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一首評「自販機の振動うるさい熱帯夜 天使になったらできない目で見て/林さとみ」

はじめまして。神乃です。
つくば現代短歌会(通称「つくたん」)に所属しています。

つくたんの新歓企画で過去の歌会の首席の歌を評しました。
その時の一首評で画像1枚分に収めるために削った部分を加筆してnoteに再掲します。

自販機の振動うるさい熱帯夜 天使になったらできない目で見て
/林さとみ

https://twitter.com/Tsukuba_tanka/status/1420389309090197510?s=20&t=Gvqvw1XBtGBV5UBwOOtCqg

 自販機のブーンという振動がうるさくなるくらい暑い夜――しかし、自販機の音が聞こえるくらい静かな夜。目の前の人と見つめあっている状況だと思いました。他人に対して強く「見て」と思う/言うことは少ないと思う(自分には思いつきません)ので、相手は他人ではなく親しい人だろうと思います。

 この歌は「ところで歌会」という、前半と後半を「ところで」で繋げば意味が自然に通るような短歌縛りの歌会に提出された歌です。「自販機の振動うるさい熱帯夜(ところで)天使になったらできない目で見て」だとすると、下の句で急に目線がこちら(鑑賞者)に投げられてハッとします。 「天使になったらできない目」とはどのような目なのでしょうか。俗っぽさや生からかけ離れた天使にはできない目とは。 ところで、あなたは今どんな目で私を見ていますか。


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