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奇妙な出来事


息子たちと別府に行った時のことだ


私たちは古い温泉旅館に泊まった。


それは緊急事態宣言の出る1カ月半ほど前のことで


マスクをしている人は多かったけど


福岡行きの飛行機は満席だったし


別府の旅館にも団体客がバスで来ていた。


旅館のエレベーターに初めて乗った時は


ベルボーイが施設の説明を話していたから


特に何も感じなかった。


食事を取るためにエレベーターに乗ったときだ


どこからか話し声が聞こえてきたのだ


1人2人ではなくて大勢の年配の人のような声


何を話してるかは分からないけど


お酒を飲んで大きな声で話す感じで


宴会場から聞こえるのかと思った。


夕食の時だから私たち以外にも


エレベーターに客は乗っていた。


わたしは息子たちに


凄い賑やかな声がするね。宴会場からかなと


話しかけた。


それはエレベーターに乗るたび聞こえてくるし


おじさんやおばさんが方言で話してるようで


楽しいような怒ったような


相変わらず何を言ってるかは不明瞭だけど。


夜の12時ごろに温泉に入りにいく時は


さすがにこんな時間まで何事だろうと思った。


昼間は近くのデパートを見に行ったり、


別府のディープな夜の街を散策したり


1泊だけどエレベーターは沢山利用した。


次の日旅館を出るためにエレベーターに乗ったら


その声は相変わらず聞こえてきた。


昨日夜中もずっと話し声してたんだよと


息子たちに話かけたら


長男に『声なんて1度も聞こえてない』


その一言で今まで聞こえていたはずの声が


ボリュームを絞るように


フェイドアウトしたのだ。


小さなブーンというモーター音だけが残った。


あれはなんだったんだろう。



写真は別府駅前のバンザイおじさんこと
油屋熊八のブロンズ像

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