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Film Camera

フィルムカメラを買った。
レトロなブルーのそれはまるで、おもちゃのよう。

ハーフフレームだから、
切り取れる瞬間の数が2倍。
楽しみも2倍。

好きな人と桜を見たくて計画した旅行に
一緒に連れていった。


iPhoneでパシャパシャ、
一眼でパシャパシャ、
そんな感覚とは全く違う。

この景色を忘れたくない、
この瞬間をいつまでも憶えておきたい、
でも、しっかり撮れているかわからない。
確認することさえ許されない。

このハラハラ・どきどき
スリリングな感じが新鮮だった。


コロナのお陰で、計画より2週間長引いた旅行。
1本目のフィルムはあっという間に使い切り、
2本目でちょうどだった。

日本に帰るころには、
どんな場面を撮ったか、記憶はあやふや。

たまたま見つけた老舗の現像店に
郵送で送り出した。

10日ほどして、データが到着。
胸を高鳴らせながら、見てみる。


うわぁ。
なんだこれは。

すごく、
すごく、
いいじゃないか。

少し前の懐かしい場面と、色と、音と、香り、
そんなものたちが一瞬で、PCの前の私をかっさらい、
あの場所へと連れ戻す。

遠くにいる好きな人を撮っていたことも相まって、
ぽろっと涙が出る。

一番気に入ったのは、
春の陽光あふれる部屋での日常の一コマ。

洗濯機をまわそうとしている
とても平凡でありふれた光景なのに、
なんだかすごく涙が溢れた。

フィルムカメラの魅力にノックダウンな
2023年の春だった。










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