【雑記】センタナファジンへの期待

神経発達症(特にADHD)に使われる精神刺激薬として、アンフェタミン(そのラセミ体やD体)にリスデキサフェタミン(アンフェタミン-D体 コドラッグ)やメチルフェニデートが有名です。
これらの薬剤は、中枢におけるドーパミン(DA)やノルアドレナリン(NE)の濃度を上昇させることで、覚醒を起こすと言われています。
しかしこれらの薬剤には、依存という問題があります。もちろん、適正使用した場合(非乱用)については、それほど依存について心配する必要はありません。
しかし、「絶対に依存しない。」と言い切ることはできず、むしろ依存性が高いと言った方が正しいでしょう。
少し矛盾しているようにも思えます。
もう少し言い方を変えましょう。
適切に使用することができれば、さほど依存を心配する必要はありません。とは言っても、適切に使用するのが難しいです。
そういうことになります。

そもそも、なぜ依存が起こるのでしょうか?ここで言う依存とは、精神依存のことです。(実際に、依存という言い回しは非常に曖昧です。)
薬物やギャンブルに関する依存について、「脳におけるドーパミンの量が多くなるから依存が起こる」と説明されることが多いでしょう。
確かにドーパミンは報酬系ですので、この説明を真っ向から否定することはできません。
ですが、本当に病的な依存を生み出しているのは、ドーパミンそのものというより、Δfosbの過剰出現だと考えられています。
実際に、コカインやメチルフェニデートの依存には、Δfosbの異常が確認されています。
メタンフェタミンなどの非常に強力な覚醒剤による依存は、Δfosbの異常はもちろんのことですが、加えて広範囲での神経毒性が囁かれています。

メチルフェニデートについて
商品名として、リタリンがあります。それと、徐放剤のコンサータがあります。
メチルフェニデートのDAやNE及び関連したシステムに対する働きは、コカインのDAやNE及び関連したシステムに対する動きと、全く同一といって間違いありません。

コカインはSERTに対する親和性が非常に高く、それに加えてVGSCリガンド(局所麻酔)として振る舞います。

メチルフェニデートは、SERTに対する親和性が非常に低くて、通常の量では5-HTに関与しないと言っても間違いではありません。
当然ですが、メチルフェニデートはVGSCリガンドとして作用しません。

つまり、コカインはSNDRI+VGSCリンガンドになります。メチルフェニデートは、NDRIとなります。

メチルフェニデート徐放剤について
メチルフェニデートはコカインと同様に、T1/2が非常に短いです。3時間前後ぐらいです。
コンサータはメチルフェニデートの徐放剤です。おおよそ12時間かけて、メチルフェニデートを放出していきます。

次に、アンフェタミンアナログについて書きます。
アンフェタミンは、もろにフェネチルアミン骨格に当てはめることができます。フェネチルアミンアナログになります。
フェネチルアミン及びアンフェタミンアナログの向精神薬は非常に種類が多く、用途も様々です。
ここでは主に、アンフェタミンとその直近物質について書いていきます。また、ここで言うアンフェタミン類とは、次に示すような物質のこととします。(カート系やバニロイド系統は除くこととします。メスカリンを含めた、2C-Xも除きます。)
具体的には、アンフェタミン、リスデキサフェタミン、メタンフェタミンについて書きます。

アンフェタミンは、メチルフェニデートやコカインと比べて守備範囲が非常に広い
です。
NDRIとしての作用はもちろんのこと、VMAT2からの放出促進も行います。NDRIなのですが、放出促進があることと、シナプス小胞の5-HTストア開放を行い、5-HTの放出促進も行います。
つまり、NDRIとも言えますが、SNDRAとも言えます。

上の方で、アンフェタミンはフェネチルアミンアナログと書きました。
予想できると思いますが、カテコールアミンも当然のことフェネチルアミンアナログと言えます。
つまり何を言いたいかと言えば、アンフェタミンは間接型交感神経作動薬となります。(間接型アドレナリン受容体の作動性です。)
ですので、NRIとしての作用も非常に強力です。

MAOIの有無
メチルフェニデートも高容量ではMAO阻害を示すとされていますが、18mgや27mgに36mgと言った量では、MAO阻害を気にする必要はありません。
それよりも、CYP2D6の互換を気にするべきです。

アンフェタミン類は低容量でもMAO阻害を示すどころか、むしろMAO阻害剤そのものと言えます。
そのため、併用にかなり気を使います。

通常は、アンフェタミンよりメチルフェニデートの方が好ましいです。

アンフェタミンの優れている点として、T1/2が長いことです。アンフェタミン-D体のT1/2は、おおよそ8時間前後とされています。
コカインやメチルフェニデートより、大体ですが4倍ぐらいT1/2が長いと言えます。

これから求められること
アンフェタミンやメチルフェニデートの様に優れたDRIを示しながらも、MAO阻害を示さない。また、循環器への影響も少ないこと。
加えて、依存性が低く神経毒性も低いこと。

センタナファジンの登場
センタナファジンは、コードネーム”EB-1020”として知られていました。
この物質を一言で説明するならば、SNDRIです。
コカインと同様に、トリプルRIでありながら、依存性が無い???とされています。
またセンタナファジンの類似薬では、神経痛の軽減も確認されています。

大塚製薬が、センタナファジンの開発と試験を進めています。

SNRIとの違い
デュロキセチン(商:サインバルタ)やベンラファキシン(商:イフェクサー)などが有名です。
日本で承認されているSNRIは、言ってしまえば「たかがSNRI」です。やはり、メチルフェニデートやアンフェタミンに比べると、かなり低力価と言えます。
またパロキセチン(商:パキシル)をはじめとした、SSRIについても同様です。コカインのSRI効果に比べると、「たかがSSRI」と言えます。

果たしてセンタナファジンがどれほど強力かつ安全なSNDRIなのか、非常に興味深く、期待も高いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?