召喚魔法の話

「正直、召喚魔法とか禁じた方がいいと思うのよね!」
「何だよいきなり」
「急に話を始めた私も悪いけれど、あなたにだけは咎められたくなかったわよ、コーン」
「まあまあ、リオ。そんなイライラするなって」
「そうだ落ち着けよ」
「誰が増幅させてると思ってるの? ねえ? 大体「あーあー! それより! リオは何で召喚魔法を禁止したいんだ?」
「……そう、その話だったわね。召喚魔法は難易度が高い分、事故が起きやすいわ。それでも『何もない場所から物を呼び出す』というのは多くの人間が夢見るみたいで、数多くの犠牲が出ているにも関わらず、時代を超えて研究や実験が行われている。どう考えても最悪よ」
「王宮とかそのこと知らねーの? 御触れ出してもらえるように嘆願書とか出すか?」
「知らないはずは無いわ。過去に平民が王族を召喚しようとした歴史も存在するもの。召喚魔法を無効とする対策は城全域に何かの形でかけられているはずよ」
「げ、そんなのあるのかよ! ってか人間の召喚ってなんだよ。移動魔法とは違うのか?」
「ちょっと長くなるわよ。そこの食堂にでも入りましょ。奢ってねコーン」
「オレかよ!」

「移動魔法は空間を対象とした魔法。召喚魔法は、そうね…召喚対象と魔法使い自身にかかる魔法と言われているわ」
「それ諸説あるよな。有力なのがそれか?」
「鋭いわねルーク。まあ、その通りよ。現在はこの説が多いみたい」
「つーか、さっきの口振りからして『何もない場所から物を呼び出すのはできない』のか?」
「…現在扱われている召喚魔法は3つの手順が必要とされているわ。召喚対象へのマーキング、魔法使いが存在する空間の固定、召喚空間のマーキングの3つよ」
「それでもまだ確立できてないんだよな」
「ええ。成功例の数字は公開されてないみたいだけど…難しいみたいね」
「おい。今日のお前ら変だぞ。オレの質問に答えろ。人間の召喚に失敗したらどうなるんだ? 何もない場所から物を呼び出すのはできないのか?」
「………」
「………。リオ、俺が」
「大丈夫、ありがとう。……コーン、覚えておいてね。この話は一度きりよ。二度はしないわ」
「おう。大事な幼なじみ様の言葉を、オレが忘れるわけないだろ」
「…嘘つき。お菓子を譲ってくれる約束忘れたくせに」
「魔物に殴られた衝撃でふっとんじまった。悪ぃな」

「何もない場所から物を呼び出す。これは方法が確立されてないから、今はできないわ。さっきも言ったとおり、対象と空間へのマーキング…魔方陣同士を結びつければ、可能かもしれないとは言われているのよ。ただ、実際成功したことはないだけで」
「で、人間の召喚が失敗した場合は?」
「ええ。…失敗した場合は、『欠損』よ」
「欠損?」
「身体、魂、記憶、エネルギー、体液、元素や星素…人間の体を構成している様々な要素の欠損が挙げられているわ。それから、身体と魂の分離も含まれてる」
「………」
「非人道のせいか、あまり情報は出回っていないのだけど…失敗したその末路が悲惨なのは間違いない。まともな魔法使いなら研究をやめているはずよ」
「…存在するのか」
「ええ。魔王の配下に一人、北の大陸に一人。噂では、だけど」
「……おーおー奇遇だなー。これからオレ達が向かう大陸じゃねえか」
「おい、コーンお前まさか、」
「さくっと潰してついでにお宝ももらうぞ」
「やっぱり! リオ、何とか言ってやれよ」
「他の研究データを一緒に売り飛ばすのもいいわね」
「お前もか! くそ、またこれかよ!!」


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