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Road to the Record参加を通して感じた昨今のRTA事情とか

先日久方ぶりに大会運営側でなく、走者として参加する機会を頂いた。

「Road to the Record」という企画で、一言で言うと「記録狙いで走れ」という至って単純明快なものである。

今回その大会参加を通して、いろいろ思ったことがあるので書き留める。

RttRに参加した感想

RiJを始めとした通常行われているRTA大会では、ほとんどが「本番一発勝負で最後まで通して走れば良い」ものとなっている。

今回参加させていただいたのはそういった「RTAを披露する」ことが目的ではなく、あくまで「記録を目指す」ことを主旨としたものだった。

たまたま自分がRTAをしていたサガフロのブルー編が「記録を狙う」という意味では非常に適しており、時間的にも試行回数を稼げる作品であったため、まさにうってつけの大会であった。

結果から言えば、持ち時間が2時間半でありながら一度も完走することは出来なかった。

視聴者からすれば、ただひたすらリセットをし続けるだけのつまらない配信だったに違いない。

しかしながら、大会の主旨的にはこのやり方が一番適していたはずである。なぜなら今回の目的は「記録の更新」であり、完走ではないからだ。

逆に言えば、タイムも更新していないのに完走してしまうのは本大会の主旨に反することであり、ある意味失礼にあたるとも言える。

とはいえRTAの完走自体は、走者の精神衛生をそれ以上悪くしないという側面もあるため、一概に悪手とは言えないだろう。

今回はその精神衛生管理を取っ払って、時間いっぱい使ってひたすらリセットし続けた。本番の配信上では累計55回のリセットとなった。

残念ながら記録更新は無かったが、こういった挑戦を公に披露することが出来たという意味でとても意義のあるものだったし、何より楽しく参加できたので非常に満足な結果となった。

RTAチャートの違い

昔からよく語られていることだが、主にRPGのRTAでは「記録狙いのチャート」と「一発勝負用の安定チャート」が存在することが多い。

記録狙いのチャートはその言葉通り、タイムを更新することを目的とした攻めの姿勢のものとなる。
運の要素が必要な部分はとにかく都合の良い乱数を引き当てることを前提に組まれることがよくある。

その一方で一発勝負用のチャートはかなり安定を重視したもので、状況は悪くても一応完走は出来るということを目的として組まれたものとなる。

当然のことながらこの二つのチャートはそもそも目的が異なるものであるため、大きな道筋は同じでも戦略的な面でほぼ違った形となり、実際にかかる時間も異なってくるわけだ。

記録狙いの方がタイム自体は早くなる見込みはあるのだが、運が悪いと完走すら難しい場合もあるため、一般的なRTA大会で使用するには向いていないものとなる。

そのため一般的なRTA大会に出る場合には、自然と一発勝負用の安定チャートを選ぶ走者が多くなる傾向にあり、大会本番中に記録を更新することは滅多に見られない。

もちろんゲームによっては記録狙いも一発勝負もチャートがほぼ変わらないケースも存在するが、概ねこの二つを用途別に使い分けることがRTA走者のスタンダードなスタイルであろう。

RTAの在り方

イベントとして催され、多くの人から見られるRTA大会は、前述の通り「本番一発勝負で最後まで通して走れば良い」ものである。
そのため、ほとんどの走者は「一発勝負の安定チャート」を選択することとなるわけだ。

しかしながら、これはちょっと奇妙な現象である。

「RTA」=「リアルタイムアタック」なのだから、完走するタイムがより早い方が良いはずなのだ。
タイムにアタックするのであれば、使うチャートもタイムが少しでも早くなるものを採用すべきである。

つまり、わざわざ安定を取って遅いチャートを使って走る道理は本来は全く無い、ということになる。
そしてなぜか「タイムアタック」の大会なのに「遅い安定チャート」で走っている、という一見矛盾した現象が発生しているのだ。

この答えはシンプルで、「タイムアタック」という言葉自体が複数の意味を持っており、必ずしも「タイムにアタックするとは限らない」という日本語の罠があるからだ。

前述したように、「RTA」と一言で言っても「記録狙い」と「一発勝負」が存在する。
同じ言葉にも関わらず、それぞれ目的も用途も意味合いも異なるのである。

時間を短縮するための挑戦という意味では、「記録狙い」の方が「タイムにアタックしている」と言えるかもしれない。

ただそういう意味合いで捉えてしまうと、「一発勝負」の方は「タイムにアタックしてるっぽい所を見せているに過ぎない」ということになってしまう。

本番一発勝負ならでは、RTA走者の腕の見せ所として、運に左右される所やミスを犯してしまった際など、その場で如何にスムーズにリカバリーできるか、というタイム以外の視点を重視して楽しむことも出来るのだ。

