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乱数放送の思い出

乱数放送という、一般消費者向けではない短波放送があります。
アルファベットや数字の羅列などを読み上げるだけの内容のものが多く、その不気味で謎めいた雰囲気から一部の人々を惹きつけてやみません。
冷戦時代には盛んだったとのことなのですが、2023年現在でも同種の放送は継続されていて、例えばこういったページで有志による放送スケジュールの予測が公開されています。

さらなる情報については各自「乱数放送」や"Numbers Station"といったキーワードで調べてみてください。波長の合う人にはとことん合うタイプの何かです。

2010年頃の話ですが、私は比較的熱心に乱数放送の受信を試みていました。
先達が提供するスケジュール予測と受信機の間借りサイト(世界中の熱心なラジオ好きが、自慢の装置をインターネット経由で誰でも操作できるよう提供するボランティア的なサービス)が、ブックマーク欄の目立つところに置きっぱなしでした。

その日は暗いうちに目が覚めてしまって寝直すこともできず、PCの前になんとなく座ってしまいます。
ブラウザを立ち上げ、送信スケジュールを確認してラジオを間借りし、候補となる周波数に合わせてみると、ノイズの中から
人の声が聞こえてきました。
実際は合成された音声であって人の声ではないのですが、無限に広がるノイズの海であった所にあきらかな秩序が現れた事の底知れない不気味さ!
私の動揺がいかなるものであったか、実際に体験してもらわないことには伝わりづらいと思いますが、触れてはならないものへの通路が開いてしまったという感じで実に恐ろしいものでした。
録音するソフトを待機させていたものの、突然の音声に慌ててしまい冒頭を録りそこねるていたらく。
その時の音声がこちらです。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm11312811

インターネットを経由した受信(と言えるのか?)ですらこれほど動揺したのだから、自分で設置したフィジカルなアンテナと受信機からこんな声が聞こえてきた日には、この世の終わりのような気分になるんじゃないかしらん。

このモサドのE10を受信してコツをつかめたのか、その後はキューバ系や中国系を立て続けに聴取できるようになり、残念ながら当初の感激はだんだんと薄れていってしまいました。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm13940998
これはちょっと気味が悪くてうれしかった物。

ニコニコ動画で視聴した人たちも、なんだか得体の知れない気味の悪さを感じ取ってくれているようですね。

という、乱数放送への情熱や音声が受信できた瞬間の世界が歪むような気味の悪さを、某SF作品を読んでいて思い出したのでメモしておきます。

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