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【19才のシルバーリング】第8話 ~一生分の後悔編~


しばらく、コソコソ会う生活が続いた。

自分で蒔いた種だとはわかっていても、

今までのように自由に会えなかったりする生活は

相当イライラした。

ストレスが限界になってきて、

その矛先はあろうことに一番身近な翔に向いて

翔にあたりまくるようになってしまった。

もちろん筋違いなのはわかっているけど

どうしようもならなかった。

翔も初めはしょうがないってガマンしてくれてたけど、

だんだんガマンの限界になって

ケンカするようになっていった。

毎日ケンカする日々が始まった。

そのうち、私は【別れる】って言葉を口に出すようになった。

翔とのことをよく知るまわりの友達からは

『じゅり、あんなアコガレの人だったじゃん!絶対後悔するよ!あんなにカッコ良くてそこまで想ってくれる人なんていないよ!!!』

みんな口々に言うものだから、

『カッコイイなんて思わないもん!』

屁理屈で返していた。

あれだけ、アコガレてた人だったのにね。。。

あんなに雲の上の存在の人だったのにね。。。

付き合いが長くなるうちに、

ありがたみがなくなってたんだと思う。

いるのがあたりまえだと思ってしまっていた。

完全に翔に甘えてた。

『じゅり、おかしいよ!もっと翔君のこと大事にしてあげなきゃ可哀相だよ!』

そうやって怒ってくれる友達もいた。

ケンカするたびに別れると言うのが口グセになっていた。

そのたびに翔は

『俺の悪いとこがあったら全部直すから、お願いだから考え直して!』

と謝ってくれた。

意地もプライドも全部捨てて、私のところに戻って来てくれていた。

どんなにケンカしても別れても

戻って来てくれる翔に対して、

確かに調子に乗ってたんだと思う。

この人は絶対私から離れないって自信があった。

完全にツケ上がっていた。

どうかしてたよ、私。。。

最低だ。

何回も、何十回もそんなコトを繰り返して、

翔の、疲れた悲しそうな顔を見た時に

いい加減、やっと気づいた。

《このまんまじゃ絶対に良くない!!!》

そう思った私は、自分から別れを告げた。

いつもはそれで翔が頭を下げて、戻って来てくれた。

それがパターンだった。

けど、同じ過ちはもう繰り返さないように・・・

絶対に繰り返しちゃいけない・・・

3日間、会わずに連絡もとらずに真剣に考えて、

本当に翔のことが大事だと思ったら

心を入れ替えて、一から始めようって決めたの。

そしたら、今度は私から

意地もプライドも全部捨てて

頭を下げて戻ろうって。

それを翔に伝えて実行すれば良かったのに、

自分の中だけで勝手に決めて実行したから、

翔からしたら無視以外のなにものでもない。

私に電話も電源も切られてるし、メールも完全無視状態。

私だってつらかったよ。

けど翔はもっとつらかっただろう。。。

『お願いだから電話出て』

『ごめんなさい』

『ちゃんと話し合おう』

『連絡ください』

『じゅりに会いたい』

『会ってちゃんと話そう』

その間、メールもいっぱい入ってきていた。

気が遠くなりそうな長かった3日間がようやく経って、

本当に心から翔のことを大事だと思った私は、

一から気持ちを入れ換えてやり直そうと決心して翔に電話をかけた。

『翔、ごめんね』

私の第一声は謝罪だった。

電話に出た翔の声のトーンとテンションは低くて想像していた感じと違って嫌な予感がした。

『なんでシカトすんの?すげーつらかった!もう無理、限界。じゅりとやってく自信なくした。。。』

そこには予想もしてなかった結末が待っていた。

手遅れだった。

普通に考えれば、それが当然の答えだろうね。

けど、その時の私からしてみれば本当に意外な結末だったんだ。

いきなり無視されてものすごくつらかったんだって。

ふだん泣いたりしないのに、ものすごく泣いて考えたんだって。

そんなに泣いたの、きっとあの獅子座流星群以来だ。。。

もう私とどうやってやっていけばいいのかわからなくなるくらい

自信を喪失しちゃったんだって。

あたりまえだよね。

頑張ってきた翔が崩壊してしまった。

取り返しがつかないくらい、翔を傷つけてしまった。

いかに自分のことしか考えてなかったことも思い知らされた。

それから、何を言っても戻ってくれなかった。

最初はまたいつもみたく戻ってくると思ってたから、

深刻になんてとらえてなかった。

別れたって言っても変わらず会っていたし、

好きな気持ちなんてすぐになくなるものじゃないし。

『ねぇねぇ、いつ戻ってくるの?早く戻ってきなよ♪』

なんて、言ってみたりもしていた。

でも翔が戻ってくることはもうなかった。

翔の3日間泣いてずっと真剣に考えて出した決断というものは、

