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推し芸人なんてもうできないはずだったのに、気が付いたら「や団」のファンになっていた

「推しの芸人」という概念とは、割と無縁のお笑いオタク生活を送ってきた。

「や団」の「や」の字も出てこない長過ぎる前置き

東京、大阪へ出張があるたびに、かまいたちが出演するライブを探しては見に行く父親と、現住地の広島から大阪まで平気でライブ遠征するニッポンの社長辻さんの顔ファンである母親という、異常な両親の元で生まれ育った私は、物心がつく前からネタ番組をたくさん見て育った。
そして当然ながら、お笑いが大好きになった。

中学生の頃にお笑いナタリーでK-PRO発のユニット「FKD48」のライブレポを読んで以降は、テレビ番組だけでなく「お笑いライブ」というものに憧れを抱くようになった。

さすがに未成年だった当時はライブ遠征ができなかったので、地元で行われる営業ライブや、数カ月に1回行われる広島よしもとのライブを見に行くようになった。
ナタリーの記事で読んだようなライブとは趣向が違ったものの、

  • 東京03角田さんが登場するなり「広島082~~!!!」と絶叫

  • 会場の2列目がバイきんぐ西村さんの親族で全員埋まる

  • 隣の席のおばさまが、天津向さんのお母さまだった

といった、営業は営業で地方でしか体験できないようなことがたくさんあり、それはそれで面白かった。

その後念願かなって東京の大学に合格し、2016年に私は田舎から上京した。
お笑いライブにすぐ行けるような環境になったものの、頻繁にライブ通うようなお笑いオタクにはならなかった。
大学1~3年生の3年間、東京で見たお笑いライブ(落語やラジオ関連を除く)を整理してみた。

2017/2/10 タイタンライブ
2017/4/15 コマンダンテ 単独ライブ「どーもコマンダンテです。上京してきました。ほんとかな?ほんとだよ。」
2017/5/5 すいているのに相席5
2018/6/12 FKDZ 11th 本公演〜再発〜
2019/2/22 CCC月例公演 テアトロコント Vol.33(マツモトクラブ、わっしょいハウス、劇団かもめんたる、ザ・ギース)

今自分でも愕然としている。3年間で5本。少な!!!
正確にはラフターナイトやお笑い遊楽城の公開録音などには定期的に行っていたので、もう少し生でお笑いに触れる機会はあったのだが、「お笑いライブ」というくくりとは少し違う気がしたので除いた。

ちなみに、2020年にUターン就職して広島に戻ったのだが、これまでの2年半で見たお笑いライブは、23本(落語とライブビューイングを除く)だった。
もちろん、東京や大阪で劇場通いしている方々には全くかなわないが、コロナ禍の地方住みにしてはまあまあな数のライブに行っていると思う。

これには理由がある。
私には後述の半年間を除き、「好きな芸人」「推しの芸人」という存在がいなかった。
(FKDメンバーのことはみんな大好きだったが、いわゆる「箱推し」で、特定の芸人を応援しているわけではなかった。)
賞レースとネタ番組をフラットな目線で見るのがとにかく好きなお笑いオタクで、特定の芸人を熱心に応援するという楽しみ方をしていなかったのである。

地方はお笑いライブの母数が少ない。
だから、近所でお笑いライブが開催されれば、日程さえ合えば誰彼構わず、とりあえず見に行っていた。
一方で、東京は毎日かなりの数のお笑いライブが開催されている。
「推しの芸人」がいなかった私には、「行きたいライブ」の取捨選択ができなかったのである。

大学4年生の半年間だけ、「推しの芸人」がいたことがあった。
就活の合間をぬって、その漫才師が出演するライブに足しげく通った。
だが結局、その生活は半年間で終わりを迎えた。
毎回ライブにいる古参ファンの人と馬が合わなかったり、出待ちしてナンボという文化が個人的に性に合わなかったりと、理由はいくつかあるのだが、あまり面白い思い出ではないので、詳しい言及は避けておく。

そんなこともあって、特定の芸人を応援するというスタンスは、自分には合っていないのだと痛感した。

チョゲパをきっかけに本間さんを知る

いろいろあって2020年秋頃から競馬ガチ勢になってしまった私は、「ウイニング競馬」でオンバト+以来久々にキャプテン渡辺さんのお姿を拝見した。

視聴者にお笑いファンがあまりいないことを逆手に取り(?)、モンスターエンジンの「神々の遊び」やEverybodyの「クリティカルヒット」など、吉本の後輩のネタを平気でパクる(褒めています)(最近はあんまりやっていません)姿などが、なんだかほほえましかった。
気が付くと私は、在宅の範囲内でキャプテンのお笑い仕事をチェックするようになっていた。

