#安心社会から信頼社会へ【読書メモ】
約20年前に発行された図書。読み進めるうちにどんどん引き込まれてしまった。拾ったキーワードを記録しておく。
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「信頼は関係を強固にする」
集団主義的、閉鎖的な社会関係の「呪縛」から人々を解き放ち、より自分に適した相手との関係を求めるのを助けるという、一般的信頼が果たす関係拡張の役割
関係を外部に対して閉ざすことで関係内部での協力体制を確立するやり方が、社会・経済的な効率の達成に対する足枷となっていく
集団主義社会は安心を生み出すが信頼を破壊する
信頼の存在意義が社会的不確実性の存在を前提としている
社会的不確実性を避けるためのコミットメント関係をとくに「やくざ型コミットメント関係」
地元客がたくさん入っている店では食べ物の質に関する不確実性が少ない
コミットメント関係の形成は社会的不確実性を低下させるのに大変有効な手段
社会的不確実性が大きいと特定の相手との間でコミットメント関係が形成されやすくなる。
コミットメント関係の形成が生み出す機会費用が取引き費用の節約よりも大きい状況では、コミットメント関係にとどまるよりもとどまらない人のほうが大きな利益が得られる
社会的不確実性が大きいからといって、必ずしも仲間づきあいをしている人のほうが賢いわけではない。
特定の相手とのコミットメント関係を続けていると、それ以外の相手に対する信頼が低下し、コミットメント関係の外部に存在する社会的不確実性の見積もりが大きくなってしまう。
安心の呪縛からの解放
機会費用 ある行動に投資した費用と時間を、別の行動に投資した場合に得られる費用
社会的不確実性大 取引費用大 機会費用小
コミットメント関係形成取引費用節約機会費用大
取引費用節約より機会費用大 コミットメント関係形成しない方がより利益を生む
←仲間付き合い、コミットメント関係解消できず、機会費用増え続ける
特定のコミットメント関係にない人間に関する信頼、一般的信頼
コミットメント関係から離陸する推力を提供するブースター
一人一人の個々の関係から解き放たれ、関係外部に存在する有利な機会を積極的に利用することで、社会全体で機会と人材のマッチングが可能
コミットメント関係に留まり機会費用払い続けることは、社会全体で見ると巨大な無駄
社会的不確実性を取り除くための手段である行動の制約が、あまりにも大きなコストをもたらす。
安心を購入する値段として、自由を放棄するのはあまりにも高額
コミットメント関係形成による不確実性の低減
=お互いの行動の制約を加えることで社会的不確実性を低減する(法律と警察力と同様効果)
信頼の解き放ち論
行動の拘束によって社会的不確実性をなくすやり方は、取引費用の節約以上に機会費用が増大するといえる
日本の集団主義はコミットメント関係形成を通しての安心の提供
日本社会は安心安全社会
=日常生活で人々が直面する不確実性が低い
規制を通しての行動の拘束と、コミットメント関係で生み出されている
社会的ジレンマ実験に罰金+
←日本人参加協力率が急激に上昇する
日本型集団主義は、集団的なかかわりあいが、結局は自分自身の福利をもたらすことを知った上で、組織的活動にコミットする傾向をいう。←集団的行動傾向が生み出す機会費用の問題を重視する点で異なる
終身雇用性というコミットメント関係
社会的不確実性を解消するが、大きな機会費用
←労使の協調
終身雇用性の維持、労働者は機会費用が発生しない
集団主義と普遍主義
結婚が生み出す機会費用の支払いを拒否
人々のあいだに一般的信頼を醸成する
一般的信頼度の高い高信頼者はお人好しなのか
高信頼者はお人好しではない
信じる者はだまされる?
