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映画『SKIN/スキン』

 顔中にあるタトゥーがトレードマークのブライアンにとって、「移民排斥」「白人のためのアメリカ」を謳うヴィランダーズ・ソーシャル・クラブは人生の全て。クラブのリーダーであり育ての親、クレーガー夫妻は絶対の存在だった。ナイフと銃で武装し、「家族」に手を出す人間には容赦しない。
 ある日、閑散とした集会で出会ったジュリーは、暴力的な夫と別れ、3人の娘を1人で育てている。愛犬ボスをきっかけに、2人の仲は深まっていく。ジュリーは暴力的なクラブを嫌っていて、ブライアンはクラブの活動に嫌気がさしてくるが、クラブを抜ければ何をされるか分からない。反ヘイト活動家のジェンキンスに助けを求めると、クラブの情報を密告するという条件で逃がしてくれるという。ブライアンは人生をかけた決断をする. . . . .

 差別主義団体から脱退した男の実話を元にした物語。思想を軸に集まったというより、社会的なコミュニティの仲間として引き込み、活動を通して団結し思想に染まるという構造を生々しく描く。主人公のブライアンは、強固な排外思想を持っているようには描かれない。成育環境による暴力的な言動はあるものの、随所に優しい一面を垣間見せる。思想の変化というよりは、構造からの脱却という側面が強い。劇場によっては、監督が本作の前身的に撮った短編『スキン』も同時上映されており、共通する2つの物語によって単純化できない感情が引き出される。

2020年 監督 ガイ・ナティーブ 主演 ジェイミー・ベル

 思想や主張よりも、組織の構造が詳しく描かれていて、現実に起きていると実感させられる。組織のリーダー夫妻が悪っぽいけど粋で、優しくて貫禄がある。普通の映画なら絶対に良い人物という描かれ方なのが、リアルで本当に怖い。実話を元にしているので、ジェンキンスとのやり取りなど一つひとつのエピソードが生々しい。最後は結構感動する。

画像出典
http://skin-2020.com/

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