本気だった。

ーーーーーーーーーーーーーー

私が最後の別れを告げる前の日、

初めてふたりで会った土手でゴロゴロデートしていた。

寝っころがっていたら、

翔は私の上に覆いかぶさってきて、

手を握って、

私の真上で

『じゅりー。。。』

と名前を呼んだ。

『んー?』

と言った次の瞬間

『結婚しよう!』

って言ってキスした。

何度も何度もキスをした。

あまりに突然の出来事で

突然何を言い出すのかとビックリして固まった。

もちろん、そんなことを簡単に言う人じゃない。

いくら普段のノリが軽いとは言っても、

結婚のことはノリで言えちゃうような人ではなかった。

今まで私が何度『結婚しようよ~!』って言っても

『今はまだ無理だよ!』って言われてたから。

(まだ高校生なんだから現実的にそうだよね)

私だってまだ学生だったのに、

現実ってものがわかってなくて

愛し合ってるだけで結婚ってできるものだと思ってたから。。。

今まで私がどれだけ頼んでも

1度だってそんなこと冗談でも言ってくれなかった翔が、

初めて自分から言ってくれた。

真顔で言ってくれた。

覚悟を決めて言ってくれた。

うれしくて涙が耳の方にまで流れていった。

冷たかったけどあったかい涙だった。

ずっとこの人の隣で生きていきたい。

それが私の夢だった。

ーーーーーーーーーーーーーー

そんなこともあったから、

本当に別れるなんて考えられなかったし

別れを認めることなんて出来なかった。

現実を受け入れられなかった。

翔を失ったらどうやって生きてけばいいの?

もう他の人なんて愛せないよ。

バカだった自分をだいぶ恨んだ。

毎日毎日泣いた。

翔に泣きながら数え切れないくらい電話だってした。

『早く戻ってきてよぉ、翔じゃなきゃダメなんだよぉ!』

でも翔の出した決断は変わらなかった。

『じゃあ、友達でやってこうよ!』

と言ってくれた翔の提案に

『友達じゃ意味ないの!今さらトモダチになんかなれるわけないじゃん!!!』

と断固拒否した。

私はそれから約4年間翔を引きずることになる。

あの時、友達になっておけば良かったと何度も後悔した。

友達でもいいから翔と繋がっていたかった。

翔の面影と、想い出は

私の中で生き続け

やがてあたしの好きな男性の理想像が、

翔そのものになってしまった。

【自分のしたことは、良いことも悪いことも全部自分に返ってくる】

その言葉の意味をを初めて思い知らされた。

私は一生分の後悔をして

それから何年間も苦しんだ。

流れ星に願うこと

お参りで神仏に願うことは

決まって

『翔とあの日のように戻れますように。』

だった。

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過ぎ去った日々を追わずにいたけど
君なしでは何もできずに
振り返ればすき勝手やってわがままだった
私に嫌気がさしたんだね

As seasons'changed,
あれからいくつもの季節が流れて
新しい自分になれた気がするから 今・・・

Won't you take me babyback in your arms
あの時のように傷付けないから
I'll be true cuz baby,
もう一度振り向いて欲しい・・・to my heart

懐かしい思い出に頼ってみても
たった一瞬だけの幸せ・・・
許されるなら今すぐに逢いたい
心から I want to sayI'm sorry.

You're made me see,
愛される喜びの大切さnow I understand
少しずつ I've grown tobe a better person
だからgive me a chance...

Won't you take me babyback in your life
もう二度と baby裏切らないから
I can love you baby,
今度こそ大事にするよyour heart...

探しても君がくれたような
愛はどこにもないから
Believe in me and let melove you once again
この想いを受けとめて欲しい!

引用: m-flo 【Come Back To Me】

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当時はこのm-floの【Come Back To Me】ばかりが頭の中をリピートしてた。

まさにそのまんまだった。

もう、悪いことはしないから

もっといい子になるから

今度はもっと大事にするから

お願いだから、翔を私に返して下さい。



#創作大賞2024 #恋愛小説部門

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