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TPA23出展によせて

昨年に引き続いて『TOKYO PORTRAIT AWARD 2023』に出展させていただきました。
今回のモデルはフリーランスでモデルや舞台などに出演されている奏歌さんにお願いしました。

ポートレートを始めたのは2020年。
といっても応援しているタレントさんの撮影会に参加していたくらいでした。
それからいわゆるリクエスト撮影で被写体として活躍されている方にモデルをお願いするようになったのが2021年。

この頃は50mmの単焦点1本で現場に行き、とにかくモデルさんをどうやったら魅力的に撮れるのか?という事ばかりを考えていました。
ただ、一方で自分の写真の厚みや深みのなさをずっと感じていました。

情景ポートレートへの憧れ

そんな時にSNSで知ったのが『情景ポートレート』という言葉でした。
惹かれた写真に付いていたハッシュタグのリンク先にはとても素敵な写真がたくさんありました。

情景ポートレートを提唱?されていた高橋伸哉さんの著書も拝読して、見よう見まねで試行錯誤しながら「監督」になって演出をして写真を撮り始めます。

そんな頃に記念のつもりで、撮影して出展したのが昨年のTPAでした。

今思えば、準備段階も撮影現場でも現像段階でもたくさんの反省点がありますが、この時の自分の最高の一枚を出展できたのはラッキーでした。

ですが、終わってみると人間、欲深い物でw来年もチャレンジしてみたいと思うようになっていました。

今年の準備は年明け最初の奏歌さんとの撮影から始めました。
本人には今年一年間撮影させてもらい、写真展に出展する作品のモデルを務めて欲しいことを伝え快諾いただきました。

それからはほぼ毎月撮影させていただき、出展候補の作品を貯めていきました。ただ、3枚を出展するTPAのレギュレーションの為には、1枚1枚の魅力+3枚で一つの世界を伝える必要もあると考えると、決め手に欠けていました。

バックストーリーの構築

そんな時に考えたのが、物語を自分で作ってみるのはどうだろ?という事でした。
それまでも現場のその場で設定や感情をモデルさんに伝えて撮ると言うことをしてはいましたが、自分の頭の中の物語を文字に起こして見ることにしました。

物語を組み立てる時にインスパイアされたのが、たまたまYouTubeで見た藤井隆さんの『ヘッドフォン・ガール -翼が無くても-』で、女子高生の悩みをテーマにした、ショートストーリーを書いてみました。

始業式の日の朝、家を出て学校とは逆方向のバスに乗った。

知らない名前のバス停をいくつも通り過ぎた。

窓の外をスワイプするように流れて行く見慣れない建物の隙間から、キラキラとしたものが見える。

「ツギ、トマリマス」

近くのボタンに手が伸びていた。

バス停の前の路地を抜けて来た風は潮の匂いを運んできた。

路地の先は眩しい世界だった。

堤防に腰掛け、ヘッドフォンを外して、カバンを枕に目を閉じる。

気持ちのいいリズムを刻んでいた波の音は遠くなっていく。

どのくらい経った?
頬がヒリヒリと痛いし、腕も赤い。
太陽は一番高いところにいた。

一人で知らない海に来て、大自然に触れたら悩みが解決!なんてことあるわけない。
それでも、自分の心の音を聴くことが出来た。

今なら、まだ放課後の三者相談に間に合いそう。
バス停への道を走った。

この物語の1シーンを写真で撮ることで、全体のまとまりを出すのが狙いです。

撮影準備

必要なロケーション探しと衣装や小道具探しを並行して進めました。
初めは海にこだわらず、奥多摩の渓谷にもロケハンに行き検討しましたが、交通の便やイメージに合うロケ場所を見つけられませんでした。
以前撮影したことのある稲毛海岸や逗子も考えましたが、最終的には以前の撮影のロケハンで目をつけていた葉山の諏訪町下海岸にしました。

ここは隣の森戸海岸のように海水浴客の多いビーチという感じではなく、地元の人だけが立ち寄りそうな海岸で、岩場がポツポツとあり、砂浜は綺麗で波も穏やかなので、撮影がしやすそうだと考えました。

バックストーリーとロケ地を決めて、それを奏歌さんに企画書として共有。衣装については奏歌さんと相談しながら決め、小道具のスクールバッグも調達しました。

残るはヘッドフォンです。写真のタイトルにもなるので重要です。女子高生に似合いそうな可愛らしいデザインのものをAmazonで探すも、なかなか見つけられずにいたのですが、10年以上前にかっこいいなぁと思ったヘッドフォンのメーカーをふと思い出しました。

それがスカルキャンディです。
僕が印象に残っていたのは耳当ての部分がスケルトンでコーヒー色のヘッドフォンでしたが、在庫を見つけることが出来ず、代わりにメルカリでたまたま見つけたのが、今回小道具に使ったヘッドフォンです。

撮影イメージにピッタリでとても気に入ったので、今回の物語の女の子のその後を描く撮影でも使いたい小道具です。

撮影当日

準備万端で8月下旬の撮影当日を迎えました。
リアリティを持たせるために、なるべくバックストーリーの時間に近い日を選びました。

逗子駅で待ち合わせて、バスで現地まで移動。当日は晴れたり、急な通雨が降ったり、レンズを落として凹みまくったりと色々ありました😓

奏歌さんには物語の中の女子高生を演じてもらい、そのシーンを写真に収めるという、自分的に初めての試みでしたが、なんとか撮影を終えることが出来ました。

思い描いていた通りの理想的な撮影ができたかと言われれば、そうではありませんでした。
その証拠に、撮影した写真のセレクトでは苦戦して、10月の入稿直前まで悩んで、なんとかギリギリで提出することになり、当たり前ですが改めて、自分はまだまだだなぁと実感しました。

それでも、当時の自分が撮れた写真の中で一番、表現したかったものが伝わると感じた一枚を中心に3枚選びました。

モデルを引き受けていただいた奏歌さん、暑い中での撮影、本当にありがとうございました。

フォトブックには他のカットや、今年で一年撮影した奏歌さんの写真をまとめましたので、できれば手にとってご覧いただけると嬉しいです。

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