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【19才のシルバーリング】第10話 ~心の恋人ピリオド編~


翔が進学した後、帰省してた時に

1度だけ2人で遊んだことがあった。

ドライブに連れてってくれることになったからだ。

翔の助手席に乗るのがずっと夢だったけど、

バイクを買ったから車を持ってなかったから

車じゃなくてバイクの後ろに乗せてもらった。

バイクの2ケツって言っても今度は二人乗りしていいやつだから!

翔はアメリカンが好きだったから、

アメリカンの大きなバイク。

バイクのメットで5回ぶつける

【アイシテルのサイン】も

こっそりやったから(笑)

by.未来予想図Ⅱ

どさくさに紛れて必要以上にギュッてした。

別れてなければ、こんなデートがいつも出来たのに…

って悲しくなったけど、悲しんでる場合じゃない!

一緒にいられる限られた時間を大事にしよう!

別れた後に1度だけ、翔に本気で

ものすごく怒られたことがあった。

当時の私は

付き合ってもすぐ別れて、

別れて1ヶ月も経たないうちにまた新しい彼氏が出来て…を繰り返していた。

それは、翔を引きずってたからなんだけど。。。

『男に頼って生きるのやめろよ!つらくても逃げないで自分の足で歩いてみろよ!』

って。

その通りだったけど、

なんせ今以上に素直じゃなかった私は

『そんなの、私の勝手でしょ!?私が誰といようが翔にはもう関係ないじゃん!ほっといてよ!』

なんてことを言ってしまった。

ホントかわいくないよね。。。

『じゅりのためを想って言ってんのに、そんなんならもう勝手にしろよ!』

『戻って来る気もない人にそんなこと言われたくない!勝手にするからもう帰ってよ!』

翔は呆れて去って行ったけど、

私の性格をわかっているから

しばらくしたら戻って来てくれた。

私はうずくまって泣いたまま

その場から離れないから

『もー!いつまでそんなとこにいるんだよ!』

『帰ったんじゃないの?もうほっといてよ!』

またまたどうしてこうなっちゃうんだろ、私。

本当は泣くほど嬉しかったくせに。

『・・・言い過ぎたよ、謝るから。。。ごめん』
でもホントにこれからのじゅりのためなんだから』

と精一杯寄り添ってくれた。

『ありがとう、ホントはそんなに私の事真剣に考えて言ってくれて嬉しかったよ。素直じゃなくてゴメンね』

それから、サミシイからって誰かと付き合ったりするのはやめた。

声を聴きたくなると翔に電話した。

たとえ彼女がいるのを知っても、

好きな気持ちを無くすことなんて出来なかった。

翔は私からの電話を無視することはなかったし、

出られなくてもかけ直してくれたから。

なかなか翔離れなんて出来なかった。

恋だってした。

やっと翔を忘れられる、何度そう思っても

なかなか忘れることなんて出来なかった。

翔は私の心に住みついていた。

だいぶ月日が流れたある日、

私は私の命の恩人に出逢った。

精神的にボロボロになっていた私を

愛というもので救ってくれた。

私は、やっと

【この人についていこう】って思える人に巡り逢えたんだ。

翔とはタイプが掛け離れてるくらいまったく違うし、

ケンカっ早くて、

彼女いない時はありえないほど遊び人だったし、

悪いこともいっぱいしてきていたし、

私の1番キライな男のタイプだったから

付き合うなんて絶対ありえないことだったはずなのにね。

彼には私の生きてきた経歴も、

1から10くらいまで全部話した。

もちろん、過去の恋愛も。。。

『俺は、今までの男と違って甘やかさねーから!』

そんな風に言ってた通り、

今までみたいなワガママが通らない相手だったし

かなりスパルタだったけど、

私のワガママさえも『かわいい』って全部受けとめてくれてた。

毎日毎日、寝ても覚めても

『かわいい』とか『愛してる』って言ってくれた。

彼は束縛はひどかったけど、

私のことをものすごく愛してくれた。

私への愛情は異常なくらい一筋ですごかった。

彼は目の届くところに私が居なきゃダメな人だったし

でも人からそこまで必要とされて、

愛されて、

私も嬉しかったんだ。

私も彼一筋で

そんな彼に惹かれて、彼色に染まっていった。

彼の一番の趣味である大好きなサーフィンについてったり

『じゅりと一緒に海入りたい!』って言う彼の要望通り

ボディボの道具を一式揃えて

海に入るのキライな私が、

一緒に海デートもするくらいまでだった。

彼とも毎日のように一緒にいたら、

半同棲してた。

彼が実家に戻ってからも彼の実家に週末や長い休みはずっと住んでいた。

お互いの家族、親戚にも挨拶したり、結婚する話もしていた。

そんなある日、起きたら彼が溜め息をついてた。

『翔って誰??』

『え?何??なんで?なんで?』

『モトカレの名前だろ?』

『なんでそんなの知ってるの?』

私言ったことないのに。

『じゅりのことならなんでもわかるよ!』

え!?なんで?

