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【19才のシルバーリング】第7話 〜予期せぬ過ち編~


年末年始も、お互い祖父母宅に行きつつも

帰って来たらまた会ったり、

携帯を持ったから、

会えない間はずっと電話したりメールしたりしていた。

あんなに毎日毎日会っていても

一時も離れたくないくらい翔でいっぱいだった。

冬休みも終わり、またいつもの生活に戻った。

相変わらず幸せな生活を送っていた。

『チャリ、駅に置いてある!』

そう言った翔に

一刻も早く翔の家でラブラブしたかった私は

『今日、チャリだと時間かかるしめんどくさくない?』

とけしかけてしまった。

『原チャ(原付)にするの?また取り来なきゃだしチャリで行かね?』

と、この日に限って珍しく翔はごねた。

寒かったし、早いし楽だし、

結局私のワガママで

原付で帰ることにした。

私の愛車VINO(原付)で

2人乗りで帰るラクなコトを覚えた私たちは

たびたび“原付き2ケツ”で帰るようになった。

こんな出来事もあった。

ーーーーーーーーーーーーーー

翔の友達から

『文化祭の打ち上げで翔が吐きそうになってるから
 じゅりさん迎えに来て下さい!』

と電話かかってきた日なんて、

原付をすっ飛ばして何時だろうが迎えに行った。

私、人が吐いてるともらいゲロしそうでダメなんだけど、

翔の場合はそれが大丈夫だった。

というか、

親が子供に対する無償の愛に近いものがあったんだと思う。

寒いから、持っていった上着を羽織らせて

ずっと背中をさすってたり、

吐きたいというから、私の指を突っ込んで吐かせたりしていた。

原チャで家まで送ることにして、

それでも後ろにいる翔のことが心配で、

『翔、私にしっかりつかまってるんだよ!落ちないでよ?絶対離さないでね!』

と言えば、

『もうぜってぇ~離さねぇから~!じゅり~!愛してる~!!!』

なんて超デカイ声で叫んでるし(笑)

元気あるじゃん(笑)

ギュッてされすぎて

『苦しいってば~!そんなに強く掴まんなくても大丈夫だよ!ゆっくり行くから!私も愛してるから、夜だから静かにしててね、すぐ着くからね!』

まったくもう!なんて思いつつも、

そんな翔のことも、

ものすごくかわいく愛しく想えた。

そんな状況でさえも幸せだった。

なんとか家まで送ったけど、

この人のために、何でも出来ると思った。

ーーーーーーーーーーーーーー

その日に限って翔はなぜか渋ってたのに

私が早く帰りたいが為に促してしまったの。

『めんどくさいから翔が運転して!』

免許なんてなくても、

誰でもハンドルひねれば簡単に動く原付。

注)原動機付自転車の2人乗りは法律で禁止されています。

イケナイコトってわかっていたようで

悪いコトをしている感覚がなく、

あたりまえのように原付の2人乗りをした。

いつもの裏道を通って翔の家に行く途中、

見にくい十字路があって

一旦停まって確認しないと車が来てるか見えない道路がある。

いつも通り、右みて左みて、をするはずが

右みて…をしたら思いっきりパトカーが停まっていた。

『はい、そこの原付停まりなさい!』

パトカーに乗っていた3人の警官が全員降りてきた。

完全にブレーキをして停止していた私たちは、

逃げることなんて出来るはずもなく、

拡声器の声を聞く前に抵抗もせずに捕まった。

翔とは別々に事情聴取を受けて、

私の愛車はお巡りさんが乗って、

私たちはパトカーの後部座席に乗せられて管轄の警察署に連れていかれた。

パトカーなんてもちろん初めて乗ったけど、

赤灯をまわされて・・・

その中から見る景色は、たまらないものがあった。

外の世界がものすごくうらやましく見えた。

ものすごく外に出して欲しかったし、泣きたかった。

信号待ちで、ドアを開けて(開かないけどね)

