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「椿屋四重奏一夜限りの再結成」が見たいというミーハー心でアーカイブを買った中田裕二のライブ『ALL THE TWILIGHT WANDERERS』がめちゃくちゃ良かった

中田裕二の出会い

私が中田裕二の楽曲を初めて聴いたのは、2013年8月のことだった。
当時よく閲覧していたrockin'on.comで、「今週公開された主要邦楽MVまとめ」のような記事が毎週公開されており、その記事で紹介されていたのがMIDNIGHT FLYERのMVだった。

MIDNIGHT FLYERに衝撃を受けた私は、それから椿屋四重奏を含む中田裕二の楽曲をさかのぼって聴いていった。
もちろん新曲もチェックしていたのだが、いい意味で彼の音楽性の幅が広がっていったこともあり、私の嗜好にヒットしない楽曲もだんだんと増えていった。
そんなこともあり私は結局、中田裕二の活動を追ったり追わなかったりする中途半端なリスナーになっていた。

そして昨年春、私は社会人になった。
生活スタイルの大幅な変化と、それによる趣味につぎ込む気力の減少により、熱心に聴いていたミュージシャン以外の活動を追うことがしんどくなってきた。
そして大変恐縮ながら中田裕二は、私の”熱心に聴いていたミュージシャン”に含まれていなかった。

時は流れ2021年春。

私の好きなミュージシャンが本当にたくさん参加するということもあり、今回のスペシャルライブの存在は事前に知っていた。
ライブ配信もあるということで一瞬食指が動きかけたが、私の中の中田裕二は『ランナー』『幻を突き止めて』あたりで止まっていたこともあり、結局購入するまでには至っていなかった。

そして、4月17日の夜。
ふとTwitterを開くと、トレンドに”椿屋四重奏”という単語を観測した。
「もしや…!」その”もしや”だった。
スペシャルライブで、椿屋四重奏が一夜限りの復活を果たしたのである。
「確かこのライブ、アーカイブ配信あった!!」
完全なるミーハー心でアーカイブのチケットを購入し、翌日夕方にライブを視聴した。

贅沢なメンバー編成

このライブは、弾き語り→アコースティック3人編成→バンド編成→弾き語りと、演奏形態を変えながら進んでいった。
またひとえにバンド編成と言っても、楽曲によって参加メンバーが細かく変わっていき、スリーピースから12人編成まで、非常に幅が広いものとなっていた。
つまりは、中田裕二の楽曲を今できうる限りの最適なメンバー編成で聴くことができるのである。
これほどまでに贅沢なライブはない。

久々に聴いた楽曲たち

今回のライブで久々に聴いた楽曲も多かったのだが、良さを再認識したり、昔刺さらなかった楽曲の良さが分かるようになったりと、新たな発見が多かった。

セットリスト2曲目の『リバースのカード』は本当に久々に聴いたのだが、アコースティックアレンジの妙もあり、改めてすごく好きな曲だなあと強く実感した。

『薄紅』はリリース当時あまり良さが分からず、1度MVを見たきり聴いていなかったのだが、今回のライブで聴いて「え、めちゃくちゃいい曲じゃん…」と、驚きにも似た感動を覚えた。

高校生だったリリース当時と現在で、私の音楽の趣味も少しずつ変化しているのだと思う。

中盤の個人的ハイライトは、「猛烈にエロいR&B」(本人MCより)こと『Deeper』。

平泉光司(Gt)、千ヶ崎学(B)、小松シゲル(Dr)、sugarbeans(Key)、カトウタロウ(Cho)という私の好きなミュージシャン詰め合わせハッピーセットのような編成で大好きな楽曲を聴けて、心の底からうれしかった。
ちなみに『Deeper』は、ちがちゃんも渾身の演奏だったっぽい。

ここ1,2年の楽曲が素晴らしい!!

中盤〜後半にかけては、私が離れていたここ1,2年の楽曲が多く披露された。
これが「なんで私は最近中田裕二の活動を追っていなかったんだ…」と強く後悔するほど、名曲ばかりなのである。

『DOUBLE STANDARD』や『ゼロ』など挙げればキリがないのだが、特に好きだったのは新曲の『DIVERS』!

