(極私的)出演者紹介 日比谷カタン

さて。続いては日比谷カタンさん。

多岐に亘る活動と来歴の詳細は、公式サイトのプロフィールに譲るとして、この方を一言で定義するのはほんとうに難しいのです。

“ギター弾き語り”以外に大枠を説明できることばは無いとは思うのですが、楽曲はバラエティに富んでいるし、声だってよろずのパターンを持ち、自虐の突き抜けた爆笑のMCも含め、一貫して強い批評性は感じるものの、ただただその表現に圧倒される瞬間もあり…。

初めての方にご案内するとき、どこを切り取るかで観る側の志向性も解ってしまう。そして誘われて観に行くと、そこで今度は意外性に目を瞠ることになる。ルックスだって一定ではなく、その日の場に応じて着流しから女装、悪羅系まで多様に変化します。

そんなギャップにまみれながら、自己分析がここまでブレなく表されているひと、というのも他に知りません。

地に確かに足を下ろしながら、どこにも根付いていないアーティスト。

だからかなあ。

以前、「いちばん好きなマンガ家は誰ですか?」と尋ねたときに、真っ先に返ってきたのが、萩尾望都さんのお名前でした。

萩尾作品の主人公、特に物語の主軸になる少年たちは、多様な人種のなかにあっても、特にその居場所に疑問や懊悩を抱えていることが多い。

日比谷さんご自身は『トーマの心臓』のなかで自分を譬えるとしたら“サイフリート”(ユーリの人格形成に甚だしい影響を及ぼす、八角メガネの不良上級生。)だとおっしゃるのですが、ルックスは「うん・・・そうね…」と思えども、どちらかというとユーリの心性に、より共振しているんじゃないのかな、とも思うのです。

ユーリに限らず、立つ地の揺らぎや足許の違和感を感じながら、その世界で生きてゆくことを択び続ける少年たちと日比谷カタンさんの間は、見えづらいけど太い線で結ばれているのじゃないでしょうか。

そして、その批評性と分析力(とスキル)のおかげで隠れがちなのですが、感情豊かな熱も持っていて、ライヴのなかでもそれが暴発…とはいかないまでも、無軌道に発散される瞬間もあるのです。こと、妄想の勢いは凄まじく、一つの案件についてキイワードを手に入れて迸り出した発想は実にしっかりした骨子を持っていて説得力にみち、ひどいときは実現すらしている…急に出来た!という新曲が、ライヴで突然披露される機会が最近増えたのも、止め難き衝動のなせる業なのではないかなあ。

そんなわけで、最初に今回のイベントについて声をかけたのが日比谷カタンさんでした。『トーマの心臓』の1シーンを暗で朗読できる日比谷さん、ご出演を快諾…に留まらず、横田沙夜さんのフライヤーイラストをいなたくって小粋な『フラワーコミックス』風にデザインしてくださいました。もしかしたら主催者以上に今回の『ギムナジウム』イヴェントを牽引してくれています。

こちらが、サイフリート・ガスト先輩。


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