社会的ジレンマとは、人々が自分の利益だけを追求すると、結局はお互いの首を締め合う
他人が信頼に値するか高信頼者は社会的ジレンマ状況で自分勝手な行動をとる傾向は小さい
一般的信頼尺度
高信頼者の方が、低信頼者より、謝礼の決め手が決めた金額で動く
低信頼者は確実な金額を求める
高信頼者がお人好しだとは限らない
教育の程度が高いほど一般的信頼の程度が高い
←社会的に賢い人、依存的ではない
高い社会的知性の持ち主で、周りの人が信頼に値するかどうかをより敏感に、正確に見抜いている
信頼できない情報に敏感
他人が信頼できる人間であるかどうかに気を遣っている。他人の行動を正確に予測する。
高信頼者は比較的短時間の接触を持っただけで相手の行動を正確に予想している
高信頼者は他人と積極的に協力関係を築き上げようとしている人、社会的知性を育成する機会に恵まれる 楽観主義者
低信頼者は最初から協力関係を放棄、悲観主義者
社会的知性が十分に発達していない人はだまされやすく、人が信じられなくなる。
他人の人間性を見抜く能力
社会的知性と社会的適応
手に入れるときと手放すときで主観的価値がかわる
非合理的行動の適応合理性
サンク・コストへのこだわり
負けを取り返そうとする自動化した心の動き
われ思わなくても、勝手に(小さな)われあり
共感能力が育つためには、自分の感情を理解しコントロールできなくてはならない
自分と他人の内面を理解し、その理解を対人関係における自分の行動のコントロールに使うことのできる能力が、社会生活を送っていく上できわめて重要な役割を果たす
他人への協力行動へのただのり
集団内での適応に際しては、誰との関係が安心を提供してくれるか→関係性検知能力→社会的びくびく人間
集団外部の人間と付き合う際には、誰が信頼できるか→人間性検知能力
相手が信頼できる人間かどうかを見抜くという課題を解決するための社会的知性である
社会的びくびく人間
集団内での人間関係を正確に認知している人たちは、仲間から離れて自分ひとりで生きていくことに対する自信をもてない。
社会的知性の多重性
内集団びいきの期待、お返しの期待
←コミットメント関係にない人たちからは邪険に扱われる
他人は仲間以外の人間を搾取しようとするものだ
地図型知性 限られた社会的世界でしか役立たないが、その範囲ではきわめて効果的
社会的地図
関係性検知の正確さと共感性との間のマイナスの関係
他者との認知的共感ではなく、表情などのかたちで外部に漏れ出した相手の内面についての情報を使って対人関係の性質を判断するのが得意
ヘッドライト型知性 どこに行っても使うことができる
日本社会は安心崩壊
社会のしくみはその気にさせる誘因の提供だけで、考え方や行動を無理やり強制しているわけではない
労働力は、投資材料としての人材を確保すること
人材、採用は不確実性が高い、宝くじの購入
←確率が高いカテゴリーを優先する
←利益を生み出す人材に育て上げたとたん退職されたら不良債権化
統計的差別としての男女差、エラーが小さい
差別の文化は社会のしくみにある
終身雇用制のもとでは人材採用に大きな不確実性
一旦無能な人間を雇ってしまえば定年になるまで無駄金
機会費用の増大が、統計的差別の必要性増大
雇用の安定と引き換えに差別の撤廃を手に入れる
漠然とした将来の不安から逃れるために「安心」を追求する
経済、政治等への信頼を失うことに
コミットメント関係を通して取引費用の低下を図る経済や社会の組織原理が、大きな機会費用をうみだすようになり、社会的信頼が崩壊
コミットメント関係からの離脱者の増加→コミットメント関係への固着が生み出す機会費用を急速に大きなものとしていく
やくざ方コミットメント関係の形成による安心の維持が、機会費用の急速な上昇によって「高くつきすぎる」
関係の固定化による社会的不確実性問題解決は現代社会ではほぼ不可能
針千本マシンは、借金の担保、保証
情報の透明性や情報開示は、社会的不確実性問題解決の正道
自分から進んで自分の手の内を明かしたくなれば、社会的不確実性問題は解決される
情報の非対称性によって有利な立場を得ている人たちが、情報開示する途を選ばないときに必要とされるのが、政治活動や経済活動を含むさまざまな社会的活動の透明化であり、社会的不確実性の水準を引き下げる社会的ウソ発見機の役割を果たす
公的活動に関する情報開示と意思決定過程の透明化は、現在の日本社会が必要としている安心を提供するために最も必要とされている社会的装置である。
内部で情報を共有しながら外部に対しては情報を漏らさないというやり方の正反対
街路灯とヘッドライト
公的活動の透明性、情報開示
ヘッドライト型知性が育成されるためには、社会関係の外部に対する閉鎖性が弱く、関係内外間での情報の非対称性が小さな社会環境が必要とされていると同時に、社会関係の解放性と透明性が達成されるために、多くの人がヘッドライト型知性を発達させている必要がある。
機会に満ちた社会的環境を用意する必要がある。
新しいかたちの社会的知性を身につけ、そして透明性の高い社会的環境を作っていく必要がある。
新しい文化の創造のプロセス
日々の些細なことを記録し留めるためにnoteを活用しています。