今にも飛び出したいくらいだった。

情けなかった、恥ずかしかった、

そんな姿、誰にも見られたくなかった。

【バチが当たったんだ…】

『君達、付き合ってるの?』

警察官の1人が尋ねた。

『はい。』

こんな時でもピッタリ声が揃うほど仲が良かった。

警察署に着いて、指紋をとられて、写真も撮られて

持ち物検査をされた。

ふたりで取調室で待っている間、

私は落ち着かず『どうしよう、殺される。』ばかり言っていた。

それは、警察官に、ではなくて
私の父親に対する言葉だった。

私の父は本当に厳格な人だったから、

我が子が警察沙汰を起こしたなんて知ったら

ボコボコにされるじゃ済まされないと思った。

その時の頭の中には反省よりも何より、そのことしかなかった。

警察にも助けを求めたいほど恐ろしかった。

生きた心地がしない中、

翔はずっと不安がる私を落ち着かせてくれていた。

自分だって不安だったろうに。。。

『どうしよう…まじヤバイよ。』

『大丈夫だから、落ち着こう。』

保護者到着にどれくらいの時間が経っていたのだろう。。。

形相を変えた父親にぶん殴られたと思う。

恐怖心でいっぱいで記憶が定かじゃない。

母は呆れていた。

まだ幼かった弟も一緒に連れて来られて、

初めて入る警察署と怒り狂った父親におびえて
母にしがみついていた。

泣いていたかもしれない。

パパ『おまえはなにやってんだ!バカヤロウ!!!謝れ!!!』

みんなの前で頭を持たれてみんなに向かって頭を下げられてた。

翔のご両親、自分の家族、警察、みんなに泣きながら謝った。

両親は翔のご両親に深々と頭を下げ、ずっと謝ってた。

やっと自分のした軽率な行動が

どれだけ大変なものだったのかわかった。

後から聞いた話だと、

パパは翔をぶん殴ろうとしたけど、

警察署内だし、親の前だし、我慢したんだって。

ママは情けない、恥ずかしいって泣いていた。

難病に侵されていたママを苦しめるのが

一番つらくて、見ていられなかった。

『あんないい子を事故に遭わせてどうにかしちゃってたら、あんたどうやって責任取るの!?あんたのが年上なのに、何バカなことやってんの!!!』

ママは、翔じゃなく私を責めた。

パパは『いいか!?もう2度と会うんじゃねーぞ!!!』

パパは私にもブチ切れてたけど、翔を責めた。

後からママに、警察の人にものすごく褒められたって聞いた。

『普通、逃げようとしたり抵抗するけど、
   お宅のお子さん達は、そんな事もせずしっかり反省して謝罪も出来ていましたし、
   やったことはいけないことですが、その態度が素晴らしいから感動しました。
   きっと親御さんのしつけがいいんでしょうね』

と言われたらしい。

けど、そんなのちっとも嬉しくなかった。

ママも

『そんな立派なお子さんだったら、こんな不祥事起こさないよ!』

と言っていた。

おっしゃる通りです。。。

私たちは、それぞれ家庭裁判所に行くことが決定した。

翔は【無免許運転】

私は【無免許運転幇助】って言って、

無免許運転を助けたって罪に罰せられた。

今まで1度も捕まった経験なんてなかった私は、

ゴールドの免許証だったけれど

【一発免停、90日】という刑罰が下った。

そんな重い(悪い)ことだなんて思っていなくて、

簡単に考え過ぎてた。

後から聞いた話だけど、

それは翔からは1度も聞かなかったけど、

別々に取調べされてる時に

『どっちが2人乗りしようって言い出した?』って質問に

T『俺です。俺が興味本位で乗りたいってお願いして無理矢理運転したんです、
  だから彼女は悪くないんです!』

って言ってくれたんだって。

私は翔が本当にすごいって思った。

私の『めんどくさいから運転してよ!』

の一言でこんなコトになったのに、

責めるどころか、私をかばってくれたんだから。

私だったら、あんな恐ろしい状況の中で

とてもじゃないけどそんなこと出来なかったと思う。

自分のことでいっぱいいっぱいだった。

それから

初めて門限というものを作られ、

学校の授業の予定を把握され、

家の手伝いだらけになって、

自由に遊びに行くことが許されなくなった。

翔の親は『会うな』とは言わなかったけど、

『毎日じゃなくて、もう少し会う日を減らしたら?』って言っていたみたい。

うちはパパが一方的に『別れろ』って言ってたから

会うことなんて許されなかった。

せっかく、やっとパパが翔に対して心を開いてくれてたのに。。。

自分の取った軽率な行動のせいで、それも壊してしまった…。

反省と一緒に自分を責めた。

親にも弟たちにも、相手のご家族にも、

恥ずかしい想いをさせて、

迷惑も心配もかけて、

言葉じゃ言い表せないくらい申し訳なかった。

でも、いくら『会うな』って言われたって

『別れろ』って言われたって

ふたりの気持ちが変わることはなかった。

それだけはどうにも出来なかった。

いっそのこと、カケオチでもしてしまいたい気分だった。

落ち込んでいる私に翔は

『今は無理でも俺らが一生懸命やってれば
  きっとわかってもらえる日が来るから、負けないで頑張ろう!!!』

って励ましてくれた。

今までのようには会えないけど、5分でも10分でも毎日隠れて会った。

『こんなことがあったって、誰に何言われたって、
  俺の気持ちは変わらない!一緒に乗り越えよう!』

翔のその言葉だけで、もうなんでも乗り越えて行ける気がした。

『私も同じ気持ちだよ!一緒に頑張る!』

どんな障害だって、翔と一緒に乗り越えてやるって決めたんだ。



#創作大賞2024 #恋愛小説部門

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