「生きる演技」

 なんて、えげつないものを書くんだろう。
 町屋良平さんの小説を初めて読んだ。読書感想文としては何も書けそうにない。きっともう一度最初から読み返すだろう。

 言葉という振る舞い。人が自分として振る舞うなかに、意識にも、なんなら無意識にも感知されないままでのっかってくる、まったく思議の範囲を超えた場所、時間、人やものの息づかい。そうして振る舞われた行為や言葉。それは、果たして誰の、何のありさまなのだろう。しかし、身体は間違いなく、ある特定の誰かだ。振る舞うもの。言葉を放つことも身体を無くしてはできない。この果てしない隔たり。それでも、自分が感じてすらいないものが自分の言動にのって、自分としてあらわれ出る。現実に、人間が生きているということ。

 主人公たちが高校に入学する頃に物語は始まり、終わるときには冬が訪れている。俳優としての日常を経験している彼らは、演じること、そして演じないこと(=ありのままの自分として過ごすこと)の差、または、差の逆に当たるもの(=演じないことを演じること)を、敏感に感じとる。

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