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静かで暗い街を歩く 徹夜梅田探訪 上

 緊急事態が宣言され、3週間が過ぎた。大阪の人通りはおよそ8割削減されたと言われている。筆者の家の周辺では行き場を失くした家族連れ・高齢者・学生が公園に集い、むしろ普段よりも人出は多いが、梅田ではかつての人混みが嘘のような、非常に快適な人口密度だ。地域による落差はあろうが、中心部において8割削減は大げさではないと感じる。

 さて、不要不急とは、についての議論がツイッターで散見されるなか、筆者が見たある投稿には「私がしたいと思ったとき、それはもはや不要不急ではない」という思い切りの良い意見があった。この言葉にはげまされ、かねてより構想していた、徹夜での梅田界隈撮影を実行に移すことにした。8割人が減り、飲食店も夜の店も閉まる中、そこにはかつてない梅田が出現するはずだ。

上 では4月29日の夕方から夜にかけての様子を伝える

下 では日付が変わり4月30日0時から朝にかけてを伝える

16時 地下鉄梅田駅~東梅田

 昼まで寝てしまったので、その十分な睡眠を活かすために徹夜撮影を強行することにした。拠点としてのホテル予約にまごつきながらも、三脚を担いで梅田に到着。地下鉄梅田駅構内は、ちらほらという程度の人だ。平日とはいえ随分少ない。

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(15:59 地下鉄梅田駅構内)

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(16:08 阪神百貨店2階外廊下)

18時頃 曽根崎~JR大阪駅周辺~茶屋町周辺

 ホテルに荷物を置いて、早速街へ出る。まずは曽根崎お初天神通り商店街。30分歩いてキャッチが数人程度、数少ない営業している店では店先で呼びかける人もいる。営業している飲食店のほとんどは、テイクアウト対応か臨時弁当販売をしていた。弁当は500円前後という価格帯がほとんど。コンビニがライバルとなるなか、普段は店でしか食べられない料理が安いというお得感がある。

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(17:50 曽根崎)

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(この一角は比較的営業している店が多かった)

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(どんな店か、よりも営業しているか、が気になる今日この頃)

 ここで目に付くのはUber Eatsの文字。100メートル歩いて3人の配達員とすれ違った。配達員が料理を受け取っている横を配達員が通り過ぎ、通り過ぎた配達員が受け取っている最中に隣の店からは自前の配達員が出発するという具合だ。

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(17:54 曽根崎)

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(19:29 ドン・キホーテ近くの商店街、配達員がすれ違う)

 配達員も含めてだが、自粛後の梅田では自転車の割合が増えた。通行人が大幅に減り、商店街でも自転車がさっそうと通り抜けられる。実は、夜中にすれ違う数少ない人も、歩く人と自転車が半々の割合だった。

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(17:58 HEP FIVE横の通路)

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(関西随一の待ち合わせスポットがこの人出なのだ)

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(18:05 おそらく帰宅ラッシュだ)

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(これくらいなら快適な人口密度と言えるだろう)

 JR大阪駅では、うめきた広場1階、大階段下のベンチが撤去され、植木側のベンチもコーンで囲われていた。久しぶりに何もない広場だ。

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(18:38 1階うめきた広場)

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(コーンで囲われてはいるものの、大階段でもその近くの段差でも座れるので意味はあまりない。ただ、意図して作った「座る」場所だからその責任として囲ったのだと推測する)

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(こういう語らいをするには、絶好の人の少なさだ)

 ルクア大阪が閉鎖されているため、時の広場から外から上階につながるエレベータも立ち入り禁止の表示があった。乗り越えたい欲求を抑え、5階から撮影した。

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 人が少ないのは写真の通りだ。たまに訪れる地方都市の、立派な建物がある一方で、人が少ない様は梅田に通う身からすると余計に寂しく感じていたが、梅田で味わうことがあるとは思っていなかった。写真を撮る側としては「蟻のような人の大群」という大都市の価値が失われている。今はディストピアとして、過去の人の多さとのギャップが味わえるが、長引けばシュールな日常となる。冒頭に「快適な人口密度」と書いたが、日中は快適でも夕方以降は寂しさが勝つ。

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(18:30 時の広場より撮影)

 陽が沈み、茶屋町方面に足を向ける。阪急線沿いは軒並みシャッターが下りていた。かっぱ横丁は閉鎖され、古本屋も閉じている。看板の灯りもなく、陽が落ちてさらに閉塞感が漂っていた。

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(19:02 阪急大阪梅田駅高架下)

 衝撃だったのは茶屋町だ。ロフトが閉鎖し、ほとんど店も閉まっているなか、危険を感じるほどに暗い。かろうじてイルミネーションは点いているが、店の灯りが無い中で異様な雰囲気を出している。19時過ぎで危険を感じる暗さ、が現在の茶屋町だ。

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(19:13 梅田ロフト前でこの暗さだ)

 関係ないが、異常に駐車禁止の注意書きが貼られた自転車があった。ディストピアの雰囲気には合っていたが、持ち主は至急持ち帰られたし。

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 ホテルへの帰り道、東梅田の商店街、ホテル街に通りかかった。陽が落ちてから、マスクをしていない人の割合が増えた。端的に言うと絡まれたくないなと思わせる人がマスクを付けておらず、カップルや会社員が減ったことで目立つようになった。そんな中、ラブホテルに入るカップルを偶然目撃した。時刻は19:23、おそらくこれまでの常識ではかなり早いのだが、居酒屋もほとんど閉店しているなかで、適切な判断かもしれない。

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(19:25 HEP FIVE東側、ボートピア梅田前)

 次回はいよいよ徹夜探訪の本番が始まる。真夜中の梅田・中之島の実態が明らかに。

(文・写真 有賀光太)


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