絶対色覚の話

「………あの人、」
「占術師がどうした……って、あー…」
「二人とも、そんなところで立ち止まるなよ」
「…そうだな。リオ、端に避けるぞ」
「え、ええ……ごめんなさい、二人とも」
「……んで? “くらのめ”がどうしたよ」
「……コーン、声が大きいわよ。それにあの人は…」
「占術師の出で立ちに、黒の布あて。パッと見は、絶対色覚だ」
「は? なんだその……ゼッタイシキカクって」
「…説明してもいいが、そろそろ移動するぞ。流石にじろじろ見たままじゃ…「ボウヤたち、行ってしまうの?」
「「「!!」」」
「おばさんねえ、朝から一人もお客さん来なくて退屈してるの。少し相手になってほしいわ。私の好きなお話を聞かせてくれたら、タダで占もしてあげる」
「! 本当ですか?」
「おいリオ…!」
「…何よルーク。絶対色覚の占いがタダなんて早々ないわよ。止めないで」
「それは、本物だった場合だろ…! 占いの途中に呪いでもかけられたらどうするんだよ!」
「あの人は偽のことなんか語らないわよ…!」
「どんな根拠があってそれを言うんだよっ」
「ただの勘よ! 悪い!?」
「わ、悪いってお前なあ……!」
「リオの勝ちだな。ルーク、諦めろよ」
「……お話し合いは終わった?」
「っ! すみません、お願いします。あなたの好きなお話ってなんですか?」
「さあ?」
「えっ」
「それはあなたが当ててみてちょうだいな。あなたが自分でとびきり面白いと思う話を3つ、聞かせてみて」
「えええ………」
「…また厄介なのに引っ掛かりやがって…」
「まあまあ。オレたちも一緒に考えてやろうぜ」

「いいのかよ? あんなに心配してたのに、あいつからこんなに離れて」
「……ああ。俺も用心しとくが…お前も構えとけよ。目を離すな。このままで会話するぞ」
「あいよ。…で、解説してくれるんだろ?」
「ああ。絶対色覚は、文字通りだよ。世界の全てを四色で分けられる能力を持つ人間のことだ。四色とは、赤青白黒のこと」
「……悪い、全然よくわからねえ。見るもの全部四色のどれかにしか見えないってことか? 黄色のモンスターとかも? 森の緑も?」
「『四色にしか見えない』か。相変わらず面白いことを言うな」

「オレはお前の面白いと思う基準が未だにわかんねー」
「俺とは物事を見る視点が違うから新鮮って意味だよ」
「へー、そんなもんか。で、なんで四色なんだよ」
「それは後でな。その辺り話し始めたら、リオが占術師に話し終わっても時間が足りない」
「げ、そんなに長いのかよ……じゃー、なんでくらのめみたいに目を布で覆ってるんだよ。つーかくらのめと絶対色覚の見分け方とかあんの?」
「そう矢継ぎ早に質問するな。まず、絶対色覚は常に目を開けていられない。常に全てを四色で分ける能力だからな、目を開けているだけでかなり消耗する。というか気が触れる。だから敢えて『何も見ない』。見分け方は目の位置でつけてる布の色だよ。くらのめは白、絶対色覚は黒だ。あとくらのめは全体的にボロボロだよ。あの占術師は綺麗な格好だっただろ」
「布の色に意味は?」
「白は光を感じやすくするため、黒は比較的瞼の裏の世界にも優しいらしいから、だそうだ」
「瞼の裏のセカイィ?」
「不審げな顔するな。流石にその意味は俺もよくわからないから」
「つーかお前やけに詳しいよな。そんなに会うような種類の人間でもないだろ?」
「………前に、ちょっとな」

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