海の向こうで戦争が始まる

村上龍

暴力的な小説。冒頭から、作者を置いてきぼりにする。芸術家の主人公の頭の中の話。章が一つもない。吐き気のする、この世の汚いものを凝縮したような作品だった。

主人公が見る、海の向こうの人物たちはそれぞれ自分の目的のために生きていた。世に抗おうとするものもいたが、文字通りの大衆に流されて蟻の一員となった。浜辺と海の向こうでは、すべてが対極にあった。しかしどちらにも自由というものがありながら、すべての登場人物は不自由に生きている。

最後に主人公は浜辺よりもっと広くて自由な海に出ようとする。女の自由を奪って。

思考の汚れ、ざらつきを一切隠さずに表現しているためか、まるで自分の中身をのぞいている感覚になって気分が悪くなった。