杖の話
「ここの洞窟の魔物強くねー? 帰りたいわ」
「どうする? ここで倒れても、近くの町で保険をかけたから村に送り届けてもらえるワープが自動発動するが…」
「何としても村に戻るのだけは避けたいわ。一度近くの町へ引き返さない?」
「別にいいが…何でそんな頑ななんだ?」
「オレ知ってるわ。じいさんの杖を勝手に拝借したからだろ」
「それ譲り受けたものじゃなかったのか!?」
「……予備が二本あったから、一本ぐらいいいかなって掴んで飛び出したのよ。お説教、長そうだったし…」
「リオも人のこと言えないくらいお転婆だよな」
「うるさいわね…こうなったら魔王を倒すまで村には戻らない。そういう覚悟でいるのよ」
「功績を片手に帰れば過去のことは帳消しにしてもらえるって腹か」
「リオのじいさん相手にそれ通用しなくね?」
「あーもーうるさいわね! 帰らないったら帰らないの!」
「まあ別に俺達もその気はないから引き返すのはいいが…それよりリオ」
「何?」
「そういう経緯なら、その杖を新調して魔法威力を上げるのは無理だよな? 今後どうするつもりだ?」
「……!」
「頭はいいけど詰めが甘いよな。リオって」
「ち…、リオ悪いっ、そっち行った!」
「バカ!! 近接戦で逃がすなんて最低よ!」
「おいっ、リオはあの杖以外武器なんて、」
ゴンッ
「…殺りやがった…」
「ルーク知らねえのかよ、あれ仕込み杖だぜ。柄の下が鞘になってる剣」
「二人とも! よそ見しないで応戦しなさい! 七つ数えたらこっちに来てっ、移動魔法使うわよ!」
「おー! …ルーク、お喋りは後だ。まずはこいつら片付けるぞ」
「お前が取り逃したやつの説教も合わせてやるぞコーン!」
「げ、いらねーこと言っちまった、なっ!」
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