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【19才のシルバーリング】第3話 〜あゝバラ色の人生編~


こうして、雲の上の存在だった彼が

私の彼氏になった。

夢を見ているんじゃないかとさえ思った。

だって、なんでこんなカッコイイ人が私の彼氏なの?

って不思議だったんだもん。

私は決して綺麗な女性じゃない。

だから不安でたまらなかったけど、

『じゅりのスッピンかわいい♪化粧はあんまりしないで!』

って言ってくれた翔の言葉に救われた。

アコガレの翔が私のことを『かわいい♪』って言ってくれていたから

それだけでもう充分なっくらい幸せだった。

待ち合わせしてても、彼が来ると心の底からうれしくって

《私の彼氏なんだよ♪》

と、叫びたい気持ちでいっぱいだった。

しばらく現実なのかずっと信じられなくて

夢だったらどうしようって思ってたくらい。

だから、ずっとエッチ出来なかった。

もちろんやり方がわからなかったわけじゃない。

エッチしたくなかったわけでもない。

むしろ、ひとつになりたかったし…

でも

ヤリ捨てされたらどうしよう…

それで満足して終わったらどうしよう…

そう思ったら、不安で不安でずっと出来なかった。

彼は、そんな私に

『心が開けるまで待ってるね!』

と言ってくれた。

言葉通りに彼はずっと私を待っていてくれた。

一緒に寝てて、『ヤバイ!』って言いながらも

私を大事にしてくれようと毎日我慢してくれてる彼がすごく愛しかったし

だんだん信じられるようになっていった。

何ヶ月か経って、やっとひとつになれた時は

涙が溢れてくるほど感動したし、

あの時ほど幸せなセックスってあったかな。

快楽を求めるセックスじゃなくて、愛し合って愛を感じるセックス。

そんな幸せなセックスを初めて知った。

初めてひとつになったら、

捨てられるどころか

今まで以上に大事にしてくれるようになった。

毎日一緒だった。

休みの日はもちろんずっと一緒。

学校終わると毎日会ってたし

お互い学生だったから、バイトをしてたけど

どちらかがバイトの日には、どちらかがバイト先まで行って顔を出してた。

“飽きる”なんて文字は2人の中にまったく存在しないほど楽しかった。

学校を2人でさぼって

一緒にお弁当を食べたり。

高校生だった彼に合わせて、なんちゃって女子高生で制服デートしたり

バスケをやってた彼に、試合の日お弁当を作ったり。

当時料理がまったくと言っていいほど出来なかった私の作ったお弁当は

あとで味見したら本気で吐きそうなくらいまずかったけど

『うーん、食えないもんじゃねぇじゃん!』って残さず食べてくれたのが

本当にジーンときた。

そんなもの食べさせちゃったのも申し訳なかったけど

『じゅりが俺のために一生懸命作ってくれたから』って言って本気で喜んでくれて

ムリしてでも食べてくれた彼の気持ちがうれしかった。

翔は全然人見知りしないから、

私の友達、バイト先の人、私の母や弟たち、男友達まで

みんなとすぐに仲良くなった。

翔のことを悪く言う人なんて誰もいなかった。

私のまわりもみんな翔のことを好きになってくれた。

彼は底抜けに明るくて

思いやりもすごくあるし

老若男女誰からも好かれる人で

かっこいいのにカッコつけないで、

お笑い系だし

子供みたいに無邪気にはしゃぐし、

一緒にバカやってくれるし

いっつも笑顔が耐えない人で

そんな翔のことを

知れば知るほど、どんどん好きになっていった。

いつしか彼が私の中の理想像になっていた。

価値観も

考え方も

話し方も

顔も

形も

姿も

格好も

性格も

声も

彼のすべてが大好きだった。

彼のすべてが私の理想そのものだった。

それだけ好きだったけど、素の自分でいられたし

お互い素をさらけ出し合っても大好きでいられたから

本当に最高な恋愛したんだと思う。

もちろん人間だから彼の嫌なとこはあったけれど、

それもひっくるめて全部好きだったし

引くところは一つもなかった。

いつか、自転車の2人乗りしてる時に聞いてみた。

『私の引くところってある??』

『ないよ!じゅりはあるの??』

彼はあたりまえに笑いながらそう言った。

『まったくない!じゃあさ~、私が何したら引く??』

そう尋ねる私に

『う~ん・・・思いつかない、何しても引かないんじゃない?』

と首をひねりながら答えてくれた。

『えー、う●ち漏らしても??正直に言ってよ!』

何したらNGなんだろう?と知りたかった。

『あ!わかった!!』

『なに~?言って言って!』

ドキドキしながら何を言われるんだろうと答えを待っていた。

『今いきなり『降ろして~!』って言って『あ゙ぁぁぁ』って土手の方までダッシュしてう●こして、それが巻きグソだったら引く!そんくらいだな!』

と笑いながら言った。

『まじで!?ヤバイかもね(笑)覚えとくよ~!』

私も一緒に笑った。

絶対ありえないようなことを言ってくれて、
それが“何しても引かない”を意味していて
本当にうれしかったの。

そんな彼がひとつだけ

よく私に申し訳ないって言ってたことがあった。

いつもみたいに自転車の2人乗りしてる最中にケンカになった。

『俺は高校生だからさ、じゅりをチャリのケツにしか乗せてやれなくて情けねーよ。普通なら、じゅりの歳だとみんな車の助手席とかに乗ってんだろうけど、それが出来なくて申し訳ない。』

そんな風に思わせてしまっていたなんて驚いた。

『私そんなこと望んでないよ!車の助手席なんかより、翔のチャリの後ろが一番の特等席だよ!』

翔は私にみじめな想いをさせてるんじゃないかってすごく気にしてたけど、
私は本気でそう言ったように思っていたし、翔となら自転車でもリアカーでもなんでも良かった。

というか、車よりも

触れ合えて一体感もある自転車2人乗りの方が

今思っても、何倍も何十倍も幸せだったかもしれない。

私は学校が終わると

電車から途中下車して

翔の待つ駅まで急いで帰った。

翔は毎日駅まで自転車で迎えに来てくれた。

翔の家から駅までも30分かかる。

駅から私を送るのも1時間以上かかる。

それを自分から毎日してくれていた。

『じゅりに少しでも早く会いたかったから…』

『じゅりと少しでも長く一緒に居たかったから…』

そう言ってくれた。

駅で待ってると改札の目の前まで自転車をこいで来るような人だったから

注目もされまくったけど

『ヘイ、お待ち~!彼女、乗ってくぅ~??』

って言ってくるのが

みんなに見られて恥ずかしい、よりもうれしかった。

だいぶバカップルだけど(笑)

《私のカレシなんだよ!!!》って

世界中のミンナに教えたかった。

そんな最愛の彼もまた

同じように私のことを愛してくれて

まさにバラ色の毎日をおくっていたんだ。



#創作大賞2024 #恋愛小説部門

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