あの日の日記 20110505彼方からの手紙

ゴールデンウィーク連休初日。
おっきなおにぎりを握って、山登りをすることにする。
おにぎりを握っているとおばあちゃんを思い出す。
母親から「おばあちゃんは三角おにぎりを握れない、 俵型のおにぎりしか握れない。」と聞いていた。
おばあちゃんのおにぎりを見ることなんて、なかなかなかったが、 ある日おばあちゃんの家へ遊びに行ったとき、俵型のおにぎりが出て来た。
やっぱり三角には握れないんだ。
でも、おばあちゃんらしい、かわいいおにぎりだった。
自分が握ったおにぎりは、一応三角だけど、大きさはバラバラ。
具は冷蔵庫にあった梅干しだけ。

御岳山。電車にカタコト揺られて1時間半くらい。

ケーブルカー乗り場までバスに乗る。すっごく人が並んでいる。
でもすぐに次から次へとバスが来た。長い列がどんどん吸い込まれてゆく。

ケーブルカーに乗る。
出発の時に運転手がフォン!と大きな汽笛を慣らし、乗客を驚かす。
「びっくりしたでしょ?」
ここから話が始まり、運転手さんの軽快なトークが続く。
「今日は御岳山にお越しいただき、ありがとうございます。
隣の高尾山を選ばれなくて、うれしいです」
「こんなにお客様が来るのは久しぶりなんですよ。この間なんか、乗っていたのがカップルだけで、どうしようかと思いました」
などなど。話すたびに乗客の笑い声が車内に響く。

「ようこそ、パワースポットだらけの御岳山へ!!」

話している運転手さんは、気持ちいいんじゃないだろうか。
窓から外を見るとところどころにまだ桜が咲いている。
ここはまだ春の始まりが、始まったばかり。

ケーブルカーを降りると、出店が立ち並ぶ広場へ出る。
下の景色を見下ろすと、山に囲まれ、遠くに街が見え、
ここからもう気持ちのいい景色が広がっている。
早速お昼にする。朝握ったおにぎり。
場所が変わるだけで、ただの梅干しおにぎりも美味しく感じる。
おかずがなかったので、お店でいろいろ探してみたが、めぼしいものはない。
あゆの塩焼きが美味しそうだったが、
お店の奥に、冷凍あゆ、と書かれたダンボールがあり、ちょっとがっかりする。
この山で釣れたあゆだと思ったのに。

早速歩き始める。この間鎌倉の裏山みたいなところ歩いた時もそうだったけど、
「こんにちは~!」と挨拶すると、みんな「こんにちは~!」と返してくれる。
これが嬉しい。街中でこんな挨拶をしても、不審がられるだけだろう。
ちょっと前までよく流れていたCMを思い出す。あのCM、好きだったな。

そんなに高い山では無いので、歩くのもきつくはない。
途中神社があったりして、お参りをする。
この神社には「お犬様」と呼ばれる絵が祀られているので、 犬もたくさん山登りに来ていた。階段を昇ったり降りたり、少し大変そう。
おみくじもあるが、年初めにひいたおみくじが大吉だったので、今年はもうひかないことにしている。

すこしずつ周りが山らしくなってくる。いろんな木があり、いろんな緑がある。
そして名前も分からないいろんな花が咲いている。
ちょっと視線を変えるたびに、いろんなものが目に入る。
しばらく行くと滝があったり、清流の流れる岩場があったりして、 ここが東京であることを忘れてしまう。
屋久島もこんな感じらしい。ほんとかね。
だったらわざわざ屋久島まで行く必要はないのかもしれない。

たまには立ち止まってみる。
さっきまで聞こえていた足音が消え、辺りが一瞬静かになる。
そして後ろを振り向いてみる。前だけを見ていたら気づかなかった、
思ってもいなかったキラキラした綺麗な景色が広がっている。
また前を向き、あるいてゆく気力が沸いて来る。
歩けば歩くほど、気分がわくわくしてくる。

そして山登りはあっという間に終わる。

帰りの運転手さんのトークもあったが、若いからかちょっと照れくさそうだ。
登山客はみんな満足そうな顔をして帰り道を急ぐ。

ちょっと歩くだけで景色が、表情が変わる山は面白い。
全ての山がそうではないのかもしれないが、
もっといろんな山へ登って、いろんな景色を見てみたい。

山の瀬にしずむ夕焼けなどは
うっかりすると涙を流すほど
本当に素晴らしすぎるんだよ
木々からこぼれる光はまぶしく
ぼくはその影だけを追っている
気がつくともう夜になってる
そんな事もしょっちゅう
毎日みんなで口にするのは
「あぁ、あいつも来てればなぁ」
って 本当にぼくも同感だよ
それだけが残念でしょうがないよ

ここにこなけりゃぼくは一生
わからずじまいで過ごしていたよ
あんがい桃源郷なんてのは
ここのことかなってちょっと思った
君もはやく来たらと思う。
それだけ書いて 筆をおく

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