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【感想】映画『私はいったい、何と闘っているのか』を観て2回泣いてしまった

2021年の映画納めをしてきた。
観てきたのは、『私はいったい、何と闘っているのか』。
つぶやきシローさんの同名小説が原作の邦画。
早速以下に感想を記していこうと思う。
※ネタバレありのため、ご注意を…!


キャスト陣の名演

ストーリーそのものに触れる前に、気になったキャスト陣の演技について言及したいと思う。

まずは、ファーストサマーウイカ。
しばらく高井役が彼女だと全然気づかなかった。
というか、事前情報で彼女が出演していることを知っていなかったら、最後まで気づかなかったかもしれない…。
髪色、髪型、メイクで人の印象はこんなにも変わるのかと感嘆しつつ、バラエティーでのイメージとは正反対の役を演じていたので、その振り幅に感動した。

次いで、KEMURIの伊藤ふみおさん。
いーーーや、かっこいいなーーー!!!!(語彙力)
グレイヘアが似合う似合う。
イケオジとはこういう人のことを指すんだろうなあと、改めて実感した。
年を重ねた色男の役が本当にハマり役だった。

あとは、長男役の小山春朋くん。
生意気と言えば生意気なのだけれど、全く憎めなくて、愛らしい男子小学生がピッタリ。
誰にも出せない個性とは、こういうことを言うのだろうなと感じた。

共感性羞恥が発動

この映画には「共感度120%!!」というキャッチコピーが付けられているが、私はとあるシーンで共感性羞恥を発動してしまった。
それは、娘の小梅が結婚相手を家に連れてくるシーンである。
主人公・春男のかっこつけた妄想、そしてその妄想と対比するかのように、どんどんかっこ悪いかたちで進んでいく現実のあいさつ…。
しんど過ぎて、あやうく映画館で発狂しそうになってしまった。

つぶやきシローらしい笑い

つぶやきシローさんの同名小説が原作ということもあり、「いかにも、つぶやきシローらしいなあ」と感じるシーンが作中何度もあった。
作中に何度も出てくる妄想や独り言のシーンはまさにそうだし、春男のセリフの言い回しにもつぶやきシローらしさを感じた。

極めつけは、小梅の結婚相手の苗字が梅垣で、『結婚したら「梅垣小梅」になるぞ。オセロだったら『梅梅梅梅』になるぞ』というモノローグ。
これは完全につぶやきシローのネタだった。

人生は空回りの連続

先に記した結婚のあいさつのシーン以外にも、作中では春男が良かれと思ったやったことが、裏目に出てしまうという場面が何度も描かれる。

中でも一番のヒューマンエラーは、パートの内引きを本部に報告せず、個人的に見張るというかたちで対処したこと。
結果的にそのパートは、春男の監視が精神的ストレスとなって退職し、春男自身は別店舗への異動を命じられる。
春男の「やさしさ」が裏目に出てしまうという人物像を最も象徴的に描いているこのシーンは、見ていてとても心が苦しくなった。

春男のすごいところは、「何をやってもうまくいかない」というしんどい日々が続いても、決して自分だけが不幸だと思わないところである。
私自身も春男と近しい性格をしているのだが、しんどい思いをした際には「どうして私ばっかり、こんなにつらい思いをしなければならないのだろう」と、つい思ってしまう。

しかし、春男は受難の日々が続いても「人生はうまくいかない人の方が大多数だ」と、決して自分1人が不幸だという思考に陥らない。
人はつらい経験をすると、どうしても独りよがりになってしまいがちだと思う。
しかし春男は、うまくいかない自分の人生を、悪い意味ではなく「自分の人生こんなものだ」と肯定している。
理想通りの人生を送ることができなくても決して他人のせいにせず、他人をねたむこともなく、「どうして自分ばっかり…」と不平不満を対外的に出すこともない。
そんな春男の強さを、私は見習っていきたいと思った。

泣いたシーン

この映画を見て、私は2回泣いてしまった。

1回目は、春男が行きつけの食堂で「スターの影ではそれを支えてくれる人がいる。どうしてみんなそれに気づいてくれないんだろう」といったことを愚痴る場面。
普段不平不満を口に出すことがない春男が、つい食堂のおばちゃんに本音をもらしてしまう。
「自分1人だけが不幸だ」という考え方を決してしてこなかった春男が、今までになく追い詰められているんだなという事実、そして追い詰められた春男が口にした共感性のある言葉に、図らずも涙がこぼれてしまった。

そしてそんな春男の言葉が、クライマックスで「地味な五家宝が好き」と言う奥さん・律子の言葉で肯定される。
影で頑張っている春男の努力を、律子だけはちゃんと見て、分かってくれていたのである。

2回目は、現職場での最後の出勤日に、高井から色紙を渡されるシーン。
色紙には、「努力をしても報われない奴はいる。ただ成功した奴は必ず努力をしている。」という長州力の名言が書かれていた。

春男の努力は報われてこなかった。
今後報われるかどうかも分からない。
それでも、これからも努力を辞めないでほしい。

この色紙には、そばで春男の奮闘を見てきた高井からのそんなメッセージが込められているように感じた。
影でずっと頑張ってきた春男に、職場では高井、私生活では律子という救いの存在がいた。
その事実に、思わずまた涙があふれてきた。

多幸感のあるエンドロール

エンドロールも素晴らしかった。

主題歌の『今すぐアナタを愛したい』は、明るくてファンキーで、別店舗で奮起する春男のことを鼓舞するような多幸感のある曲だなと感じた。
またクレジットと共に、作中に出てきたプロップのイラストが流れる凝った演出も気に入っている。

最後に

個人的に、この作品は前々から観ようと楽しみにしていたものではなかった。
毎週聴いているTBSラジオの『爆笑問題の日曜サンデー』内のコーナー『サンデー芸人ランキング』に、映画の番宣も兼ねてつぶやきシローさんが出演しており、ちょっと気になったのでなんとなく軽い気持ちで観に行ったのである。
私とこの作品を出合わせてくれた日曜サンデーに、感謝したい。

今年映画館で見た映画は10本。
来年は、月1ペースぐらいで映画館に足を運びたいなと思う。


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