キャプテンの数少ないお笑い仕事(誰かキャプテンにお笑いの仕事を恵んでください)のうちの一つが、ハリウッドザコシショウのラジオ「逆襲ザコシのチョゲチョゲPARK」のアシスタントであった。
そして、キャプテンとセットでアシスタントに呼ばれることが多かったのが、婚活二銃士としてキャプテンと一緒に合コンにいそしんでいたや団本間キッドさんであった。

や団。トリオのコント師であることはさすがに知っていたし、なんなら東京在住時代に見た「すいているのに相席5」で、私は本間さんのことを生で見ていたらしい。
(当時はライブの感想をTwitterやnoteに残す習慣がなかった。
そのため相席5に関しては、いまだにファンや演者からかなりの高評価を得ている「松平健さんがマツケンサンバの振りの練習中に保険証をなくす」コントしか、残念ながら記憶に残っていない……。)

婚活二銃士回はシショウの真面目なトークを引き出してくれるという印象があり、毎週アシスタントが変わるチョゲパの中でも、私はこのタッグを特に推していた。
そして、合コンがうまくいなかった話や、大喜利ライブで滑りまくった話、まさかのプロレスのトークライブでしばらく無言だった話(失敗エピソードばかり挙げて申し訳ない)などを通じて、本間さんに対しても親しみを感じるようになっていった。

婚活二銃士のことが好きになってから、初めてや団のネタを見る機会があったのが、にちようチャップリンだった。
この時は多分、眼鏡営業のネタをやっていた。

次にネタを見る機会があったのは、昨年のツギクル芸人グランプリだった。

や団関連の初ツイート
鍵垢の方でのツイートだったので、スクショで

同じブロックの金の国が圧倒的だったのは事実なものの、や団が披露した工場のネタが個人的にすごく好きで、上記のようなツイートを残していた。

や団が今年のKOCで決勝進出を決めたことを知った際には、私程度の熱量でこんなことを感じて申し訳ないとは思ったが、「や団がやっと報われた……!」と、かなり胸が熱くなった。

毎週楽しく聴いている、TBSラジオ「爆笑問題の日曜サンデー」内の「サンデー芸人ランキング」にや団が出演した際も、かなりうれしかった。

私自身2カ月経った今でも結構しっかり内容を覚えており、かなり面白かった印象がある。
公式のアーカイブがないのが惜しいが、番組ブログやロングさんのブログでそこそこ雰囲気がつかめるので、ぜひ読んでほしい。

KOC

そんなこんなで、や団についてはネタを3本だけ知っている状態でKOC当日を迎えた。

そんな状態でまたまた恐縮ではあるが、OPのラップでは、ガガさんのストレートなリリックと、あえてのシンプルなワンカット映像にグッときてしまい、若干泣いてしまった。
この時点で既に、私はや団に惹かれ始めていたのかもしれない。

KOCで見た2本のコントは、両方とも本当に本当に面白かった。
そして何より、MC席でやり切った表情を見せる3人の姿が、とてもとても輝いて見えた。
これまで何度もや団との接点があったはずなのに、結局ネタは3本しか知らず、GERAのラジオも聞かずにKOC当日を迎えてしまったことを、私は激しく後悔した。

怒涛のラジオ出演

KOC前後のや団は、ラジオのお仕事が多く入っていた。
(本間さんは、おじさんで見た目が汚いからと自虐していた。)

冠番組であるや団のゲラスぺはもちろん、
bayfmのKUSUKUSU

ウラみゅじ
(今現在もPodcastで聴ける。
界隈で話題になっている、湘南少女の撮影裏話とかもしている。)

ナイツ ザ・ラジオショー

大竹まことゴールデンラジオ
(今現在もPodcastで聴ける)

今思い出せる限りでも、これだけある。
私自身ラジオが好きということもあり、ラジオを通じてや団のことがどんどん好きになっていった。

や団の魅力

気が付くと私は、メンバーのSNSをフォローし、YouTubeをチャンネル登録し、メディア出演配信があるライブをチェックし、最終的にはや団のゲラスぺのスポンサー権利を購入していた。
Twitterでは毎日のようにや団や団とつぶやいているし、こんな長文noteまで書き上げてしまった。

