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新キャラクター「ダニーアンドチェリー」で高校生と行う地域づくり| 思いを繋ぐおせっかいのバトンリレー

Community Nurse Company 株式会社の本社・拠点がある島根県雲南市。
雲南市では「元気になるおせっかい」を広げたいとの思いから、既にコミュニティナース的存在として活動しているまちの人を巻き込み、一緒に成果を出していきましょうとチームで動き出しています。医療職にこだわらず、お互いの強みを出し合いながら全力で議論する「地域おせっかい会議」から生まれるアクションとまちの人とのストーリーを「思いを繋ぐおせっかいのバトンリレー」として連載を始めます。

「地域おせっかい会議」が前を向くきっかけに。

雲南市には、住民が自らの手でその地域の課題解決などを行う「地域自主組織」をはじめとして、様々な市民活動が行われています。それらの市民活動は対象や目的も多様に見えますが、たとえば「楽しく暮らしやすい地域づくり」などの共通の目的のため、多団体が活動を重ね合わせて取り組みを行うこともあります。けれど双方の目的や利益を思いやればやるほど、進め方の迷いや行き詰まりを感じることがあるかもしれません。
今回お話を聞いたのは、地域自主組織の職員として、市内の高校生の地域学習をサポートした菅田敦子さん。
新型コロナウイルスの影響で想定していた活動も中止になり、その後の立て直しに頭を悩ませたと語る菅田さんが前を向くきっかけになったという、地域おせっかい会議のサポートについてお話を聞きました。

・菅田敦子(すがた・あつこ)/下熊谷ふれあい会 生涯学習推進員/地域福祉推進員

--まずは地域おせっかい会議に議題としてあげられた高校生の活動について教えてください。下熊谷ふれあい会での高校生たちが活動するようになったのはいつからですか?

 下熊谷ふれあい会では、平成30年度から大東高校の「地域フィールドワーク」の授業に協力していました。当初は夏の「そうめん流し」イベントを手伝ってもらいましたが、「楽しかった」と言ってくれたとはいえ、ただ運営の手伝いだけさせた形になったのではと反省もあって。そこで次年度では高校生たちが自分たちで課題を捉えてどう解決するかという狙いも意図して、「イベント運営」から「イベント企画」に内容を変更して呼びかけたんです。

--おもしろいですね!高校生たちが考えた企画はどんなものだったのですか?

 令和元年度のそうめん流しは、参加する子どもたちも当日食べに来るだけではなく、老人クラブの方に協力してもらいながら、竹を切って運んで、流し台や食器も作るという計4日間のプログラムにしました。高校生たちはその準備から一緒に活動しながら、そうめん流し当日にする出し物を考えてくれました。そこで私から、「集まる子にはおとなしい子が多い印象だ」と話すと、みんなで盛り上がれるリンボーダンスを企画してくれて。その司会や流す音楽の準備なども自分たちでしてくれて、イベントも大盛況でした。
 その同年度1月に餅つき大会も予定されていたので、そのイベントも盛り上げてくれないかということを、私から高校生たちに話しました。するといろんなアイデアが出た中で最終的に「キャラクターをつくる」という案が出たんです。「しもくまたに」という地名だから熊がいいとか、オスかメスか、両方いた方がいいかなど話し合って、そこから自分たちで絵の上手い子に頼んで完成させたのが「ダニー&チェリー」というキャラクターです。餅つき前の30分を、このキャラクター発表に当てようということになりました。
 当日は子ども40人とその親など合わせて100人近い参加者でしたが、高校生たちは地域にまつわるクイズなども考えて、上手に子どもたちを動かして運営してくれました。

--高校生たちの力、すごいですね!どんな働きかけで、彼らはそこまでできたのでしょうか。

私が印象的だったのは、高校生たちはすごくお互いを認め合っているんです。「司会上手だったよ」などと声を掛け合っている姿もありました。他にも、私たちがそうめん流しの薬味をたくさん用意するのに追われている間、高校生たちが子どもたちの良いところをすごく見てくれていて、そのことをイベントの振り返りの時にも話してくれてすごく感動しました。
 そうしたことから、手伝いだけでなく、投げかけ次第でこの高校生たちはやれる力があるのだと思いました。私たちができるのは、助っ人としてというより、高校の学習の目的を理解して、生徒自身に任せることだなと思ったんです。

--–何か特別なことを働きかけるというより、信じて任せる、ということをされたんですね。そのあとの活動が楽しみな生徒さんたちですが、その後はどんな活動をされたんですか?

 高校生たちが考えた「ダニー&チェリー」のキャラクターは、楽しい企画にどんどん使って、地域の子ども達がより楽しい気持ちでイベントに参加できるようにしたい、というコンセプトはありましたが、新型コロナウィルスの影響で思うような活動ができていませんでした。そんな中、「ダニー&チェリー」の活動に中心で取り組んでいた生徒さんが「雲南スペシャルチャレンジ制度」に応募したところ、キャラクターのうちわ作りの提案が採択されて補助金が支給されたんです。そこで当初はキャラクターのうちわを市内の高校生に配布して周知したいという考えだったので、私の方から下熊谷ふれあい会とも連携して地域にも広げていかないかと提案しました。
 けれど新型コロナウィルスの影響でそうめん流しやクリスマス会なども中止になり、どうやってキャラクターを広める機会を作るか、悩んでいました。高校生たちの思いを一番大事にしたいから、下熊谷ふれあい会の方からあまり活動の路線を押し付けたくない。けれどその時点ではもう「地域フィールドワーク学習」という授業活動ではなかったので、高校生たちの活動をどう導いてあげればいいのか…。
 そうした思いから、宮本さんたちが来られた際にもふと「高校生とのコラボって難しいんだわ」という話になったんです。そうしたら「ぜひそれを地域おせっかい会議で”お題”として、皆さんからアイデアを聞いてみませんか?」と言われたんです。

--そこで「下熊谷キャラクターのダニー&チェリーで地域活性 〜高校生の作った下熊谷のキャラクターの活用方法について考える〜」というお題を地域おせっかい会議に提案されたんですね。会議に参加されてみていかがでしたか?

