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【19才のシルバーリング】第9話 ~悲しみの中の太陽編~


どれくらい泣いたかわからない。。。

1年の半分以上は翔を想って泣いただろう。

しばらくは狂ってたと思う。

翔が居なくても、翔のお母さんに言って勝手に部屋で待っていたり
(お互いのお家でご飯をいただいたりするくらいの仲でした)

いろんな友達について来てもらったり

翔の友達にいろいろ翔の情報を聞いたり

半分ストーカーみたいになってた。

翔にたびたび電話しては

『お願いだから戻ってきて』

と泣いて困らせたりもした。

いろんな人を紹介されても興味なんて湧かなかった。

けれど、昔の私は

“彼氏”という存在がいないとダメだったから

誰かそばにいて欲しかった。

誰でもいいわけじゃない。

もちろん好きな気持ちがなきゃ付き合えなかったけど

翔ほど好きになれる人に巡り逢えたのはそれからだいぶ後のことだった。

告白されるたびに、翔のことをちゃんと話した。

『私には引きずってる元彼がいるから・・・』って。

でも若いからなのかな?

それでもいいからって、

『オレが忘れさせてやる』

みんなそう言ってくれた。

この人なら翔のこと忘れられるのかな…

って思って付き合ってみるものの、

比べちゃいけないってわかっていても

翔が忘れられなくて、いちいち翔が蘇ってきちゃって

全部を翔と重ね合わせちゃって

結局『ムリ・・・』ってなってしまう。

何人の人を傷つけてきたんだろう。。。

本当にごめんなさいって反省した。

だけど、翔じゃなきゃダメなんだもん。

翔は私とまったく違って、

私と別れて1年間、彼女を作らなかった。

相変わらずすごくモテていたらしいけど、彼女を作らなかった。

『今はもう、女はいいや・・・』

そう言っていたと人づてに聞いた。

それだけ、私が深い傷を作ってしまったってこと。

そんなある日、

『翔が事故った』って翔の友達から聞いた。

心配でたまらなくって翔に電話した。

私ってば、あわて過ぎて、
どんな様子なのかも聞かずに友達との電話を切っちゃったから。

『もしもーし!』

出た・・・生きてた・・・

『生きててくれて良かった・・・』

『誰かから聞いたの?そー、事故っちゃったよ!
   僕は死にましぇんよ(笑)でもマジ死んでもおかしくない事故だったんだぜー、焦った(笑)』

久しぶりに話した翔は明るくていつもの元気な翔だった。

『バカなこと言わないでよ!本気で心配したんだから!!!』

翔の声を聴いたら安心して泣いてしまった。

『そんな、泣くなよ~!ありがと・・・^^』

『身体は大丈夫なの!?』

『今動けないんだよねー』

『そうなの!?なんかして欲しいことある?お見舞い行くよ!』

封印してた想いが一気に溢れ出してしまった。

翔に逢いたい・・・

『そんなダイジョウブだって、ミンナ来てくれたりしてるけど・・・』

『じゃあ私も行く!!!』

『わかった、ありがとね!』

『安静にしてるんだよ!』

翔は落ち着きがないから、安静にできないことくらいわかってた(笑)

お見舞いに行ったら、庭に大きいアメリカンのバイクが停まっていた。

中に入ったら、知ってるみんないたけど

一人だけ女の子がいた。

獅子座流星群の時、翔にフラれた子だった。

よりによって、私が落ちた高校の制服着てるし…

でも、その子はずっと友達でいられてたからちょっとだけうらやましかった。

私はなんとなくみんなと同じ部屋にいるのが気まずくて

一人、翔の部屋にいた。

あの頃のまんま・・・

大好きな翔の匂いがする・・・

よくここで過ごしたっけな。

変わっていたのは、壁に貼ってあった私と撮った写真やプリクラがもう視界に入らなかったことだけ。

すごく切なかった。

ふと、壁に貼ってあった1枚の写真に目が留まった。

これ、女??男??