ネタが強い

KOCで3位になったのだから当然ではあるが、や団のコントはどれも面白かった。

特に、マディソンライブでかけていた「未来から来た?男」は、YouTubeにアップされているものよりもさらにパワーアップしていて、特にお気に入りのネタだ。

また、単独ライブの告知シリーズは、1本数十秒でサクッと見られるのでおすすめである。
どのショートネタもレベルが高くて感嘆すると共に、肝心の告知すべき単独ライブの日程が数日前まで間違っていたのが、さらに面白みを増していた。

三者三様の個性

また、メンバー3人の個性が三者三様であることも、魅力に感じている。

まずロングさん。
KOC前は、同居していたドカピカさんとしゃれにならないぐらい関係が悪化してしまったこと、カーボーイリスナーであること、程度の情報しか知らなかった。
いろんなコントを見てまず思ったのは、方々でも言われている通り、演技力がずば抜けて高いということ。

特にこのショートネタの顔芸には、かなり笑わされた。

そして、なかしさん。
KOC前まで、チョゲパでしかや団に関する情報を得ていなかったので、個人的になかしさんが一番謎な存在だった。
さすがにラーメンが好きなことはなんとなく知っていたが、まさか1泊2日の山形ラーメン遠征で14杯も平らげる激ヤバな人とは、つゆにも思っていなかった。

「ハナコの菊田が菊田である前から、自分は菊田ポジションだった」と、なかしさんが自虐的におっしゃっているのを耳にしたことがある。
だが、そんなことを言う割にはネタの分析力がすさまじくて、最近の私はどんどんなかしさんへの関心が深まっていっている。

中嶋 僕は決勝の3組を見ててネタがハッキリ分かれてるなって思ったのが、コットンはリアリティからリアリティ、ビスブラはフィクションからフィクションに、僕らはリアリティからフィクションの世界に行くなと思って、だから好みが分かれるというか。

や団(後編)──這い上がりつづけて勝ち獲った「誰かにとってのナンバー1」

あと、芸人としてのお仕事も増え、いまだにラーメン屋のホールにも週2で入っている中、Twitter、インスタ、個人YouTubeへのコメントにこまめに返信しているのが、なにげにめちゃくちゃすごいと思う。

そして、本間さん。
KOC前の私とや団との接点は、ツギクル芸人とチャップリンを除くと、本間さん絡みのものばかりだった。

毎日ギャグラリーのことしか考えられないぐらい追いつめられて、原因不明の高熱が出たりして。
知恵熱ですよ。
で、本番は、死にものぐるいですよね。
ウケてるのかウケてないのかわかんないくらい頭真っ白で、終わったら、楽屋で吉本の芸人さんたちがバーッて拍手してくれて「よかったよ」って。
一個一個、結果が出るように頑張ってやってたら……今っていう感じです。

「2SEE MORE #10」ゲスト:本間キッド(や団)

突き抜けた要因はネタ作り担当、本間キッドの情熱が大きい。
いつも前向きで、いろんな人に意見を聞いてはネタを磨き上げていく。
芸人は売れないまま年を重ねることがつらく、このまま売れなかったら最低な人生だと考えてしまう。
ところが本間は今年で40歳なのに、全くそんなところがない。

【劇場びーちぶの怪人 #6完】コントで飛躍「や団」 飛び抜けた脚本力と演技力

トリオのブレーンとしてネタを書き続け、シショウ、バッファロー吾郎A先生、せきしろさんなど、そうそうたる実力者に認められた本間さん。
私はそんな努力家の本間さんが、本当に本当に大好きだ。

最後に

今は、着々と増えていくや団のメディア出演を追いかけるのが、日々の何よりの楽しみになっている。

一方で、地方住みの社会人のため、なかなかライブで生のや団を見る機会がなく、やりきれない気持ちになることも多い(単独行きたかった……)。
それでも、たまたま上京のタイミングが合って「や団定食」を現地まで見に行けそうだったり、2月には早坂営業で広島に来てくれたりするので、まだ恵まれている方なのだと思う。

KOCチャンピオンになっても、副業でカレー屋を始める芸人がいれば、現場のおじさんの怒声を浴びながら演劇公演のバラシを自分たちで行う芸人もいるし、お笑いの世界で生き抜くことは、なかなか難しいものだなと、素人ながらにも感じる。
それでもや団の3人なら、この厳しいお笑いの世界でもっと飛躍してくれるであろうと、私は信じている。

特定の芸人を応援するというスタンスは、自分には合っていないのだと痛感した昔の私へ。
推しの芸人がいる生活も、結構楽しいよ。

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