 まずはもう参加するのも初めてで、最初に「話してください」と言われて戸惑いながらこれまでの活動や思いをお話ししました。するととにかく色んな意見やアイデアをいただいて、やっぱ光が見えたというか。困ったらサポートしてもらえるんだという実感が湧きました。
 中でも印象的だったのが、参加者の中に(公財)うんなんコミュニティ財団の代表 郷原さんがおられて、話を聞いたうえで「うちの財団に相談に来てもらったら力になれるかも」という話もしてくださったこと。
 なぜ印象的だったかというと、私たちにはここに「地域おせっかい会議」あそこに「コミュ財」、あっちには「おっちラボ」、そっちにはスペチャレなどの市の事業…とあっても、それらをどう活かしたらいいのか、そもそも何をしているのかが把握しきれない部分があったんです。地域おせっかい会議も、会議に参加してみてようやく分かったような気がして。
 けれど郷原さんを始めとして地域で活動されている人の顔が見えてくると、こうして人との繋がりで、思いがある人を助けたり金銭的な援助もできるんだわと、自然と思えました。
 今回は会議を経て、新しく決まったことや具体的なサポートがあったわけではありませんでしたが、参加する前よりもぐっと気持ちが前向きになった。やっぱりそこが一番じゃないかと思います。

--会議の中で悩みや迷いを打ち明けたことで、前向きに意見を投げかけてくれる他の参加者さんの様子に勇気付けられたのですね。「ダニー&チェリー」を活用した高校生の活動は、どのように進んでいったのでしょうか?

 新型コロナ対策でそうめん流し等は中止しましたが、夏休みの間のラジオ体操と下熊谷音頭の練習などの機会に高校生にも来てもらって、うちわ作りにかける思いを紹介してもらいました。そこから地域の方が何名か来てくださって、一緒にうちわ作りをしました。その数全部で600本。下熊谷地区へは自治会長さんにも説明したうえで、高校生のコメントもつけたうちわ600本を全戸配布しました。配布することで、まずは「ダニー&チェリー」を地域の人に知ってもらうという狙いです。
 配布後、下熊谷交流センターに来られた住民さんからは「今の高校生はすごいね〜」や「キャラクターがかわいいねえ」「コロナで家にいて暑いから使っているよ」という反響がありました。また、うちの2歳の孫も気に入っている様子なので、「ダニー&チェリー」には子どもが見てもわかる魅力があるんじゃないかな。なので今は交流センターのスタッフの名刺や会報誌にも「ダニー&チェリー」を必ず載せてるし、販売している味噌にもシールを貼ったりしています。
 今はそうして地域の皆さんに周知する段階。あとはこれを一歩ずつどう活かして、事業や地域の活性化につなげていくのかということが次のステップだと思っています。
 そういえば今度、高校生達が「ダニー&チェリー」の顔出しパネルを作りたいという打ち合わせで来るんですが、その連絡をくれた電話でコミュ財やスペシャルチャレンジ制度に「ダニー&チェリー」のきぐるみを作る資金を相談しに行ったって。もうどんどん進んでいくので、すごいなあと。
 私たち下熊谷ふれあい会も、高校生達の身近なところで活動を支えることが、自分たち地域にも還ってくることだから、生徒らの思いも大事にして応援したい。せっかく作ってくれた「ダニー&チェリー」というキャラクターを、作って終わりじゃなく今後の地域の活動にもうまくつなげていければ、もっと子ども達や若い保護者さんとか、次世代ともうまく連携できるんじゃないかなって思うんです。

--最後に、振り返ってみて印象的なことはありますか?

 私、高校生達とふれあってるとすごく楽しいんです。なんでかな?と思ったら、たぶん「それは無理だよ」とか言う人がいないんです。そうやって、お金とか制限とかで出来ない理由を探すより「どうしたらできるか?」とかを話す人と一緒にいると楽しくなってくるんだなと。
 それって地域おせっかい会議も一緒だったなと、そう思ったんです。

--
「地域おせっかい会議に参加したことで、すごくやる気が出た。その後誰かが何かをしてくれるかどうかよりも、自分が前向きになるのが一番大事。」そう話してくださった菅田さん。
その笑顔は様々な要因で活動が制限されても「その中でできることは何?」を見つけようとする姿勢が、何より力になることを表しているようでした。

ライター 平井ゆか

まちの中で、心と身体の健康を願って活動している人を私たちは「コミュニティナース」と呼んでいます。
誰かを喜ばせたい、元気にしたいと願うあなたの思いと行動の第一歩として、全国のコミュニティナースが集うオンラインコミュニティ「コミュニティナース研究所」へご参加ください。
https://cn-laboratory.com/join

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