確かに、私たちの間に隠し事なんてなかったから

不透明なことなんてなかったはず。

だけど、名前まで教えたことはない。

『じゅりさー、すげぇ幸せそうな顔しながら
 楽しそうに『翔♪』って寝言言ってたよ・・・』

重症だと思った。

怖くなった。

だって私、もうその時には

翔のことを忘れられてると思ってたから。

思い出して切なくなったりしなかったのに。

彼でいっぱいだったはずなのに。

そのはずだったのに…

寝言なんて言わない自分が

翔の名前をハッキリと呼んでいた。

『え、ほら、女の子の祥子と遊んでた夢見てたんじゃない?』

似たような呼び方の親友がいた。

苦し紛れの言い訳に近いものがあった。

彼を安心させたかった。

2人の仲を壊したくなかった。

『あれは男を呼んでる顔だよ。
 じゅりまだそいつのこと忘れてねーんじゃねーの??』

『そんなわけないじゃん!だってうちら結婚するんだよ?
  私が今愛してるのは雅斗だし、それに寝言だからしょうがないじゃん!』

逆ギレだったかもしれない。

『いーよ、もう。まじやるせねぇよ。。。』

いつもならそんなことがあったら

ヤキモチ妬きな彼はブチ切れてくるのに、

無意識に言った私が悪いわけじゃないのもわかってるから

責めたくても責められなくて

何かにあたりたくてもあたれなくて

無意識に言ったからこそ余計につらいっていう

彼の表情がそこにあった。

《このままじゃ、私の中で一生翔が生き続けちゃう》

隠し事がなかった2人の間に、

初めて隠し事を作ってしまった。

私だって悩んだよ。

でも、そうするしか方法が見つからなかった。

時間がなかった。

翔が日本を発つ前に・・・

出発しちゃったら、もう二度と会えないかもしれない。

その日、早めに彼の家を出て

数年ぶりに翔に電話をした。

『今から行っていい?』

もう何年も会ってなかったし、

連絡もとってなかった私の突然の発言に

『モトカノとか、俺会わないって決めて会ってねーから、ごめん。』

と言った。

『急用なの。今日しかないの!一生のお願いだから!
   もう2度と会わなくてもいいから。』

1時間以上説得したと思う。

翔はそれくらい硬い男だった。

『どうしても翔に聞いてほしい深刻な相談があるの』

と仕方なく

初めて翔にウソをついた。

ウソでもないけど、

そうまでしても会わなきゃいけない理由があった。

翔を引きずることよりも

今の、これからの幸せを守りたくて、

必死だった。

【今度こそ、この5年間にピリオドを打たなきゃ】

車を飛ばして翔の家に向かった。

久々の翔の家の前。

そして、何年ぶりかの翔。

相変わらずカッコ良かったよ。

『久しぶり、元気だった??』

私は少し申し訳なさそうに翔の顔を覗いた。

『久しぶり、元気だよ!じゅりも元気そうじゃん!』

翔の笑顔があってホッとした。

しばらくどうしてたのかこの数年のことをお互い話した。

『相談ってなに??』

翔から本題を切り出した。

『・・・実はね、相談じゃないんだ。どうしても翔に会いたくて・・・』

まで言うと、

『は?どういうこと!?騙したのかよ!!』

俺はそんなつもりで会ったわけじゃない、

相談したいっていうから迷ったけど会ったのにと

すごく怒ってしまった。

そうじゃないのに!

