誰が勇者になりえるか

「……もうそんな時期か」
「何突っ立ってんだよ。掲示板の前は邪魔だろ。席に座ろうぜ」
「そうだな」
「あら、ルークも確認してたのね」
「リオ、ジュースは?」
「はいはい。ここにあるわよ。まったく、女の子に飲み物3つも持たせるなんて」
「悪い、ありがとう。…なあ、リオも見たか?」
「ええ。手形の申請受付開始でしょう? 何だか懐かしいわね」
「とは言っても、俺達が取ったのは前回の代だからな。そんな前じゃないだろ」
「二人とも何の話してんだ?」
「旅人手形だよ。お前も取ったろ?」
「あー!あのめちゃめちゃ簡単だったやつかー。今年もやるんだな」
「『この世に生まれながらの勇者はいない。だが魔王は存在する。だから魔王を見事討ち取った者を勇者と呼び、褒美を取らせよう』」
「『そのためには旅に出なければならない。我こそが勇者と思う者よ、名乗りでよ。試験を突破した者のみ、候補者としてその証を与えよう』」
「うわ、まだ覚えてんのか」
「画期的なお触れだったからな」
「私達も早く旅の終わりを……魔王の首を目指さないとね。後輩に負けられないわ」
「焦らなくても大丈夫だ、俺達は」


「でもよ、手形って何の意味があるんだ?」
「……コーン、薬草出してみろ」
「? なんだよいきなり…ほら」
「それ、今どこから出した?」
「何って…どうぐ袋だけど。何か関係あるのか?」
「それ、手形無いともらえないやつだよ」
「まじで!?」
「買いつけることもできないわ。どうぐ袋は王宮以外に売ることを禁止されているし。物売りがこれを破ったら流通から外されるから、流石にやらないでしょう」
「どうぐ袋は旅人手形支給時に一緒に配布されたはずだ。時々忘れがちになるが、それ以外にも色々と恩恵はあって、手形が無いと旅はえげつないくらい困難だぞ」
「し、知らなかった……ってことは、どうぐ袋を持ってない旅人はいないってことか?」
「……いえ、いるわ」
「野良ってやつだな。見かけても近づくなよ。訳アリとか可愛い表現じゃすまないから」
「は? どういうことだよ」
「王宮は意思と素質があれば誰でも勇者を目指せるように、広く門戸を開いているわ。でも、それでも手形を受け取れず旅をしているって言うのは……まあ、そういうことなのよ」
「へえ…よくわかんねえけど、そんなのもいるんだな」


お菓子一つ分くれたら嬉しいです。