やっぱりOPSが最強:打撃指標とチーム得点力との相関は

野球の点の取り方。主に以下の2つの流れがあるはず。あなたはどちらが好みですか?

1)ホームランを含む長打で一気に大量点を獲る
2)シングルヒットをコツコツ積み重ねて1点をもぎ取る。
(そこにさらにバントや盗塁を絡める)

日本で賞賛されるのは2)。WBCなどでは、2)を表す「スモールベースボール」が日本野球の象徴としてもてはやされる。草野球や少年野球で賞賛されるのも明らかに2)で、長打をねらって大振りするとよく怒られたものだ。高校野球でも、NPBでも、解説者好み、ファン好みなのは2)なのではないか。
一方、MLBでは、2017年にいわゆる「フライボールレボルーション」がもてはやされ、HRをねらってフライを打つ打撃が流行した。また、長打力のある打者の方がより大型で長期の契約を得られる傾向が強い。

さて、科学的、統計的に見た場合、連打と長打、どちらが有効なのだろうか。

OPSが得点力を左右、長打力は得点力向上に不可欠

ここでは、「チーム得点力を決める指標は、チーム得点力と一番相関の高い指標は何なのか?」ということに置き換えて進めたい。
ここで対象としたのは、サンプルが豊富で、データが数多く公開されているMLB。まずは、2018年のMLB全30チームを対象に、チーム得点とAVG(打率)、OBP(出塁率)、SLG(長打率)、OPS(出塁率+長打率)、BB(四球)、HR(ホームラン)の計6指標との相関をまとめてみた。その結果が以下。

率の4指標に関しては、得点との一番相関が高いのはOPSで、一番相関が低いのがAVG(打率)。長打率は、打率に比べ高い相関を示している。また、BBやHRとも一定の相関を持っている。

ここから、理論上は、チーム得点力の向上のためには、単打を積み重ねるだけではだめで、長打力、さらには出塁力を総合したOPSの高さが必要なことがいえる。

**********************************
近年のMLBの「フライボールレボルーション」前後の変化は?

以降、MLBのここ3年のチーム打撃成績に幅を広げ、さらにAL、NL個別の分析も加えて分析を行う。前記のOPSをはじめとする各指標とチーム得点力との相関に変化は起こっているのだろうか?

近年、MLBにあった打撃面のトレンドとして、以下のものが挙げられる。

・2017年の「フライボールレボルーション」(ホームランの確率を高めるべく打球に角度をつける打法の流行)
・2018年は「フライボールレボルーション」への反動が起き、コンタクトが重視されるようになる(例:レッドソックスのJDマルティネス)

この流れで、OPSをはじめとする各指標とチーム得点との相関はどう変化するのか。私は、OPSやHRと得点との相関については、2017年は高まり2018年は低下するのではないかと思っていたが、分析してみると結果は逆だった。それより、面白い結果が出てきた。

大きく高まったBB、HRと得点力との相関

分析結果をまとめると、以下のようになる。

・OPSと得点との相関がAVGのそれを大きく上回る傾向には変わりはない。ただし、OBPとSLGの相関が逆転することはある。
・ここ3年では、AVG、OBP、SLG、OPSと得点との相関がいずれも高まっている。しかしながら、2017年のALは、これらの相関が一時大きく低下した。
・NLでは、2016~2017年にかけて、AVGやOBPとの相関がより強くなった。
・ここ3年、BBやHRと得点との相関が強くなっている。ALでは2017年一時低下したが、2018年はその反動で相関をさらに強めている。

分析手法は以下の通りである。
・MLB30チーム、AL15チーム、NL15チームそれぞれにつき、また2016~2018年の各年につき、AVG、OBP、SLG、OPS、BB、HRとチーム得点との相関を相関係数の形でまとめ、推移比較。
・2016→2017年、2017→2018、2016→2018年の各期間の相関の変化についても整理。

その一覧が以下である。

求められる打者像:「コンパクトに強い打球を打て、ある程度HRも打てる打者」

私は、以下のことが言えるのではないかと思う。

1)しっかり選球し、投球をコンタクトする重要性は年々高まっており、いわゆる「フリースインガー」が通用しない傾向が強まっている。
2)しかし、長打の必要性も同時に高まっており、「単打しか打てない打者」が通用しない傾向もこれまで同様強まり続けている。
3)HRの得点力への役割も、さらに高まっている。
4)これからよりニーズが高まるのは、「コンパクトに強い打球を打て、ある程度HRも打てる打者」ではないか。

BOSのJDマルティネスやベッツ、LAAのトラウト、MILのイェーリッチのような感じの打者。この4人は、いずれもOPS10割を超えている。こうした総合力の高い打者の重要性が、2019年は高まるのではないかと思う。

詳細な相関分布図などは、以下も参照。
https://blogs.yahoo.co.jp/jwbyp614/58305237.html

なお、2017年のALで相関が大きく低下したのは、以下のチームの存在があったからとみられる。
・レッドソックス(OPS.736に対し得点785、理論上の相関関係式より54.5点多い)
・レンジャース(OPS.750に対し得点799、理論上の相関関係式より40.9点多い)
・レイズ(OPS.739に対し得点694、理論上の相関関係式より42.4点少ない)

四球やHRとの相関については、アストロズも大きく乖離している。2017年のアストロズは、四球数やHR数に比べ、多くの得点を奪っていた。


さらに、ここ3年の結果の変化に関しては、ここ数年守備シフトが進化した影響もあるのかもしれない。シフトに対抗するために、打者はヒットにするためにより強い打球を打つことが求められ、野手の間を抜くことは困難になっているからだ。

以上、MLBを中心に見てきたが、NPBの場合はどうなるか?また、得点圏打率や盗塁などその他の指標との相関はどうなのか、時間があればまた書きたい。

数値をまとめると以下の通り。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?