帰ろうとした翔を必死に引き留めて、

まずウソをついたことを必死に謝って話を聞いてもらった。

『・・・実は私ね・・・結婚するんだ。。。』

翔の口調が変わった。

『・・・まじで!?良かったじゃん!おめでとう!』

『・・・うん』

少しだけ、彼氏の話、彼氏とのことを話した。

『・・・じゅりさ、その人と結婚してホントに幸せなの?』

翔は感じたことをそのまま言う人。

『・・・うん、幸せだよ。なんでそんなこと聞くの?』

『俺には、じゅりが幸せそうに思えないから。』

正直驚いた。

自分でもその時はそんなこと思ってなかった。

いや、思いたくなかった…と言った方が正しいのかもしれない。

『そんな悲しそうに結婚の話してるじゅりが、
  俺は幸せだとは思えない。』

私はわけがわからなくなって、

翔と別れた後の4年間分の想いを全部正直にぶつけた。

ずっとずっと引きずって、他の人じゃダメだったこと。

他のモトカレとの想い出の品や写真は捨てられるのに、

翔とのだけは多分一生捨てられないこと。

翔が消えなくて苦しんでたこと。

彼氏と一緒に寝てても、翔の名前を呼んでること。

私はこの先、どうしたらいいの!?

どんなに努力しても翔がずっと消えないよって。

一通り私の話を聞いていた翔が、やっと口を開いた。

『もう、あの頃の2人はどこにもいないんだよ。』

『じゅりは想い出の中だけの俺しか知らないだろ?じゅりもそうだけど、俺だって前に進んでるんだから
  もうあの頃には戻れないんだよ。』

『じゅりはまったくもったいないことをしてる。
  今っていう時間を生きてないんだから。
  意味のないことしてるっていい加減気づけよ!』

そう言われたら、

たしかに

私が好きなのは、

今隣にいる翔じゃなくて

想い出の中の翔なんだって

やっとわかった。

目が覚めた感覚だった。

簡単なことだった。

あんなに、何年も何年も引きずって苦しんでたのに

翔のその一見キツイ一言で、現実に戻った気がした。

その瞬間から、

ビックリするくらい

パッタリ翔を引きずらなくなった。

➖やっと想い出に出来たんだ➖

『俺はもう、じゅりと付き合うことは2度とないし、
  もうこれっきり会わないし連絡もとらない。』

って思いっきり突き放された。

そこまで冷たくしなくたってイイじゃん!と思った(笑)

『俺の写真とかも全部捨てろよ!』

『それだけはムリ!!翔は私の中で芸能人のような存在だから、芸能人のプロマイドと同じ感覚だもん!!』

翔は笑いながら言った。

『自分で言うのも言いにくいけど、そんなの残してあるから引きずるんだって!帰ったらちゃんと捨てろよ!』

『ヤダ、それだけは約束できない!私の宝物だから他の人と結婚したって捨てないから!』

『ダメ!絶対捨てろ!!』

正直、そんなの私の自由でしょ!と思う気持ちがあった。

『そんなに言うんだったら翔が捨ててよ!
   持ってくるから!私は捨てられない!』

『そういうのは自分の手で捨てなきゃ意味がないんだよ!』

『わかったよ!あ~あ、もったいない!せっかくカッコイイのに…』

私が観念する形で、押し問答は終わった。

帰り際、翔が

『じゅり、本当に幸せになれよ!
  俺、じゅりの幸せ心から祈ってるから!!!』

笑顔でそう言ってくれた。

『私も翔の幸せ祈ってるからね!翔と出逢えて本当に良かった!ありがとう!』

翔は手を振りながら

『ありがとう!』

と私を見送った。

ふたりとも

涙なんかなく、

最高の笑顔でお別れできた。

こうして、長かった私の大恋愛は幕を閉じた。

帰り道、もう泣かなかった。

やっと前に進めたんだ!

あとには後悔じゃなくて、

“翔との想い出”という

すごく大きくて、幸せで、大切な宝物が

私の心に残った。

本当に清々しく、

何年も曇っていた心がやっと晴れて

最高な恋愛が出来たって

私の心は幸せで満ち溢れたんだ。

翔をよく知る友達たちは

口をそろえて

『冷たく突き放したのって翔君の精一杯の愛情だね!』

と言っていた。

『アレは本気だって!』

私にはそうは思えなかったんだもん。

そして翔は長年の夢に近づくため、

その数日後に日本を発った。

『俺、卒業したら青年海外協力隊で人のためにボランティアがしたいんだ!』

まだ高校生だった頃の彼は瞳を輝かせながら、私に将来の夢を話してくれた。

青年海外協力隊ではなく、

ワーキングホリデーって形で

海外で学ぶことを選んだけど

口だけで終わらせない彼がやけにカッコ良かった。

さすが翔だと思った。

私が心底惚れた男だもん!

あたりまえ^ ^

そして翔は北欧の空に旅立って行った。




#創作大賞2024 #恋愛小説部門

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