穂村弘についてメモ

短歌という形態に出会ってから、現代短歌の礎を築いたと名高い、穂村弘のことをずっと考えている。エッセイや対談集などの散文も精力的に出版されているようなので、歌集のみならずそっちにも足を延ばしてズバズバ読む。その最中。

短歌下さい→世界音痴→もうおうちにかえりましょう→本当はちがうんだ日記→世界中が夕焼け(read in progress)

第一歌集シンジケートが評価されて今や現代歌人の第一人者としてあらゆる舞台で活躍するエリート文化人の彼なのだが、その実、幼気かつ迷妄的かつ妖怪的な一面を持っている。
40代経理課課長なのに、独身実家暮らし。寝床で横になりながらスティックパンを食って粉を散らばす。女性の征服欲と性欲と破壊衝動のために伊達眼鏡をする。会社の飲み会やボウリング大会で不自然さが拭えず浮く。新幹線の自由席に座れない。ラブホテルで好きな漫画の台詞をささやき合って興奮する。

たまらない。キモすぎる。もっとくれ。

「私は女の子とキスをするとき、「好き?」と聞かれるのが嫌で、性欲だけのキスがしたいのだ・・・」

ああああああああ

「夜中に目が覚めてしまい、小腹がすいているような気がしたため、意識半分でふわふわと台所の冷蔵庫の前へ行き、はちみつを食パンにぬって食べようとする。ビンを傾けるが、はちみつがかたまり、うまく出てこない。カトラリー置場を暗闇の中手で漁り、スプーンを探すのだが、つかんだのはナイフだったため、ビンの中にナイフを差し込んで、表面にまとわせたはちみつを口に入れて、すぐにパンをかじる。結果的にはちみつパンになる。」

きもちいいいいいいいいいいいいい

彼のエッセイには、途中で妄想と現実の境目がゆるやかに消えていく瞬間がある。彼の陶酔が作り出した世界では、言葉は重力を失い、等身大の異化された彼の実感だけになる。それがとても心地いいのだ。

自身のことをマイナス星人だと自称している。ざっくりいうとこの現実にはりめぐらされたルールを内面化することなく生きている異邦人のことなのだが、いうなれば、そこでもちいられているのはマイナス語だろうか。自己へ向いた意識が排他的に作り出した世界にひたり、ふわふわと移動しながらパンを食べる音がする。ガツン。うまい!もっと落ち着いて食べればいいのに。

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