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③首都直下巨大地震を準備する

火災旋風

都市の地震で起きる火災の1つに「火災旋風」があり、火災旋風は、ときに高さ200mを超える巨大な炎の渦が、竜巻のように家屋や人を吹き飛ばし、文字通り街を焼き尽くす現象なので、単なる火災と違い、風速60mにも達する凄まじい風で、火の粉を遠くまでまき散らし、もともと火種のなかったところにまで延焼を拡大させるなど甚大な被害をもたらしますが、これは、どの火災現場でも発生する可能性があり、動いていく方角を予測することは不可能とされているので、人が密集する東京のような大都市では、火災旋風の発生が大きな人的被害を招く恐れがあり警戒が必要です。
この火災旋風は、東日本大震災でも目撃されており、震災から3日後に大規模火災が起きた気仙沼市で、突然、推定の高さ230m幅130mにもなる巨大な火の渦が現れました。
ほかにも、火災旋風は、第二次世界大戦の空襲や山火事など世界各地で多数目撃されており、1923年の関東大震災では、地震発生の1時間後から34時間に亘り、110個の火災旋風が目撃されており、横浜市では30個が目撃され、火災旋風を起因として「3万8000人が命を落とした」と言われています。
また、火災旋風には2つのタイプがあり「炎を含む火柱状の渦」と「炎を含まない渦」があり「炎を含まない火災旋風」も、竜巻のような風で砂ぼこりや煙などを巻き込んで黒い渦になると考えられており、甚大な被害をもたらす危険性があり、大規模な火災の風下側に「黒い竜巻状の火災旋風」が発生する場合もありますが、夜間は、火災旋風自体が黒く見えにくいので、接近に気付かず、深刻な人的被害を引き起こす恐れもあります。

同時多発火災

内閣府の被害想定によれば、東京消防庁は、消防車500台近くを有する全国一の消防力を誇りますが、首都直下地震では、約2000件の火災が発生し、そのうち約600件は、消火が間に合わず大きな火災になると推測されており、これは、消防力を遥かに超えた「同時多発火災」が発生することの表れです。
とくに、このリスクが高いのが木造住宅が密集している「木密地域」であり、木密地域は、道幅も狭く近隣の建物に火が燃え移りやすく、最悪なのは、こうした木密地域が都心を取り囲むように広がっており、東京の木密地域の面積は、東京ドームおよそ2600個分(1万3000ヘクタール)にもなり、東京消防庁のシミュレーションでは、杉並区の住宅街の1戸で出火した場合、出火から76時間後には1万3000棟にも燃え広がる結果が出ており、このような1件の火災で延焼に巻き込まれる可能性のある建物群を「延焼運命共同体」と呼び、東京には3000棟以上が燃える「延焼運命共同体」が70ヶ所ほど存在します。
また、木造家屋ではなくても、耐火造建物が地震の揺れで壊れて延焼を拡大させるケースもあり、たとえば「杉並区とその周辺の被害想定は400人余りの犠牲者」とされていますが、実際には、その10倍近い死者が出るケースも予測されます。
この原因は「逃げ惑い死」であり、これは、住民が避難する途中で火災に巻き込まれて死亡してしまう現象ですが、火災から逃れるために「広域避難場所」に向かった際に、避難場所の近隣まで延焼が拡大していて引き返そうとしても、後ろから大勢の避難者が押し寄せ身動きが取れなくなり「逃げ惑う」うちに、炎にまかれ死傷するというケースが、これまでの想定以上のことが起こり得るというシミュレーション結果も出ています。

群衆雪崩

首都圏には、老朽化したビルも数多く存在するので、地震により根元から横倒しになり幹線道路を防いだり湾岸地域の埋め立て地にあるコンビナートの燃料タンクなどが地盤の崩壊で傾いて次々に爆発・炎上し、河川上の橋や高架橋などが崩落し、交通網は寸断される可能性も十分になり、そうなった場合、多くの人々は、逃げ場をなくします。
いま、危機が迫っている首都直下地震ですが、大量の帰宅困難者も予想されるなど、過度な人口密集地域である東京だからこそ被害が拡大する恐れがあります。
通勤通学の途中や買い物で外出中など、会社や学校、自宅などから離れたところで地震と遭遇するのは、帰宅困難の中でも最悪の状況ですが、通勤・通学時間帯の朝8時に首都直下地震が起きれば、こんな事態に陥る人たちが約200万人も発生します。
首都直下地震が起きた際、帰宅困難者は、1都4県で800万人に達すると予測されており、街にあふれる650万人とも予測される帰宅困難者が引き起こす被害が「群衆雪崩」ですが、これは、歩道橋や地下街への入り口のような階段の近くや急に道が細くなった路地などの歩行者が密集しやすい場所で発生しやすく突発的な些細な出来事を起因として群衆が一気に動きだし、そのうちの誰か1人でも倒れた場合、後ろの人たちも次々と、雪崩を打つように折り重なって転倒する「将棋倒し」状態を引き起こします。
シミュレーションでは、地震発災1時間後には、丸の内、新宿、渋谷、赤坂など、東京の至る所で過密状態が発生する結果になっており、首都直下地震では、大きな道路と道路が交わる交差点、橋、駅、地下街、ビル街から出てくる人たちが集中やすいので、都心各地で同時多発的に群衆事故が発生するリスクが高くなります。


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