シン・ウルトラマン 観てきたよ

※ネタバレ全開で書くのでご了承ください。

すごくおもしろかった。ウルトラマンは正直あまり詳しくないけど、語りたくなる要素は沢山あった。
ウルトラマンを全く知らない人でも楽しめる映画だと思う。
理屈抜きで言えば、破壊の描写が、なんていうか、本能を刺激する恐ろしさで、ぞくぞくしっぱなしだった。少し後ろめたくなるような、なんか、破壊って快感なんだ、と小さく思ってしまうような、そんなもの壊しちゃだめだよ、あーあ、悲惨、という感覚が常にあった。
快感を伴う暴力描写というのは映画では沢山観ることが出来るわけだけど、そういうのとはまた少し違った怖さ。日本のじめっとしたホラーの怖さ。海外の悪が竹を割ったようなモンスターであるのとは対照的に、怨念による精神的なドロドロを描くような、肝が冷える怖さがあった。

怪獣を、シン・ウルトラマンでは、禍威獣(かいじゅう)と書く。
実に中二っぽいが、意味としては禍津日神(まがつひのかみ)を連想させる。神産みで黄泉から帰った伊邪那岐命が禊を行って黄泉の穢れを祓った時に生まれた神。「禍」(マガ)は「災厄」を意味する。禍+神威(アイヌ語で神格を持つ高位の霊的存在)+獣、みたいなニュアンスでどうだろう。これはネタバレになるが、禍威獣の存在が人が犯した自然破壊によって生じたタタリである、という話が出てくる。ようするに、もののけ姫に登場したタタリ神と言っていい。

なので、シンウルトラマンのシンはやはり、シンゴジラと同様に、神であり、新しいのシンであり、本来という意味の真、ということになるだろう、か。

神話としての、ウルトラマン。
これから少し突拍子の無い話をするが、神話になると、エヴァと同様に、どうしてもアダムとイブの話が関わる。エヴァに登場したアダムが身長40メートルくらいあったのは、かつて地上を支配していた恐竜が巨大であったように、人もまた巨大であり、そのオリジナルであるアダムの身長は約40メートルほどあったらしい、という、そんな話が元ネタとしてある。人間は群れることでみるみる小型化したそうな。動物や虫の世界でもそうだけど、数が多くなるほど、群れるほど、個体のサイズは小さくなる。それに伴って寿命が短くなる。話は変わるが、県内の歴史博物館の催しで「知の大冒険」という古い本の展示があって、そこでアダムの家系図を見てきた。アダムの年齢は5000歳と書かれてあった。文字はまったく読めなかったけど、たぶんそう書いてあった。実際にアダムという存在がいたかどうかは置いておいて、神話に登場する神々というのは、今の人類が想像するよりはるかに巨大であったという認識を下敷きとして持っておくと、この手の話が理解しやすくなる。余談だが、ノアの箱舟のノアも20メートルくらいあった、とか。より現代の話になると、お釈迦様の身長は5メートルくらいだったらしいし、聖徳太子もそれくらいあったと見る説がある。肖像画の聖徳太子の横に立っているのは子どもではなく大人で、聖徳太子はその二倍身長がある。それが本当かどうかは置いておいて、ウルトラマンの身長が40メートルというのは、そういう、いにしえの巨人にまつわる話が少し関わる。
そして、エヴァと同様、いわゆる神と呼ばれる存在は、地球外生命体のことである、という前提で話を捉える必要があって、その神が降り立った場所が日本であった、という話も少し関わってくる。

シンウルトラマンでは、宇宙人が地球に侵攻してくるわけだけど、まさか、あんなに知的に攻めてくるとは、ウルトラマン素人の自分には思いもよらなかった。人間を巨大化させて兵器化する技術があって、人間に技術を提供しつつ支配し、人間を使った兵器ビジネスを宇宙規模で展開していく流れ。まるで進撃の巨人みたいな話。これから人間は宇宙人が戦争をする為の将棋の駒のような形で利用されることに。人類は宇宙人の支配から逃れることが出来るか。はっきり言って絶望的。はるかに高い技術と知性を持つ宇宙人に何一つ対抗できず、言われるがままになっていく。ウルトラマンがいたからどうにかなったけど、全部ウルトラマン任せになってしまうようでは人類に未来はない。ウルトラマンも万能じゃないから負けてしまうし。さて、人類、どうする。

そのとき、光の国からゾフィーという黄金のウルトラマンがやってくる。そして裁定を下した。兵器利用できることがわかってしまった以上、人間はいまのうちに全滅させておくのが得策。宇宙人同士の争いの火種になってしまう前に、消し去ってしまおう。だから、ウルトラマン、もう光の国に帰るよ。そんなことを言う。けど、ウルトラマンはそれを拒んだ。

ゾフィーが自らを裁定者だというシーンは、ナウシカに登場する巨神兵、オーマが自らをそう呼んだことと重なる。

あと、全然関係ないけど、ウルトラマンがチョップして痛がるシーンがあって、あ~これ知ってる、と思った。特撮のウルトラマンで実際にあった事故シーンのオマージュだ。

やっぱり、シンゴジラでもそうだったけど、最後は人間の底力を見せつける。それがメッセージなんだよね。ウルトラマンは謝る。自分のせいで君たちの進化をはやめる結果になった、と。エヴァの碇ゲンドウが「時計の針は元には戻らない。だが、自らの手で進めることは出来る」と語ったのと、理屈は同じ。状況が、人類がそれまで通りであることを許さない、いま、強制的に次の段階に進まなければ人類は消えてしまう。だから、今の段階にはそぐわない、数段先の技術を提供する。これを使って、時間の針を進めてくれ、と。例えるなら、小学生に今すぐ大人になって就職しろ、というような話、と言えば、ニュアンス的に近いだろうか。ちょっと違うけど。保護するはずの自分が頼りなかったせいだ、申し訳ない、というようなニュアンスで、ウルトラマンは謝る。

オチは、とりあえず最悪の事態は回避出来たけど、ウルトラマンは消えたので、これからは全部、自分達でどうにかするんだよ、という終わり。

これがどうしても、これからの人類の行く先と重なってしまう。神不在の世界で、どうすれば自分達だけで上手くやっていけるのだろうか。

最後に、印象的だったセリフ
「昔から人は困ったときは神頼みだ。ウルトラマンという神が現れれば頼りたくもなる」
うろおぼえで申し訳ない。けど、これでウルトラマン=神、が確定したなと思った瞬間だった。

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