そういった対応力も含めて、ゲームをクリアするための挑戦という意味では「一発勝負」でも「タイムアタック」と呼ぶに相応しくなる。

このような事情があって、RTA大会において安定チャートを採用することが成立しているのである。

また、大会の形式によって目的は異なってくる。

駅伝形式の場合はチームとしての完走が前提にあることから、個人としては安定したクリアをした方が望ましいことがある。

一方リレー形式の場合は、他者とタイムを競うのではなく、あくまで視聴者に最後まで見せることを目的としているため、安定したクリアが望まれるという事情があるのだ。

こうして見ると、目的は異なるにも関わらず、安定したチャートを採用するという手段が同じになるのは面白い。

どちらにせよ本来タイムを重視しているはずの記録狙いチャートは、そのリスクを回避するために大会では敬遠される傾向にあるのだ。

RttRの特異性と希少性

おそらく人によっていろんなケースがあるとは思うのだが、自分の場合は「RTAはタイムを短くしてなんぼ」という考えがある。

そのため、どちらのチャートが好きかと問われれば迷わず「記録狙い」が好きという結論だ。

実際近年自分がやっているゲームでは、カテゴリーはAny%で走ることが多い。これはタイムが早いから以外に理由がない。

一方で運が絡む要素は大嫌いだ。どんなに自分が頑張ってプレイしようとも、運が悪いと通せない点があるのは実に腹立たしい。

そのため普段は、タイムが早くて運の要素を少なくする「状況再現」や「バグあり」を好んで遊んでいるのだ。

今回走ったサガフロは時間的に本当に短いので許容できる範囲だったが、これが数時間かかるゲームならまずやらない。

運を絡めた走り方がそれほど好きでないにも関わらず、それでも参加を希望したのは「Road to the Record」の特異性と希少性に注目したからだ。

記録狙いというものは自分との戦いであり、本来であれば人に見せる必要はない。
しかしそれだと記録として認められにくいので原則として配信や録画を通して行うが、あくまで個人的にプレイするものなのだ。

実際に走者個別の配信では常に記録狙いをしている人が多いし、記録動画として出す場合は表に出ない所で何度も試行されていることだろう。

RttRはそういった記録狙いの光景をミラーして大会として成立させていた。
各ゲーム界隈で小規模なものはあったかもしれないが、いろんなゲームを総合した形で開催するのはありそうで無かった内容だったのだ。

そういう意味で大変貴重な大会だったので、今回参加できたのは非常に有意義だったと感じた。

採用されたのはたまたまだったのかもしれないが、運営・解説者の方々には大変感謝している。今更かもしれないけど、本当にありがとうございました。

思いと想い

近年様々なRTA大会が開催されている。

それぞれコンセプトは違えど、結局どの大会においても「RTAを見せる」ことを主眼に置いているものばかりなのだ。

当然それは間違いではない。
興行的なことを考えると、披露することを主体とするのはむしろ自然なことであり、視聴者としても途中で終わってしまうオチよりも最後まで完走してもらった方がスッキリするのだ。

ただ個人的には、あくまでRTAは「ゲームを出来る限り早くクリアする」ものであって欲しい、という想いがある。

よもやRTAとは名ばかりで、バラエティ色の強い企画も多数出てきている。
その場の参加者たちが楽しければそれで良いのかもしれないが、その反面で「それRTAじゃなくて良くね?」とか「RTA関係なくね?」とか思う所もあるわけだ。

そんな中で、「とにかく最速クリアを目指す」といった方向性で盛り上げていくことには、これからも応援したい次第である。

大多数の人には理解されなくとも、ちょっとしたテクニックの違いやチャートの進化など、細かすぎて伝わらない部分でRTAの機微を共有し合える場もそれはそれで必要だ。

RTAがもっと広まって欲しいという思いはあるが、あくまでバラエティに寄った娯楽的なコンテンツではなく、スポーツ競技の一種として育って欲しいという想いもあるのだ。

RTAを一つの娯楽コンテンツとして楽しむこと自体は全然良いことであるし、そういった方向で活動している方々も否定はしない。

どういったものを求めるかはそれこそ人それぞれ千差万別なのだが、一RTAプレイヤーとして、一大会主催者として、一RTAファンとして、自分としてはタイムを重視する姿勢も忘れないでいきたいと思う今日この頃だ。

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