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「新型コロナの一斉休校を柔軟に対応したみそしる学校」(後編)| 思いを繋ぐおせっかいのバトンリレー

Community Nurse Company 株式会社の本社・拠点がある島根県雲南市。
雲南市では「元気になるおせっかい」を広げたいとの思いから、既にコミュニティナース的存在として活動しているまちの人を巻き込み、一緒に成果を出していきましょうとチームで動き出しています。医療職にこだわらず、お互いの強みを出し合いながら全力で議論する「地域おせっかい会議」から生まれるアクションとまちの人とのストーリーを「思いを繋ぐおせっかいのバトンリレー」として連載を始めます。

市民のおせっかいで一時預かりを実現!

2020年春。新型コロナ感染症対策による、小中学校の一斉休校。
雲南市内にも、学童保育を利用できず近くに子どもを預かれる親類もいないなどの理由で、親が安心して仕事に行くことが困難になる家庭もありました。
「なんとかしたい」と思う住民さんも多くいたものの、公共施設は「集会の自粛」を要請される中で、どこまでなら預かりをしてもよいのか判断が難しい一面がありました。
そんな中、Community Nurse Company株式会社の「みんなのお家」では、住民さんの「おせっかい」を主力にして、学童に行けない子どもの預かりに挑戦します。
正解は誰も分からない状況の中、手探りの取り組みはどのように進んで行ったのでしょうか。
かつて行なわれていた地域の取り組みにちなみ「味噌汁学校」と名付けられた預かり事業。今回はそれを支えた大学生ボランティアの2人に話を聞きました。

・小村優希(おむら・ゆうき) / トリニティカレッジ出雲医療福祉専門 こども保育学科2年
・井上敬介(いのうえ・けいすけ) / トリニティカレッジ出雲医療福祉専門 こども保育学科2年

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−−2人は今回どんなきっかけで「味噌汁学校」に関わることになったのですか?

小村:2月末に地域おせっかい会議の事務局である宮本さんに、休校期間中の子どもの預かりプロジェクトをするからボランティアで来て欲しい、とお話がありました。私も学校が休校になったので行くことにしましたが、最初は学童も閉鎖されてると聞いたので、預かりが殺到したら自分1人では無理だと思い、学校の友人にも声をかけて合計4人で関わりました。
井上:自分も声をかけられた1人で、まあ休校期間中やることないし、暇を持て余すくらいなら行こうかなと。(笑) とりあえず1日でも来て、と言われて行ってみたら、子ども達と外で遊ぶのも楽しくて、気がついたら通っていました。

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−−「みそしる学校」では、何人の子ども達とどのような過ごし方をしたんですか?

井上:預かりを利用していた子どもは小学1年〜4年と、関係者の未就学児も2〜3人。その子達が毎日全員来るわけではなく、多い時で1日4〜5人を見ていました。
小村:私は近所なので9時、出雲に住む人は10時に来るようにしてて、朝の会は10時、お迎えは14時というスケジュールでした。ただ預かり自体は早い子は7時には来るので、それには宮本さんが対応してくれていました。
 基本的には私は毎日、ほかの子はバイトなどの予定に合わせて来てくれていたので、新しく決まったルールなどはSNS(インターネットを使ったコミュニケーション手段)で連絡するようにして情報共有もしていました。最初は実習みたいに関わるつもりが、だんだん自分たちでも積極的に時間配分やルールの提案などをするようになっていったんです。
 子どもの様子からその都度考えて、小学生が勉強している横では幼児も動き回らせるより鉛筆もたせて絵を描こうとか、小学生達も勉強苦戦してるところに碁石を使って算数を教えようとか。そうすると子ども達の性格や好きなことも分かってくるので、それで遊びも変えてみたりしました。

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−−よく考えたら2人は保育を学ぶ学生で未就学児が専門なのに、今回は小学生の預かりがメインだったんですね。それでもやろうと思ったのはなぜですか?

小村:私のモチベーションとしては、保育士として未就学児の発達を支えるために、小学生と関わりながら発達のつながりをイメージできればと思いました。けど年齢関係なく子どもと遊ぶのは好きだし、特に知り合いの子どもさんもいたので、それなら丸ごと楽しめるなあと。
井上:自分はもう初めから学童の感覚で来ていたので、逆にイレギュラーで発生する赤ちゃんの沐浴とかが、初めての経験でちょっと怖かったり。
小村:一緒に来ていた女の子は、子ども達だけでなく自分たちも童心に帰って遊べて楽しかったし、授業よりも実践で学べて楽しかった、やってよかったと言っていました。なので、休校で休んでる人よりやたら経験値上がったよね、というのも関わってた4人の中でのモチベーションだったと思います。

−−関わる中で、印象に残っている出来事はありますか?

