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じいちゃんめっちゃ酒飲んでた

少し前の話になるが、おれのじいちゃんの米寿をお祝いした時のことを書いておこうと思う。じいちゃんの88歳の誕生日に海辺の町の料亭を予約して家族みんなで集まった。広い和室に卓が並んでいて「祝・米寿」と書かれた横断幕がかけてあった。酒を片手に、おじさんが乾杯の音頭をとった。それからじいちゃんが「今日は集まってくれてありがとう」と話し始めて、次にばあちゃんも話し始めた。ばあちゃんは、ほんとはじいちゃんの米寿のお祝いを大々的にするつもりはなかったらしい。賀寿を祝うとその後すぐ死ぬというジンクスがあるから。だけどみんなが集まれる時に感謝を伝えたくて今回集まることにしたんだと。ばあちゃんは何年か前に病気になって入院した。病気が見つかった時は命も危ないかもと言われた。ばあちゃんは誰よりも元気で活発で健康志向でお節介で、たぶんみんなが想像するようなばあちゃんとは違う。あの時はそんなばあちゃんが死ぬかもしれないと少し思った。今は治療の甲斐あって寛解して元気に過ごしている。そんなばあちゃんが涙ぐみながら、みんなにありがとうと言った。じいちゃんの米寿だけど。じいちゃんも泣きそうだった。おれも泣きそうだった。そして最後はお決まりの黄色い帽子をじいちゃんに被せてみんなで写真を撮った。今しかできないことをしないとなぁ。

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