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本を読む前のセルフ・コンパッション

昨日、『セルフ・コンパッション』という金剛出版発行の本が手元に届いた。読み始めてすぐに私は本を閉じた。

読んでしまう前に、自分の頭の中にある思考を書き出しておく必要があると感じたからである。

この本を取り寄せる経緯は、インターネット上で「コンパッション」という未知なキーワードに引っかかり、調べていくうちにそのキーワードに魅力を感じ深く知りたくなったからであるが、この本のタイトルに、4〜5年前に読んだ『サバイバーと心の回復力 逆境を乗り越えるための七つのリジリアンス』という同じく金剛出版発行の本の記憶に思いを馳せたからだった。


『サバイバーと心の回復力』金剛出版

その『サバイバーと心の回復力』という本では、逆境を乗り越えてきた人たちが、その人生の中でどのような力を発揮してきたかが描かれ、その力について細かく分析的に論じられていた。

話を進める前に、この『サバイバーと心の回復力』という本に出会った頃の私についても少し触れておこうと思う。

まず、私は、心の病を診断され、長く闘病を続けていた当事者だった。

その私は、5〜6年前のある日、インターネット上で「自分史書き起こしボランティアを募集しています」というある高齢者福祉施設のページを見つけ、興味を持った。そのボランティアの活動についての想像を膨らませ、自分にもできるのではないかと考えた。けれど、いきなり他人の人生に踏み込む勇気が、その時の私にはなかった。書くことも、人の話を聞くことも好きだけれど、コミュニケーション障害があるという弱点があった。

そこで、私は考えた。とりあえず、自分自身で試してみようと。
つまり、自分の自分史を書き起こすことに挑戦し、それをやってみてから次の一歩を考えようと判断したわけである。

やってみると自分の自分史は、驚くほどの速さで書き上げることができた。1週間か、10日で書き上げることができた。

そして、書き上げてみて私はさらに驚いた。書く前と比較して、格段に元気に、前向きに、力強くなった自分に気がついたからだった。なんでもできそうな気がした。力が湧いてくるのを感じた。あんなに、引っ込み思案で、コミュ障に苦しんでいた自分が、「何かしたい」「ああ、生きていてよかった」と気づけた瞬間だった。

「この力はなんだろう。自分が回復したこのプロセスはなんだろう」
私は探求しました。そんな中で出会ったのが、『サバイバーと心の回復力』という本でした。

この本を読んで、「そうか、私はリジリアンスを発揮したんだ。心を自己回復させたんだ」と気づいたのです。私はその日から、みるみる元気になっていきました。

そしてこの自己治癒力の発揮を、当事者仲間に伝えたいという希望が生まれました。あるいは、当事者の周囲にいる支援者の方々にも、当事者を支える秘訣はここにある、ということを伝えたいと思ったのです。私が福祉系大学の扉を叩こうと考え始めた経緯はこの辺にあります。

あの日から5〜6年が経ち、昨日手元に届いた『セルフ・コンパッション』という本を少し読んで、私は再び歓喜しました。この本は、『サバイバーと心の回復力』という膨大な本を、さらに進化させた本ではないだろうかと、期待に喜び湧いたわけであります。

「コンパッション」とは、「思いやり」や「いたわり」という意味があるらしく、その「セルフ・コンパッション」とは、「自分を思いやる」「自分をいたわる」という意味だという。その言葉を表面的に捉えると、自分本位な考え方のように誤解してしまいそうである。「自分を甘やかす」という意味に捉えて、自分に厳しい人ほど食わず嫌いに敬遠してしまいそうである。

でも、そうじゃないのです。「セルフ・コンパッション」は、自分の声に素直に耳を澄まし、自分に主導権を持たせ、主体的に考えることを承認し、自分の人生を主体的に判断・選択できる自分を獲得することであると、私は感じたのです。

私は、この『セルフ・コンパッション』という本を開いてすぐに、この自分の中の、現時点での答えを書き出しておこうと考えた。

「セルフ・コンパッション」とは、このように、自分のうちなる考えや声に耳を澄ませ、一つ一つ自分で確認する行為から始まると思うからです。

私が、いまここにしたためている行為は、「セルフ・コンパッション」の一部だと思うのです。

この「セルフ・コンパッション」というテーマは、私がこれから研究し、探究していきたい内容に対しての絶妙なキーワードだと気がついた。

この気づきを、私は、この本を読み終えてしまう前に、一旦本を閉じて、ぜひしたためておきたいと思ったのであります。

「セルフ・コンパッション」の考え方は、当事者が当事者脱皮を図る上できっと役に立つ。そして、対人援助に関わる人にもきっと役に立つだろうと思った。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。
こんなふうに、自らの気づきに耳を澄ませ、一つ一つ書き出していく行為も「セルフ・コンパッション」だと私は思います。

まだやっておられない方がいらっしゃれば、この自分を書き出す行為をぜひやってみてください。

本を読んだあとにも、読書感想したいと思っております。
ずっとあとになると思いますが、よろしくお願いいたします。


『セルフ・コンパッション』金剛出版

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