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ラッピングフィルムを使った西洋剃刀の研ぎ方

2020/04/22 公開
2020/04/28 アクリル板の選び方に追記
2020/05/26 使用するフィルムの追加、用語のブレを修正

はじめに

目的
・アクリル厚板に張り付いたラッピングフィルムを砥石として使う
・砥石を手に載せて、台等に固定せず研ぐ

という2つのコンセプトを軸に、安価に揃う道具を用いて#12000から#14000の砥石相当の精度で研磨し、切れ味において天然の仕上げ砥石に近い刃を西洋剃刀に付ける方法を紹介します。

砥石を使った方法と比べて、実用的な成果物を得るまでに必要な訓練はかなり少なく済むようになっています。
また、練習を続けてストロークの精度が向上することで、より精度の高い表面仕上げが実現できるようになるでしょう。
比較的小さな初期投資でスタートできますので、ぜひ一度試してみてください。

対象
西洋剃刀研ぎは未経験~研ぎ始めて間のない人を主な読者に想定しています。
単にちょっと違った技法を試してみたい方や、固定された砥石で研ぐ方法で問題なく実用的な刃を付けられる方も、砥石を固定しない研ぎ方からは得る物があるでしょう。

扱う範囲
新品もしくは新品に近い、刃の真っ直ぐな西洋剃刀のベベルを設定した後、番手を上げつつ研磨、仕上げまで行う方法を扱います。
ですからその前後の工程、すなわち使い込まれた西洋剃刀のベベル/刃線修正や、革砥によるストロッピング、顔そり自体、また日本剃刀については触れません。

2つのコンセプトのメリットについて

まとめると、安価に道具が揃い性能の維持が容易、研ぐ際に技術のムラをある程補ってくれる、という事になります。以下で各項目について説明します。

・ラッピングフィルムによる研磨
一般的な砥石に対してラッピングフィルムを使う方法は、品質の安定した道具が安価に揃い、維持が容易であると言えます。
西洋剃刀の仕上げ研ぎには、一般に#12000かそれ以上の番手の砥石が使われます。
砥石を用いて研ぐ場合は仕上げに使う#12000だけでなく、ベベルの設定に使われる#1000あたりから段階的に高い番手の砥石まで、#2000、#4000、#8000 あたりを揃えるのが一般的でしょう。
またそれぞれの砥石の平面を維持するために精度の高い面直し用の砥石が必須であり、なおかつ平面を維持するための研磨技術が求められます。
それに対してラッピングフィルムを使う場合、番手ごとのラッピングフィルムとアクリル厚板だけですべての工程をこなすことができる上、平面維持のための道具と技術は完全に不要です。
ラッピングフィルムは大量生産品で品質が非常に安定しており、安価かつ一貫した製品が得られます。

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