幸せいっぱいのリカちゃんは

借り上げ社宅として住んでいる湾岸地域のタワーマンションの10階にユリちゃんは暮らしている。
会社案内のパンフレットに若手のホープとして掲載される夫と、ふたりのこども。
ユリちゃんはいつも幸せだ。
身支度を整え、朝はコーヒーを淹れ、朝食をつくり、こどもたちの服を着せ、幼稚園バスに乗せて、夫は出勤する。
毎朝行ってらっしゃいのキスをこどもたち、夫にする。

夫にこれからももっともっと好きになってもらう努力をする。

ユリちゃんは幸せだ。

こどもたちと夫が出かけたあとは、大きなダイアモンドの結婚指輪を見つめながら、床を磨き、花を生け、シンクを磨く。

こどもたちが帰るまでに、アートフラワーの教室やテニス教室へ出かける。

その時間は、ユリちゃんはひとりだけど、ひとりじゃない。
夫に選んでもらった服を着て、
夫に選んでもらった靴を履き、
夫が可愛いと言った髪型に整え、
夫が見て可愛いと感じるメイク道具を使い、
夫が触れて気持ちいいと思う肌のコンディションを整え、
夫と並んで歩いて、1つの絵になるような、そんな私でいたいと思う。

ユリはダサいから、俺が服と靴を選ぶんだ。
夫はそう言う。

誰から見ても美しいユリちゃんは、
今日も夫のために口紅を買う。



わたしは、神経難病と言われる、 若年性パーキンソン病にかかっています。 普段の生活を書いています。 みんなに障害について、難病について知ってほしいです。