まちのほんだなと資本主義と物流

 「まちのほんだな」 https://j-town.net/tokyo/column/gotochicolumn/304380.html?p=all を高円寺はもとより、全国に広げたいと思っている。本の交換は様々な所で行われているが、盛り上がりにかける印象だ。始めたときには、棚に読みたい本があふれているが、時がたつにつれ、汚れている本やふた昔前のマンガや図書館の廃棄本などが目立つようになり、読みたい本が無くなっていくのだと思う。そこで、芝刈りのように、これはちょっと、と思う本を間引き、読みたくなるような本に入れ替えている。

 いわば「ギブ&ギブ」の精神とでも言おうか。交換をしてもらうには、この一手間がとても重要なのだ。得になることは大してないが、喜んでもらえたり、本の楽しみを知ってもらうのも仕事のうちなので、面倒くさがり屋の私にしては長く続けている事のひとつだ。

 自粛期間中に、この棚のことが新聞やテレビで報道され、話題になった。少なからぬ人から本の寄贈の申し出をいただき、何人かの方が宅急便で蔵書を届けて下さった。お金を負担してまでの寄贈は、とてもありがたかったが、申し訳ない気持ちにもなった。その時に頭に浮かんだのが「全裸監督」の主人公村西徹の「物流を制すものが資本主義を制す」という言葉だ。

 アダルトビデオの監督になる前の彼は、裏本王としてこの国に君臨し、巨万の富を築いていた。それに飽き足らず、当時話題になっていた写真週刊誌を創刊、裏本の流通網を使って全国の書店に配本し、表の出版業界に殴り込みをかけたのだった。ここで解説を少し。裏本というのは、ぼかしが入っていない違法なアダルト本のことで、80年代初頭には一冊1万円近い値段で販売され、飛ぶように売れていた。この辺の事情は本橋信弘さんの「裏本時代」に詳しく書いてある。

 この時に夢想したのが、ウーバーイーツのボランティア版のような物流システムだ。Aさんが明日の夕方、阿佐ヶ谷から名古屋までワンボックスカーで旅行する計画がある。三人家族なので空きがあり、本が詰まった段ボールを5箱程度なら運ぶことが出来ます。名古屋駅から5キロ圏内なら届けることが可能。というような書き込みをする。それを見て、名古屋の近郊にある刈谷市でまちのほんだなをしたいと思っていたBさんのところに、本を届けてもらうように手配をする。Aさんにはお金ではなく、当店のストック棚から本を10冊程度お礼で、というような善意の物流のマッチングサイトがあれば良いのになと思った次第だ。

 物流のマッチングサイトはあるが、当然の話ながら、お金がかかる仕組みだ。ここをボランティアベースでやることが出来れば「物流が優しくなることで、資本主義が優しくなる」かもしれないな、と。まあ、夢想だ。だけど、そんなに難しい仕組みではないような気もしている。

 これを広げていけば、余った食材をこども食堂や高齢者の施設に送ったり、未だ経営基盤の弱い311で被害を受けた地域の特産物を消費者に届けたり、いろいろと役に経つような気がしている。これを読んでピンときた、知恵ある人々よ、力を貸していただけませんか。

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