アサマノイタズラと、嶋田純次騎手と。
私の名前は不健康運動。
競馬歴は1年弱のひよっこ。
好きな馬は、乗り替わりの少ない馬である。
競馬を好きになったきっかけは、2020年天皇賞(秋)のアーモンドアイ。
一番好きな馬は、ウインブライト。
2021年9月20日現在の好きな現役競走馬は、カジノフォンテン、スマイルカナ、ソダシ、ハギノピリナ、ロバートソンキー。
もう一度言おう。
好きな馬は、乗り替わりの少ない馬である。
なぜ乗り替わりの少ない馬が好きなのか。
それは、ルメール騎手のアーモンドアイに対する深い愛、松岡騎手とウインブライトのこれぞ"人馬一体"というレースを目の当たりにして、競馬を好きになったから。
私は他のスポーツではまず見られない"動物と人間のコンビ感"を求めて、競馬を見ていると言える。
上記に挙げなかった馬で、一頭とても応援している馬がいた。
それが、アサマノイタズラだった。
本腰を入れて応援するようになったきっかけは、ネット上で話題になった平松さとしさんの記事を読んでから。
「でき過ぎた美談」と忌避する人もいるかもいるとは思うが、私は基本的にこの手の美談に弱い。
またこの記事で初めて嶋田純次騎手のお顔を拝見したのだが、顔が死ぬほど好みだった(最悪の理由)。
つまりはネット記事と鞍上の顔面という、どうしようもない理由で、皐月賞とラジオNIKKEI賞でアサマノイタズラの応援馬券を買うまでになったのである。
"人馬一体"の競馬が好きなこともあってか、私は騎手批判があまり好きではない。
どこかの知らない誰かが騎手批判をしている分には別に構わないのであるが、騎手批判を自分の目に入れたくないのである。
そんな私も、ラジオNIKKEI賞でのアサマノイタズラの騎乗を見た際には、「こ、これは…次走乗り替わりかな…」という気持ちにならざるを得なかった。
そして案の定、ネット上では嶋田騎手の騎乗ぶりを批判する声が相次いでいた。
アサマノイタズラの次走は、菊花賞トライアルであるセントライト記念。
その鞍上に、嶋田騎手はいなかった。
覚悟は十分にしていたが、嶋田騎手の名前がない出馬表を見るのは悲しかった。
好きになったきっかけこそ、お世辞にも胸を張れるものではなかった。
それでもスポーツ紙の報道を追いかけていくうちに、アサマノイタズラと嶋田騎手とのコンビが心から好きになっていた。
皐月賞、ラジオNIKKEI賞と、アサマノイタズラの応援馬券を買ってきた。
でも今回は、応援馬券を買う気分にはなれなかった。
買い目から、アサマノイタズラを外そうとも思った。
田辺騎手がうまく乗れなかったら、もしかしたら、鞍上が嶋田騎手に戻るかもしない。
そんなよろしくない感情を抱きかけたこともあった。
でも、もし、ここで好走できなかったら、ラジオNIKKEI賞まで付きっ切りでアサマノイタズラを調教してきた嶋田騎手の努力までも、泡と消えてしまうんだ。
そんな複雑な心境に折り合いをつけた末、私は2,5,7枠の枠連BOXを買った。
アサマノイタズラの2枠に、2頭ともそこそこ人気している馬が入っていた5,7枠。
「5-7枠で決着がついて、300円が360円になればいいか~」などと、軽く思っていた。
午後3時45分。レースがスタートした。
アサマノイタズラは、馬群から4馬身離れた後方4頭目を追走。
残り800mあたりで馬群に追い付き、最後方で4角を迎えた。
「前が壁」かと思われたが、うまくできた馬群の間をぬって、田辺騎手が外へ持ち出す。
皐月賞、ラジオNIKKEI賞とずっと追いかけてきた、黒、水色十字襷、袖水色縦縞の勝負服が、後方からぐんぐんぐんぐん伸びてくる。
そしてゴール板手前、ついに先頭にいたソーヴァリアントをかわした。
ファーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お察しかもしれないが、私は真面目に予想して馬券を買うタイプではない。
情で馬券を買うことが多々あるし、好きな馬がいなかったら、お笑いが好きなこともあり、競馬芸人の予想に乗っかることが多い。
「私はギャンブルがしたいんじゃない!競馬がしたいんだ!!」
「私はあくまでJRAの売り上げ貢献のために馬券を買っているのであって、ギャンブルで一儲けしたいわけではないんだよな」
と、他者から見れば負け惜しみのような言葉を毎週つぶやいている。
そんなことだからもちろん回収率は低く、ワイドの3頭BOXが全当たりして300円が2000円になったのが、これまでの払い戻し金最高金額だった。
馬券が当たるに越したことはないので、枠連を当てたことはもちろんうれしかった。
ただ、アサマノイタズラが先頭でゴール板を駆け抜けた瞬間、私が真っ先にツイートしたのが、彼の名前だった。
午後3時48分頃、私は彼の名前を無意識で4回投稿していた。
田辺騎手のお手馬が複数いたり、ケガなどで騎乗できなくなったりしない限り、アサマノイタズラの鞍上を嶋田騎手が任されることはもうないだろう。
たとえ田辺騎手が乗れなくなったとしても、別の騎手に鞍上が回る可能性だってある。
アサマノイタズラは重賞馬になった。
彼はまだ、重賞の頂を手にしていない。
セントライト記念が終了後、私はアサマノイタズラが勝ったうれしさ、嶋田騎手とのコンビ復活がさらに絶望的になった悔しさ、高配当の馬券を当てた驚き、手塚先生お誕生日おめでとう、その他諸々の気持ちがごちゃまぜになり、"複雑"としか形容できない感情を抱えていた。
懐は暖かくなったはずなのに、心は満たされなかった。
レース後のインタビューで、田辺騎手はこう話していた。
今回の勝利は、田辺騎手の好騎乗あってのものだ。
でも、これまで付きっ切りで調教し、アサマノイタズラを育ててきた嶋田騎手の努力があったから、アサマノイタズラは重賞を勝つまでに成長したのだとも思う。
今回のアサマノイタズラの勝利を一番悔しく感じているのは、間違いなく嶋田騎手だろう。
嶋田騎手の今年の成績は、9月20日時点で6勝。
お世辞にも、いい成績であるとは言い難い。
ただ8月には、ジュニパーベリーで8年ぶりにメインレースを制した。
また2日前の新馬戦では、単勝70.7倍の伏兵ブルーグロットをデビュー勝ちに導いている。
年間6勝という数字も、減量特典がなくなって以降では最多の勝利数である。
彼はまだ、重賞の頂を手にしていない。
それでも私は、勝利騎手インタビューで彼の姿を見られるまで、彼のことを応援し続けるだろう。
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