イントロが鳴った瞬間に、「私この曲絶対好きいいいいいいい!」と、部屋で絶叫してしまうぐらい、個人的に琴線に触れる楽曲だった。マジで配信で見ていて良かった。現地にこんなオタクがいたら迷惑過ぎる。

本編終盤のブチ上げセトリ

本編終盤は、見ていて本当にひたすら楽しかった。
だって、『灰の夢』→『STONEFLOWER』→『UNDO』→『ユートピア』だよ!ひたすら楽しいに決まっている!!
その証拠に、『DIVERS』あたりから文体が少し砕けてきている!笑

そして、本編ラストに披露されたのは『誘惑』。
冒頭のアカペラコーラスワークが本当にきれいで、今回のライブ中で一二を争ういいアレンジだと感じた。

椿屋四重奏、一夜限りの再結成

そして、アンコール。
チケットを買った当初の目的である、椿屋の演奏が始まった。

暗闇から流れ出す『群青』のイントロ。

本編ラストの『誘惑』がアコギ、エレキギター、ベース、ドラム、キーボード、コーラス、パーカッションという7人編成で演奏されたのに対し、椿屋はスリーピース。
その対比も相まって、半数以下の人数で鳴らされるストレートなロックに、ただただ圧倒された。
配信ライブを見て、鳥肌が立ったのはこれが初めてだったと思う。

照れの混じった演者紹介からMC。
中田さんの雰囲気がなんだかこれまでと明確に違いより柔和で、バンドメンバーというものは解散から10年が経ってもある種特別な存在なんだろうなあと感じた。

そして「それが、僕らの成れの果てです」というMCから間髪を入れずに演奏されたのは、『成れの果て』。

数多くの椿屋楽曲の中からこの2曲を厳選するセンスの良さ。
ソロ楽曲では頻度が減ってきている、"ギター、ベース、ドラムのシンプルなロック"という、バンドの魅力を大いに感じられる選曲だったと思う。

もちろん「ソロでもよく披露している『恋わずらい』を、本家・椿屋の演奏で聴きたかった」「一番好きな『CRAZY ABOUT YOU』を聴きたかった」などなど、聴きたい曲を挙げれば本当にキリがなくなる。
しかし、2曲だけでも、令和に椿屋四重奏の演奏を聴けたことを、心から幸せに思う。

多幸感あふれるラスト2曲

椿屋の”同窓会”の後に披露されたのは、ツインギター、トリプルベース、ツインドラム、ツインキーボード、パーカッション、コーラスという12人編成での『MIDNIGHT FLYER』。
この12人の中には、たかしげさんと良ちんもいた。
私が中田裕二と出会ったきっかけの楽曲を、椿屋のメンバーが演奏しているという事実に、思わず涙がこぼれそうになった。
だがそんな時、ラスサビで演奏を放棄して上手から下手に大移動し、タンバリンを片手に踊り狂う佐藤友亮の姿を見て涙がふっとんだ。(sugarbeansを本名呼び捨てにすな。)
最後のメンバー紹介で、「あなたそんなところにいたんですか…」とギター2人にびっくりされるシュガビンさん…笑。

最後は中田さんの弾き語りで、最新曲『TWILIGHT WANDERERS』を披露。

ソロ一発目の楽曲『ひかりのまち』の弾き語りでライブを始め、最新曲『TWILIGHT WANDERERS』の弾き語りでライブを終える。
ソロ10周年を記念したライブとして、非常に美しい構成だった。

今まで一番ライブ配信というシステムに感謝した

”椿屋一夜限りの再結成”という歴史的瞬間を後追いながら体感することができ、アーカイブ付きのライブ配信というシステムには本当に感謝している。

今回のライブは4月25日の21時まで配信チケットが販売されているので、一度でも椿屋、中田裕二の音楽を通ったことがある人はぜひ見てほしい。
昨夜Twitter上で「椿屋の再結成見たかったー」「うらやましい〜」という投稿をよく見たのだが、今なら4000円払えば椿屋の再結成が見られるのである!!!

また今回のライブを視聴して私の中に生まれたのは、「椿屋の再結成が見られて良かった」という感情だけではない。
「しばらく聴いていなかったけど、中田裕二のソロ楽曲めちゃくちゃ良くないか?」という感情である。

文章を書くのが好きということもあり、note以前やっていたブログを含め、私はそこそこの本数のライブレポを書いてきた。
しかし配信ライブの感想を長文で書いたのは、これが初めてである。
配信ライブは、スマホ片手にTwitterで実況しながら見るという楽しみ方もできるため、なかなか腰を落ち着けて長文の感想を書こうという気にはならなかった。

私は驚いている。
初めての配信ライブのレポートが、まさかこれまで中途半端にしか聴いてこなかった中田裕二のライブになるとは…。
それだけ、今回のライブを見て感じることが多かったということである。

多分これから私は、中途半端ではない、中田裕二の熱心なリスナーになっていることだろう。



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