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災害対策BCPをつくる5つのポイント<入所編>

BCP作成の5つのポイント

災害が発生したときに、作成したBCPを効果的に運用するためには、いくつかポイントがあります。ここでは、その中でも特に重要なポイントを5つに絞って紹介します。

1.平常時と緊急時を別々に考える

もし自分が働いている介護施設に地震が起きたら、何をするべきかという視点はとても重要です。とはいっても実際に被災した場合、スタッフや入居者が混乱し二次被害を招くことすらあるのが現状です。
そこで、ポイントのひとつとしては、「平常時の対応」と「緊急時の対応」を別々に決めておくことです。つまり平常時の対応(備え)を具体的に、そして定期的におこなっていることが、減災につながるということです。要介護高齢者が入所している介護施設では、災害が発生した場合に入居者やスタッフの命を守ることはもちろん、限られた人員で介護サービスを提供し続けなければなりません。入所サービスという24時間体制を維持しながら重度の高齢者を守る入所版BCP、その作成のポイントを紹介しましょう。

災害対策BCPと災害対応マニュアルの違い

 介護施設では、いつ起こるかわからない自然災害に備え、防災計画をたてているところも多いでしょう。もしかすると防災計画とBCPを同じものとして捉えている事業所があるかもしれませんが、両者はそれぞれ位置づけが異なります。

主な項目を表で比較してみましょう。
防災計画
BCP
目的

  • 身体、生命の安全確保

  • 物的被害の軽減

  • 身体、生命の安全確保に加え、優先的に継続、復旧すべき重要業務の継続または早期復旧

重要視される事象

  • 死者数、損害額を最小限にする

  • 従業員等の安否を確認し、被害者を救助・支援すること

左記にくわえて

  • 重要業務の目標復旧期間、目標復旧レベル

  • 経営や雇用の確保

活動、対策の検討範囲

  • 自社の拠点ごと

  • 全社的(拠点横断的)

  • 依存関係にある主体(委託先、調達先、供給先)

<参考:「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等について」

災害対策BCP入所版の特徴

介護施設とは、特別養護老人ホームや老人保健施設、サービス付き高齢者向け住宅などが該当します。介護施設でBCPを作成する際、生活施設という特徴にあわせた項目で対応策を検討する必要があります。
たとえば、施設自体は頑丈な構造になっているので、倒壊のリスクが少なかったり、災害備蓄が事前に用意されているので、数日であれば食事に困らなかったりするかもしれません。一方で緊急時にはスタッフが確保できない、介護が必要でひとりで避難できない入居者がたくさんいる、といったリスクも存在します。
まずは施設の入居者や現状を適切に把握することが、BCP作成の前には重要です。


<参考:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続計画(BCP)作成のポイントー共通事項ー

2・必要備品は施設によって異なる

国が示しているBCP作成ガイドラインでは、ひな形が用意されているので、記載する際に参考になります。とくに必要備品は「様式6」のなかで、ライターやポリタンク、ヘルメットやゴムボートなど具体的な品目や数量が例示として記入してあるので、「これは用意してなかったな」という気づきにもなるでしょう。
筆者自身も介護施設に所属しているため、早速ろうそくやマッチ、ランタンや投光器など停電対策として、これらの物品を買いそろえました。ところが、それをみたスタッフから「うちの施設は自家発電設備があるので必要ないです!」と指摘されてしまいました。結果として、同法人の他事業所で使用されることになりましたが、災害時に必要な備品は施設によって異なるということを実感することになりました。
<参考:R3年度自然災害ひな形(共通)

3.ライフラインの状況に応じてリスクを把握しておく

ライフラインとは、日常生活をするうえで欠かせない電気や水道、ガスや通信設備をいいます。停電したことで入所生活にどんな支障があるのか、通信手段としてどのようなものがあるのかなど、ライフラインごとに現状と課題を整理しておくことが重要です。

国土交通省防災ポータルでは、最新のライフライン状況を地区や災害ごとに確認できるので、BCPの一つとして活用できるようにしておきましょう。

4.他施設や地域と連携しておく

災害発生時に近隣の施設や地域と協働することで、助かる入居者や守られる業務があります。ここで重要なのは、「災害時に連携をする」ではなく、「日頃から連携しておく」ということです。なぜなら災害発生時には、どの施設や機関も自分の事業所や業務の復旧に専念することが考えられるからです。ましてや周りの施設にはどんな人がいて、地震がおこるとどういったことに困るのか、あらかじめ地域で共有しておかないと、イメージすらできません。ですから、平常時から地域の福祉機関や地域住民と顔が見える関係や機会を確保しておくことが重要です。

5.とりあえず作ってから完成度をあげる

BCP作成のためにガイドラインが示されてはいるものの、「忙しい」「具体的な書き方が分からない」という理由で完成に至っていない事業所が多くあります。とはいえ令和6年までには必ず作らないといけないので、とりあえず完成度が低くても分かる範囲で作り上げてみましょう。そのあとで事業所や法人の中ですり合わせをしながら、より具体的で効果の高いBCPを育てていけばいいのです。

注意すべき点

BCPの作成を急ぐあまり、見落としてしまいがちなことがあります。それは、BCPの目的です。BCPで一番大切なことは、地域で災害が発生した時や事業所が被災した場合でも最低限業務を行うということです。その目的を見失わないためにも、特に次の2点は重要といっても過言ではありません。

・他事業所のBCPは参考程度

ほかの介護施設が作ったBCPをそのまま転記したり、流用したりすることは避けましょう。なぜなら、施設が抱える災害リスクは規模や設備、立地条件といった環境要素に影響するため、災害対策はまったく異なるからです。つまり同じ介護施設だからといって、対応方法を真似ても対応方針や職員体制が違うので業務継続ができるとは限りません。

ですから、面倒でもBCPの項目を一つひとつ自施設に置き換えて作ることが最も重要です。そしてその過程において、自分たちの弱点や平常時の取組みに気付くことこそが防災対策につながるのです。

・作成してからがスタート

令和6年から義務付けられるのは、BCPの策定だけではありません。「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」では、次のように示されています。

『感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。』
出典:厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における改定事項について

つまり、介護施設はBCP作成後に研修や訓練をおこなうところまでを災害対策の義務として定められたということです。令和6年以降の運営指導にはBCPと災害対策は確認項目となるでしょう。

まとめ

介護施設BCPは24時間の業務継続が命題となります。ですから施設全体でその内容を共有し防災意識を高めることが、入居者やスタッフ、そして業務を守ることにつながります。

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本記事はCloudBCPブログの転載です。 https://www.cloud-bcp.com/posts/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%AF%BE%E7%AD%96BCP%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8B5%E3%81%A4%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E5%85%A5%E6%89%80%E7%B7%A8

執筆者: 柴田崇晴
日本介護支援専門員協会 災害対応マニュアル編著者

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