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舞台ハリポタの泥臭さと身も蓋もない需要-3/19/24

舞台ハリポタの感想!

まず、見かけの演出と演技のすさまじさもさることながら、これを実現するためにかかるだろう時間と労力と工夫に思いを馳せ、気が遠くなった。


舞台演劇。
「壇上」という、時間の流れは一定で、単なる開けた空間で、さも物語が現在進行形で紡がれているように全身全霊で見せかける。
これを実現するための、途方もない努力に打ちひしがれる。

200分の間、演者たちは我々観客を、あらゆる手法を用いて物語の世界に没頭させようとしてくる。寸分の狂いもない舞台装置の設置・転換、シームレスに飛び回るキャストの台詞、それでいて一切の妥協のない鬼気迫る演技。これらの全てが、正気に戻ろうとする意識を阻み続けていた。私たちが魔法の世界に何らストレスなく没入させるために、いったいどれほどの時間と労力をかけたのだろうか。本当にすさまじい。

「壇上に魔法の世界を構築する」という額面上の目的を果たすために、プロジェクションマッピングという技術に頼りきろうと思えばできたはずだ。演者を一時ステージから捌けさせて、投影された映像の中に送り込む。その中であれば、ド迫力の魔法も空中浮遊も簡単に観客に見せることができる。
しかし、この作品はとことん「物理的な現実世界」にこだわる。映像技術を用いることは、舞台上で再現不可能な演出を実現できるメリット以上に、没入感を奪うデメリットが粒立つ。私の目には、最新の映像技術にあえてたよることなく、前時代的ともとれるような泥臭い舞台装置をもってできることを最大限しているように映った。

時代錯誤な泥臭さ。その美徳が花開くのを目撃出来て良かった。

あと、物語を分かりやすくしようという気概がなさそうだったのも面白かったな。

ハリポタの世界では、テンポ感のある登場人物たちの掛け合いと、間隙をぬうような魔法との緩急が見どころのように思う。つまり、キャラがわちゃわちゃ話して、魔法がフワッとすれば極論、満足できる。このある種身もふたもない需要を製作陣はきちんと引き受けている。

正直、私も人物間の関係や物語は良く分からない部分も多かった。みんなめちゃくちゃ早口だし、また舞台ではありあわせの装置で構築された抽象的な風景がためにどこで誰が何をしているのかを把捉するのに時間がかかることもある。だからこそ、とことん雰囲気と画の力でこれでもかというくらい満足させられてしまったので、

もう何も言えないのだ。


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