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2019秋南京歴史紀行超初心者編(with台風と黒猫)その2

印象断片:


空の上の印象

 台風ハギビス氏が関東目指してまっしぐらに進んで来るので、パッキングもそこそこに、ベランダの排水口を掃除し、網戸を外し、サッシの隙間にボロ布を突っ込んでから家を出た。もっとも、東京東部低地帯にある我が家のあたりは、荒川が決壊したら3メートル以上浸水することになっているので、心配しても仕方ない。

 飛行機に乗ってしまえば、台風の影響は、ちょっとした乱気流でゆっさゆっさ揺られた程度。窓際に席を取ったので、色々な雲を眺めて楽しんでいた。瀬戸内海あたりでは、雲との境界がみごとに一直線になっていてあそこが前線とわかったし、公海上では、青い海に雲が列をなして並んでいたし、大陸上空にさしかかったら、下界は一面みっしり羊が詰まったような雲に覆われ、その上に時々積乱雲が突き出していたりした。夕方の水色と薔薇色が混じったような空のはるか彼方に、竜の巣みたいな巨大な雲の城が見える。それにしても、地平線の先までとにかく平らで、山というものが無い。そのうち、飛行機は高度を下げて雲の下に出た。

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 地上が見えた。川というか水路というかがあっちにもこっちにも走っている。ところどころ、周囲の田んぼや草地と明らかに色の違う溝状の低地が続くのが見えて、元はクリークだったのだろうと思う。細長い池もたくさんあって、あれらもクリークが切り離された名残りに違いない。ああ、ここらは水郷地帯で低湿地で、何度も洪水に遭いながら、とにかく排水して開発してきた土地なのだなあと感動した。今はきっとダムや堤防が整備されて、クリークは埋め立てられて農地や道路や宅地に転用されつつある最中なのだろうけれども、上空から見ると、歴史的な土地利用の痕跡は歴然と残っている。


地上の印象

空港:

 約3時間(時差があるので、時計的には2時間)のフライトの後、南京禄口国際空港に到着し、指紋と顔写真を撮られた後、無事、空港の外へ。公式サイトに長らくアクセスできず、出発前は空港突破が一番の難関と思っていたが、実際はそれ程大きな空港でもなく、案内サインが設置場所含めわかりやすくデザインされていた上、利用者の割に係員の数が多いので、わからない時は、粗忽な外国人旅行者アピールをして助けを求めると、結構親切に対応してもらえた(放置しておくと勝手にふらふらしかねないから、きちんと案内した方が無難と思われた可能性はある)。

地下鉄:

 禄口国際空港から宿のある新街口までは、南京南駅での乗り換え含め1時間弱。地下鉄に乗るには、1:切符自販機でICチップ入りトークンを購入する、2:手荷物検査を受ける、3:トークンを改札でピッとして入場する(出場する際はトークンを投入口へチャリンする)、と予習していて、概ねその通りだったのだが、自販機が1元コインと5元札、10元札しか受け付けてくれないのは想定外だった。手元にあるのはセントレアで両替した100元札だし、近くのATMで現金を下ろそうにも、少額紙幣には対応していないようなので、あわてて空港に戻ってコンビニでペットボトルを買う羽目に(なお、未開封ペットボトルは「あやしいものリスト」にでも載っているのか、セキュリティチェックで超念入りに検査された)。空港くらいは高額紙幣OK仕様にしてほしい。以後、10元札以下を常に確保するのが、旅の最大のミッションになった。

 以下、印象を箇条書きに。

 駅の構内は広く、ホームも広く、ホームドア(東京で言うと地下鉄南北線にあるみたいな、天井まであるやつ)が完備され、乗り換え動線もわかりやすくて、快適。改札は基本1か所なので、どの改札から出ればいいのか迷う余地が無い。改札から出たところには必ず地図があって出口が確認できるので、ここでも迷う余地が無い。日本と違って、「目的地が近づくと突然消える案内表示」ではないのが、方向音痴の身にはポイント高し。日本の駅は無駄に出口多すぎなんだよ。

 車内には「戸袋に荷物を挟むな」的な注意書きがあちこちに貼ってあって、日本と同じだなあと思った。駅の放送も、言葉が全然わからないので推測だが、雰囲気から察するにマナー啓発的な不要不急のものが結構流れている感じ? これも日本と同じ。マナーと言えば、「降りる人が先」に関しては完全に無視されていて、そこは守ってほしいと切実に思った。なお、イヤホンで音楽を聴くという文化が無いらしく、車内は結構賑やか。あと、割と気軽に話しかけられる(「とは言え、携帯で喋っているあいつはさすがにうるさすぎないか? 注意した方がいいよな?」みたいな感じ)。

街と人々:

 建国70周年の国慶節連休直後だからか、あらゆるところにスローガンの垂れ幕やポスターがある。標語の「富強」なんかは日本では絶対書けないなと思ったりした。「法治」…も、最近の日本だと書かないかもな…

 公的セクターの入り口ではのべつまくなし手荷物検査をやっている印象。地下鉄だけでなく、博物館や図書館でも。また、あちこちで監視カメラが働いているらしい。「ここは監視重点区域だからビデオ撮ってるよ」表示をしょっちゅう見かける。日本だと監視カメラの存在(腐るほどあるけどな)を明示しないので、このような公権力のわかりやすい可視化は、良くも悪くも印象的。

 なお、広告にはとりあえずパンダを描いておけばいいと思っている節が感じられた。役所っぽいのからポップなのまで、とりあえず眺め渡すと一つ二つは大熊猫がおる。そして、主要駅や主要観光地を軒並みジャックする、「5G」推し広告の群れ。

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(観光名所夫子廟付近の5G推し看板と南京1912街区のハロウィン(?)パンダ)

 人の流れを眺めていて、何となく違和感を感じて気づいたのは、若者の割合が高いこと(日本は高齢化社会なのだと実感した)と、女性のスカート率が非常に低いこと。たまにスカートの女性を見かけると「おしゃれさんなのかな?」と見てしまう。また、特に中年以上の女性のショートカット率も高いので、服装など外見の性差は意外に少ない。

 街は大きい。歩道も広いし、自転車道もある。さらには街路樹もよく育っている。渋谷のスクランブル交差点、中国人観光客から「がっかり名所」呼ばわりされてない? 大丈夫? と心配になるスケール。結果として、人は多いけれどもそれほどごみごみしていない。

 通りを歩いていると、マスクをしている人をそこそこ見かける。実際空気はちょっといがらっぽい。ディーゼル車対策をする以前の東京の首都高周辺的な微粒子っぽさ。

 信号機は「残り時間」を秒単位でカウントダウンしてくれる。ただし、広い道路だと一回では渡りきれず、中央分離帯あたりで待機する羽目になる。とはいえ、すぐそばを自動車に高速でかすめられて恐怖、というようなことはまずない。道がとにかく広いので。

 …といった知見を得たところで、ホテルに到着。続きます。

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