井上:近くの小学校の裏山に登った帰りに、道路の脇を歩くのに列がかなり長くなっていたんです。そこで「カバディって知ってる?」と手をつなぐスポーツの話をすると、面白がって手をつないでくれて。 だから車が来ても「カバディ」っていうと子ども達がすぐ反応して、手をつないでくれるようになったんです。

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−−安全のためのルールを楽しみながらみんなで身につけることができたんですね。そういう工夫も実践から編み出していったんですね。

井上:「味噌汁学校」を通じて自分の経験値もあがったり、子ども達も一人一人性格が違う中で自分もどう関わるべきか真剣に考えたり。けどとにかく子どもが楽しんでくれれば一番だな、という意識になれたのが大きいなと思います。

−−この「味噌汁学校」をするうえで、2人にとって欠かせなかったと思うおせっかいはなんですか?

小村:地域おせっかい会議のメンバーさんを通じて集まってきた食材と、それを美味しく料理してくれた地域の方の存在です。番子さんや地域ボランティアさんが食事の用意をしてくれたからこそ、自分たちはお昼ご飯のことを気にせず遊ぶだけ遊んで、子どもを見ることに集中できました。

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−−地域の人と子どもを育てる経験をしたことで、二人にはどんな気づきがありましたか?

小村:地域の中で子どもが育ち、色々な人にお世話になることで、子どもがちょっとずつ変わっていった様子をみました。
井上:お行儀とかよくなっていったよね。
小村:そうなの。それを見て、自分たちのやりたいことはこれだ!と気づきました。子ども一人ひとりの個性に寄り添って、地域のみんなで子どもを育てたいです。
自分たちの理想としては、地域のおじいちゃんおばあちゃんにも関わってもらいたいです。例えば、寝かしつけの時間だけやってくる寝かしつけ名人とかいてもいいなあ。とにかく地域の人とも一緒に子どもを育てたいなと思いました。

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−−関わる大学生も大きく成長させた「味噌汁学校」、実際に子どもを預けた保護者さんにとってはどうだったのでしょうか?三新塔交流センターの荒木さんに改めてたずねました。

荒木:私の周りの保護者さんは、すごくよかったと喜んでおられました。帰ってきた子どもが、普段家だとできない料理とかもさせてもらったと喜んでいたりしたそうです。また、ひとり親家庭の子どもさんで、普段は1人で家にいるので大人に優しくしてもらえたことが嬉しかったようだ、という感想もききました。とにかくみなさん「紹介してもらえてよかったよ」と声をかけてくださり、私も嬉しかったです。
 わたしも交流センターで働きながら、あの時何かできることはないかと考えていました。けど公共施設という性質上、感染防止対策との兼ね合いを考えると、どうしても動きがとりづらい部分がありました。だから子どもを預けた保護者さんの話を聞いて「自分は直接できなかったけど、よかったな」と心から思えました。今回改めて思ったのは、地域おせっかい会議のように「何か言えば実現できるかも」と思える場所があることの大切さ。言えば何か形になるかもと、あきらめずに声を上げることが何より大事だと思いました。

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「みんなのお家」は別名を「雲南ラーニングセンター」と言い、実践を通じた学び合いの場という意味も込められています。一斉休校という経験のない状況から生まれたお困りを、地域おせっかい会議のつながりも通じてパスを出し合い実現した「味噌汁学校」。そこではまさに、教科書にはない実践を通じた学びが世代を超えて起きていました。
 1人ではどうしていいかわからないお困りも、みんなの知恵を合わせればおせっかいできるかも。地域おせっかい会議ではこれからも、一人一人のつぶやきとおせっかいをお待ちしています。

ライター 平井ゆか


まちの中で、心と身体の健康を願って活動している人を私たちは「コミュニティナース」と呼んでいます。
誰かを喜ばせたい、元気にしたいと願うあなたの思いと行動の第一歩として、全国のコミュニティナースが集うオンラインコミュニティ「コミュニティナース研究所」へご参加ください。
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