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2019秋南京歴史紀行超初心者編(with台風と黒猫)その1

 7月の末に、上野の東京国立博物館で開催されていた三国志展を見た。横山光輝の漫画やNHKの人形劇にも目配りした取り扱い範囲の幅広さ、フォトジェニックな展示デザイン、日本では珍しい写真撮り放題の太っ腹ぶりなど、特筆すべき点は多々あったけれども、やはり素晴らしかったのは、中国各地の博物館から集められた展示品の質の高さ、そしてその圧倒的な物量だった。

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 中国にはこんなに沢山の超一級の文物が存在するのか、その物量に殴りかかられる至福を味わえるのかと思ったら、猛烈に中国の博物館巡りがしたくなった。
 とはいえ中国語は全く話せない。
 手始めに、三国志展の赤壁の戦いのインスタレーションの元ネタであるという南京の六朝博物館に行ってみようと思った。ちょうど、梁高僧伝にはまっているところでもあるし。まあ、南京なら、歴史があるし、結構な大都市だし、上海からも近いし、航空券+ホテルの実質自由行動みたいなツアーが沢山あるだろうと気軽に考えたのである。
 ところが、いざ検索してみると、フリーツアーはおろか、添乗員付きコース旅行さえ、ほとんど見当たらない。ちょっと待て、二千年来交流がある隣国の、何度も首都になっているような都市なのに、どうしてそんなに観光ツアーが枯れているんだ。
 さて、どうしよう。中国語は全く話せない。
 しかしながら、一旦湧き起こった旅行したい欲は容易に鎮まるものでもないわけで、気づけば航空券とホテルがピックアップされ、あ、航空券予約するのにパスポート要るけど期限切れになりかかってたんだっけ、ということでその日のうちに写真を撮り、翌日にはパスポート更新の書類を提出に行き、ついでに、いくらぐぐっても博物館の情報が無いから、情報収集用に微博のアカウントを開設し、一週間後、新しいパスポートをゲットした日には、南京行きは無事確定していた。あれよあれよ。
 とはいえ中国語は全く話せない。NHKの中国語講座のテキストを買いに走ったあたりで、仕事が繁忙期に突入した。…


 …9月の下旬に入り、そろそろ旅行の具体的なプランを立てるべき時期だという気がしてきたが、残業と夏バテに疲労困憊してそれどころではない。金曜日ともなると息も絶え絶え、週末はこんこんと眠り続ける日々。旅行の準備どころかメンタルのメンテナンスをしなければ鬱になってしまうと思ったので、とりあえず映画を見ることにした。中国に行くのだし、景気づけに中国の映画を、というわけで、たまたまタイムラインを流れてきた『羅小黒戦記』というアニメを。

(映画を見る前は、ハートウォーミングな黒猫ロードムービーだと思っていた)
 疲労で体じゅうが痛いので見るのを止めようかとも思いつつ、ポスターの可愛い黒猫に癒されればそれでいいや、とよろよろ池袋まで行って、沼に沈んで帰ってきた。というか、数年来、枯れ果てて底が見えてヒビ割れていた私の中の妄想力の泉が、一瞬にして溢れ出し、満々たる水を湛えた湖になったよね。速攻で2回目を予約した。当然ながらその週末は旅行の準備はできなかった。
 次の週末に2回目を鑑賞し、3回目を予約しようとしたら売り切れていた。2回目の感動と3回目を見られないロスで、この週末も旅行の準備はできなかった。旅行の準備は一向に進まなかったが、中国の映画館検索アプリを落として来て、『羅小黒戦記』のかかっている映画館を検索したりしていた。お、南京でもあちこちで上映しているではないか。
 Googleの地図も林檎の地図も役立たずだったので、百度の地図アプリで上映している映画館の位置を確かめていった。そうしたら何と、宿の向かいのシネコンにかかっている。これは日中観光した後、夜に映画を見られるロケーションなのでは…!



 ということで、今回の旅の目的は、無事、以下のとおり定まりました。
 六朝博物館を見る。
 南京図書館を見る。
 鶏鳴寺を見る。
 玄武湖の湖畔を散策する。
 『羅小黒戦記』を見る。←new!
 街歩きをして、街の規模と雰囲気を自分なりに把握する。
 南京博物院に行ってみる。
 その他観光名所的なところを回る。
 カッコイイと評判の書店に行く。


 とはいえ、中国語は相変わらず全く話せない。南京市の公式観光サイトには日本語による充実した観光地情報があるのだが、一見してわかるとおり、語学が不自由なのに自力で来たがる軽率な観光客が知りたい情報は充実しているとは言いがたく、それは南京地下鉄などのその他の公的セクターのサイトも同様で、空港に至っては、国慶節の連休が終わるまで、そもそもホームページに繋がりもしなかった。繋がったとしても、オール中国語だし。
 仕方ないので、不足するスキルは金の力に頼ることとして、いささか過大な通信環境を確保し(結局使わなかったけど、ポケトークまでレンタルしてしまった)、地下鉄の乗り方を把握し、まあ何とか宿までたどり着く見通しが立ったあたりで、台風がやって来た。(続)

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