さっきのアメリカンのバイクに乗って写ってる写真だった。

翔が来て、みんなをおいて二人っきりで部屋でしゃべってたけど

もう昔みたく彼氏と彼女じゃないから空気までもが違っていたのを感じた。

『これ誰???』

私は壁の写真を指差した。

『あ~、同じ学校の友達!外に置いてあるバイクこいつのなんだ!』

のちに、翔と付き合った子。

私と1年以上経ってやっと出来た彼女がその子だった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

それが、のちにテレビに出て有名になった子だった。

その子の話は翔からいろいろ聞いてたから、

テレビに出るずっと前から知ってた。

地元じゃけっこう有名な子だったから、

出る前からウワサがすごかった。

いつかSNSで発見して、メッセージしてみたら

ちゃんと『じゅりちゃんってあのじゅりちゃん!?覚えてるよ!なつかし~!』

って覚えてくれていた。

私たちは直接面識はなかったけど、

きっと翔がその子にも私の話もしていたんだろう。

その子が出した本に翔も出てくるの。

ものすごく好きだったんだって。

翔がバスケ部だったから、自分もバスケ部に入ったんだって。

彼女がいるの知ってたけど、ずっと好きだったんだって。

その彼女っていうのは私。

読んでいて切なくなった。

私と同じように、その子にも翔との想い出がいっぱいあるんだ。。。

私の知らない翔がそこに確かに存在するんだって。。。

でも、その子の本の中の翔はやっぱり翔らしかったから

思わず本屋で立ち読みして笑っちゃった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

翔と久々に会っちゃったら、翔への想いが蘇ってしまった。

ずっとずっと好きだったよ。

誰よりも好きだったよ。

翔は赤点をよく取る子だったから

『じゅり、勉強教えてくんねぇ~?』って

私が勉強を教えたりもした。

0点に限りなく近かった数学も、

じゅり先生のレッスンを受けると100点に近い点数を取ってきた!

『じゅりの教え方すげ~わかりやすい!』

たま~に

『じゃあ保健体育の実技しましょうか、先生♪』

なんて冗談を言ったりしてたけど

お互い、体の関係は持たなかったよ。

私は勉強を人に教えられるほど優秀ではないけど

翔と会える手段がそれしかないなら、必死だった。

翔のために何かが出来ることが、幸せだったし

たとえ数時間でも一緒に居られることが

なによりの幸せだった。

翔が高校を卒業する間際に、1度だけ会った。

私の病気の検査についてきてくれた。

好きなキモチを押さえて会った。

なんともないフリをした。

たぶん私のことじゃ隠せてないと思うけど(笑)

すごく仲良くて、

付き合ってる頃のようだった。

彼氏彼女じゃないことが不思議なくらい

昔みたいに一緒に仲良くはしゃいだ。

久々に心からの笑顔になれたと思う。

『俺、卒業したら一人暮らしする』

『え、遠くに行っちゃうの?』

動揺してしまった。

『じゅりちゃん、サミシイの~??』

『そんなワケないじゃんっ!全然ヘーキ!』

私ってわかりやすいんだろうな(笑)

『うそだぁ!サミシイくせにぃ~(笑)』

そんなこと言われてたら強がれなくなっちゃったじゃん。

しばらく言葉に詰まったけど、

言わなきゃ翔がどこか遠くへ行っちゃう気がして

『・・・さみしいよ』

って素直に言ったら

『だ~いじょぶだってぇ!死ぬわけじゃねぇんだから!ほら、そこなんて近い、近い!すぐ帰って来れるし!』

って言ってくれた。

それは何なの??

また、私に会いに来てくれるってこと??

期待しちゃってもイイんですか?

検査の結果が出た。

翔は待ち合い室で待って今てくれた。

結果が陰性で、2人ですごく大喜びした。

まるで自分のことのように

『まじ良かった~、ホントに良かったよ~!』

と翔は安心してくれた。

そして翔の方から、ギュッて抱きしめてくれた。

泣きそうだったよ。

何分かな?ず〜っとギュッてしたまんまだったから、

恥ずかしくなっちゃって、自分から離れちゃった。

私のバカーーーーーーー!!!

死ぬほど嬉しかったのに。

翔はわざとじゃなくて、

本気の喜びだったんだけどね。

そんなことされたらほんとにほんとに期待しちゃうよ?

翔は無事高校を卒業して、少し遠くの学校に進学していった。

私に何度も話してくれた

夢を叶えるために。。。

同じ県内なのに、

やけに遠くに行っちゃったような気がした。

ひとりぼっちになっちゃったような気分だった。

翔の太陽のような笑顔がまた見たくて、

翔をいつでも見られるように

翔の写真をいつも大事に持ち歩いた。



#創作大賞2024 #恋愛小説部門

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