やっぱり歌かな。小さい頃から聞いていたスキマスイッチとかMr.Childrenが俺の根底にあるから歌を大事にしているバンドをやりたい。上手い下手とかではなく感情のこもった歌を歌うバンドかな。その方がディレクションもやりやすいし。

-なるほど。確かにNo color traffic lightやmonopoliiなどTomoya Nakamuraさんが携わっているバンドは共通してメロディが綺麗、且つ歌や演奏に感情が込められているような気がします。今後、挑戦してみたいジャンルはありますか?

Tomoya Nakamura:オーケストラを迎えたポップスの曲とかジャズとかはやってみたい。

-Cody・Lee(李)の次回作にオーケストラを迎えましょう。多い月で何本くらいミックスしますか?

Tomoya Nakamura:今年の春が1番多くて4バンドやった。合計15曲かな。大変だった(笑)。

-15曲は多いですね...

Tomoya Nakamura:いや、本当に多すぎるってのも考えもの。月に2曲くらいは継続してミックスしていたいかな。

-自分の持っている機材で1番高額なモノを教えてください。

Tomoya Nakamura:スピーカーかな...ペアで12万円くらい。マイクも11万円くらい。20万円超える機材買ってないんだよね。パンチがなくてごめん。

-素人目に見たら十分高いですよ...

※Tomoya Nakamuraの自宅。フックに亀甲縛りされたドラえもんがつるしてある。

-将来はフリーで活動されていく予定ですか?

Tomoya Nakamura:大学を卒業したら玉乃井光紀さんのいるstudioFineに入りたくて、そこでアシスタントとして学びたい。俺はずっと独学でミックスを勉強してきたから基礎知識を付けたい。そしてある程度学んで「もう1人でもやっていけそうだな」と思ったら独立したい。40歳くらいになると思うけど。フリーは難しいかな...エンジニアもアーティストみたいに事務所に所属している人が多いからね。でも自分でスタジオを立ち上げるのも夢があって良いね。

-独学でここまで出来るようになったの本当にすごいと思います。ミックス・ミキシングエンジニアという立場で考えた時、現役大学生である利点ってなんだと思いますか?

Tomoya Nakamura:通っている大学にレコーディングスタジオがあってそこを使える事かな。

-そのレコーディングスタジオを普通に借りたらどのくらいの額になるんですか?

Tomoya Nakamura:あの規模だったら1日15万円前後じゃないかな。そこを無料で貸してくれるのが1番の利点かな。

-「自分のレコーディング・ミキシングエンジニアとしての売り」にも繋がることですが、だから安く録れるという仕組みなんですね。

※大学のレコーディングスタジオとマイクを立てるTomoya Nakamura。

-今1番やりたいバンドを教えて貰っても良いですか?

Tomoya Nakamura:レイラかな...すごい好きだから。あと、これは地元のバンドになっちゃうんだけどane-moneかな。大谷修登さん(Vo/Gt)の歌がすごい好きで何回か「やりたいです。」って声かけたりしたんだけど中々実現まで漕ぎ着けられなくて...有名かどうかじゃなくて、自分の好きなバンドにずっと携わっていたい。もし今、自分が有名になって有名なバンドとやれても今の技術力では先がないだろうから、だったら大学生のうちは好きなバンドに携わっていたいなって思う。

最も影響を受けたアルバム

●『DISCOVERY』-Mr.Children

主な作品

●Cody・Lee(李)『シティボーイズ・オン・ザ・ラン』

●No color traffic light『隣のスタジオ』

●monopolii『まほろば』

●carAbid『パラドックス』


Tomoya Nakamura Twitter 

tumbler


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